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お風呂とジョブ

「俺は……生きているのか?」


 何度も見た天井が見えるって事は、どうやら生きているらしい。

 凄かった。侮っていた。見栄を張るタイミングを間違えた。


 大見得切った俺は、ジーナが自分の身体を好きになるように、とにかく頑張った。

 最初は恋人の様に甘くスイートなプレイに徹した。

 勿論その時に初めては終えた。

 その時のジーナは凄く可愛かった。

 ジーナが慣れて来ると、自分から奉仕プレイを行う様になり、あまりの従順さに俺も悪乗りしてご主人様とか言わせて色々してしまった。


 うん。それがいけなかったんだ。

 ジーナの御奉仕魂にでも火が付いたのか、後半はもうジーナの独壇場だ。

 

潤んだ目で『私なら大丈夫です』と言われた俺は『俺が大丈夫じゃないです』と思い。

 

熱い吐息を漏らしながら『私に構わず気持ち良くなって下さい』と言われた俺は『すでに気持ちいいです。これ以上はいけない』と洩らしそうになり。

 

悲しい表情で『私では気持ち良くなれませんか?』と涙目で言われた俺は『むしろ俺が気持ち良くしてやる』と応じた。

 

 そこから先は記憶にない。ただ見たこと無い川の真ん中でなぜか必死に泳いでいたような気がしないでもない。


 そう言えばジーナはどこだ? 

 てか身体重い。


 だるい身体を動かそうと首を起こすと、俺の上でジーナが眠っていた。

 しかも俺を絶対に離さないと言わんばかりに抱きついた体勢で。


 なるほど、重いのは体のだるさだけじゃ無かったのか。

 ただまぁ残念なのは、俺の今の状態じゃジーナの寝顔が見れないことか。

 しかし気付いてみると、他にいも色々と嬉しい感触もするし、これはこれで役得か。

 そしてその感触に反応するように、俺の息子も眠りから目覚める。

 良かった。再起不能になってなくて本当に良かった。


「う、んん……」


 ジーナがゆっくりと瞼を開いて行く。

 多分体の下で俺が動いたから、起こしてしまったのかもしれない。


「あ、ご主人様おはようございます。申し訳ありません。ご主人様より後に起きてしまうなんて」


 ジーナはゆっくりと体を起こして、髪を軽くかきあげる。


 美しい。

 悪魔のような羽根と尻尾と角があったとしても、彼女は間違いなく美の女神だ。

 あれ? 角?


「ジーナ、角が生えているんだが?」


 そう言えば悪魔族でも角が生えている女性とそうでない女性がいたな。

 思い起こせばエルメイルさんは生えていた。

 ジーナは少し目をパチクリさせた後、意味を理解したのか、頬を赤く染め。


「えっと、この角はその、私が大人になった証です」

「……大人って事はつまり、そういうことか?」

「は、はい」


 どうやらこの世界では童貞や処女である事が一発で判ってしまうらしい。

 なんとも男には住み難い世界である。


「で、ではシャワーを浴びて来て下さい。私はその間に部屋の掃除をしておきますから」

「いや、無理だろう」


 室内はちょっとお子様には見せられない惨状だ。

 ベッド周辺だけとはいえ、あれこれしたからちょっとヤバイ。


 そう言えば風呂場にはバスタブもあったな。

 家の作りが中世時代っぽかったからお金持ちの家にしかシャワーもバスも無いのかと思ったが、その辺の設備がちゃんとしているのはここが娼館だからだろうか?


「一緒に入るか」

「ご、ご主人様がそれでよろしいのなら」


 ふむ。言ってみるものだ。朝からウルトラハッピーである。


「そう言えば俺の事ずっとご主人様だけど、もう別に名前で呼んでくれても構わないよ?」


 行為の後半は何故かご主人様で定着してしまった。

 いや、俺が言わせたのが始まりなんだけどね。


「あ、そ、そうですね。申し訳ありませんソラ様……」


 何故かジーナが物凄く悲しい顔をした。

 え、そんなに気に入ってたの?


「えっと。ジーナが呼びやすい方でいいよ」

「はい! ご主人様」


 あ、やっぱそっちなんだ。

 素面で聞くと恥ずかしいが、ジーナの為だ我慢しよう。


 奥の扉をあけて浴室に二人揃って入る。

 蛇口にはお湯と水があり、二つを捻ってバスタブに注ぎ、丁度いい温度に微調整していく。

 田舎のお風呂を思い出すな。

 前済んでた所は電気だったから楽なもんだ。

 

 それにしてもどうやってお湯を出してるんだろ。

 ガス管も通っていなさそうだったし、不思議だ。 


「じあバスタブは俺が見ておくから、先にジーナがシャワーを浴びてきな」

「よろしいのですか?」

「よろしいよろしい」

「では、先に洗わせて頂きます」


 俺に促されてジーナがシャワーの蛇口を捻る。

 シャワーの蛇口もお湯と水の二つで温度を調整する作りのようだ。


 さて、こっちはまだまだっぽいな。 

 まだお湯が少ししか溜まらないバスタブに腕を突っ込んで温度を見極めていく。

 ちらりとジーナの方と覗くと、多分石鹸で泡立てた布で体を洗っていた。

 あ~しまった。洗ってあげるとか言えばよかった。

 折角エロの神様が与えてくれたチャンスを活かせなかったことに落胆しつつ、お風呂には絶対一緒に入ると決めた。


「ご主人様、お次どうぞ」

「ん了解」


 ジーナがシャワーを終えてやって来たので今度は俺がシャワーを浴びる。

 シャワーの蛇口付近に石鹸があった。ただし色は白じゃなくてキャラメルっぽい薄茶色い石鹸だ。

 そういえば昔町内会で作った自作石鹸がこんな感じだったっけ。

 泡立ちもそれほどよくは無いが、俺が想定している文明レベルで判断すると、石鹸は贅沢品の一つだ。

 ありがたく使わせてもらおう。

 俺は泡立った布で体を隅々まで洗い、シャワーで流す。


「ご主人様。これくらいでよろしいでしょうか?」

「ん、今行くよ」


 俺はシャワーを止めてバスタブに近付く。

 二人で入れば十分に満杯になる水位まで来ていた。


「うん。もう止めて一緒に入ろう」

「は、はい」


 お湯と水を止めて先に入る。

 ちょっと熱いが、仕方ない。


「さ、ジーナは俺の前に入って俺に寄りかかるように」

「は、はい。そ、それでは失礼します」


 ジーナが俺の前に入水して、言われた通りに俺の体に寄り掛かる。

 一度やってみたかったんだよなぁ。

 一緒にお風呂で寄り添うってシチュエーション。

 長年の夢が一つ叶った瞬間だった。


 俺の胸に頭を預けるジーナの頭をそっと撫でる。

 ジーナが気持ち良さそうに目を細めて更に体を密着させてくる。

 もうね仕草の一つ一つが愛おしいです。もうその顔をずっと見ていたいです。


 しかし、俺にもやらなければいけない事がある。今こそ行動に移るべきだろう。

 そっと手を動かしてジーナの胸を揉む。


「んっ」


 いや違うぞ俺。

 確かにそれは重要な任務だが、今はジーナにあの事を聞くのが優先任務だ。


「なあジーナ。ずっと、でもないが、ちょいちょい気になっていたんだが……その頭の上にあるアイコンはなんだ?」


 ジーナの胸に触れたまま尋ねる。揉むのはなんとか我慢してる。


「あいこん、ですか?」


 ジーナがなんの事か分からないといった感じで、首を傾げた。


「ああ、最初は黄色だったのに今は桃色の、小さな菱型のアイコンなんだが」


 正確には八面の菱形だ。


「もしかしてソウルクリスタルが見えるのですか?」

「ソウルクリスタルと言うのか?」

「多分ですが。

 聞いた話では索敵スキルを手に入れると、視界の届く範囲にいる魔物や魔族の頭上に灰色のクリスタルが浮かんで見えるそうです。

 ただ、普通は灰色らしいので、ご主人様の見ているものとは違う物の可能性もありますが」


 図らずもこの世界での能力について分かりそうである。


「そのジョブやスキルはどういうもので、どうやって確認するんだ?」


 ゲームなら職業や技能って意味だが。


「ジョブとはアビリティやスキル、魔法を覚える事の出来る特殊な職業の事です。

 それ以外は普通に職業と言います。

 ジョブを得るにはそのジョブを得る条件を満たせば誰でもジョブを習得できます。

 例えば冒険者なら冒険者ギルドに加盟すれば習得できます」


 特別なクリスタルとか、技術取得宝玉とかはないってことか。


「それじゃあ複数ジョブの条件を満たしたら?」

「基本早くに習得したジョブ優先です。身に着けたジョブから変更する場合は、専用のアイテムを使うそうです。例外としてギルドや騎士団等の組織に属する場合と、過度の悪行を犯した場合は専用のジョブに強制的に変更されます。前者は兵士、後者は盗賊が一般的によく見かけるジョブですね」


 盗賊は悪い奴って事ね。

 あれ? じゃあ盗賊のジョブって手に入れた時点で人生アウトって事か?

 多分組織系のジョブは組織を辞めたら消えるんだろうし、

 その辺は聞いておくか。


「盗賊のジョブは一度手に入れたらもう変えられないのか?」

「いえ、盗賊のジョブを手に入れても、犯した悪行に見合う善行を積めば自動的に変更されます」


 なるほど。悪い事したら善い事して反省しろって事か。

 一応組織系ジョブも聞いておこう。


「兵士とか組織を辞めれば変更されるのか?」

「はい。その通りですご主人様」


 うん。こっちは予想通り。


「後は女神や英雄と言った特殊ジョブもあるそうです。特殊ジョブも習得するとそちらに強制的に変更されるそうですが、特殊ジョブはジョブ変更アイテムで変更が可能と聞きました。自分のジョブはソウルクリスタルで確認できますよ」


 多分そのソウルクリスタルで俺のステータスを確認できる筈だ。


「そのソウルクリスタルはどうやったら見れる」

「ご主人様はどなたかに教わらなかったのですか?」


 さてどうしよう。本当の事を言うべきか、いや無理だろう。

 なんとか誤魔化すしかない。


「実は今迄は村はずれでじいさんと二人きりで過ごしていたんだが、そのじいさんが最近死んでしまってな。それを機に旅に出たのだが、そこをジーナに攫われたのだ」


 い、言っておいてなんだがなんて胡散臭い設定だ。

 果たしてこれで誤魔化し切れるのだろうか。


「えっと、申し訳ありません」

「全然申し訳無くない! 凄く幸運だ。運命の神に感謝したいくらいだ」


 本当に申し訳なさそうに落ち込むジーナを見て、

 居ても立ってもいられず抱きしめる。

 騙せた安堵よりも騙してしまったと言う罪悪感の方が勝るとは……。


「わ、私もです。あなたを攫って良かったです」


 ジーナが俺の背中に手をまわす。

 どうする。ここで今日の一回戦を始めるか?

 いや待て、今俺は重要な機会を得ているんだ。

 もし今後一人で行動するなら、今は性欲より情報だ……ちくしょう。

 心の中で血涙を流さんばかりに嘆きながら、ジーナに尋ねた。


「で、そのソウルクリスタルはどうすれば見れるんだ?」

「あ、そうでしたね。申し訳ありません」


 ジーナが身体を離す。

 ああ、名残惜しい……。


「方法は簡単です。ソウルクリスタルオープンと唱えるだけです。ただし声に出すと他の方にも見えてしまうので、見られたくない場合は心の中だけで唱えて下さい。それと基本的にアビリティ、スキル、魔法は本人にしか見えません。装備品は見えてしまいますが」

「ん? 今ジーナが言ったのに、出てないぞ?」

「単語として唱える必要があるので、会話中はほとんど発動しません。間をあければ可能ですが」

「こんな感じか? ソウルクリスタルオープン」


 ジーナの言葉通りに間を開けて唱えると、目の前にジーナ達の頭上にあったアイコンと同じ、灰色の菱形八面体のクリスタルが浮かび上がる。中には光の球体が入っていた。

 クリスタルに触れると頭の中に情報が入ってくる。



 名前:ソラLV1 種族:魔人族 性別:男  

 ジョブ:調律者LV1 

 装備:なし

 アビリティ:【エンゲージ】【ラーニング】

 スキル:《全属性耐性LV1》《全状態異状耐性LV1》

     《解析》《身体強化LV1》《ジョブチェンジ》

 魔法:なし



 なんか色々出て来た。

 お、ジョブチェンジがあるじゃないの。他にも色々使えそうなスキルがある。

 取り敢えずスキルについては後で考えるとして、まずはジーナに見て貰って話を聞くか。


「悪いんだけどジーナも見てくれるかな」

「あの、見てもよろしいので?」

「ああ、構わないよ。分からない事があったら教えて貰いたいからね」

「分かりました」

「じゃあ俺の上に来て」

「は、はい」


 ちゃっかりジーナを元に位置、つまり身体がくっつく位置に座らせる。

 身体にあの柔らかい感触が帰って来た。あ~やっぱりいい。もう二度と手放したくない。

 とと、今はステータス確認が先か。

 ジーナもクリスタルに触れているから俺のステータスは見たはずだよな。


「なあジーナ、このジョブとか……」

「調律者様だったのですか……」


 ジーナが目を見開いて俺を見つめる。


「え? ああ、そうみたいだな」

「……ご主人様は調律者のジョブがどういう物かご存じないのですか?」

「ああ、知らないな。誰にでも付けるジョブなのか?」


 ジーナが首を横に振る。


「むしろ今の世の中でいるかどうか。空想のジョブだと思っていました」

「どう言う事だ?」


 そんなに驚くほどのジョブなのだろうか。


「以前ギルドに勤めている方に聞いたのですが、なんでも魔族を使い魔として使役できるジョブと言っていました。本来使い魔というのは魔物に行う契約です。行えるのは【テイム】のアビィリティを使える調教師というジョブだけです。上限は三体までで、死んでしまっても新しく使い魔の契約は出来ないと言っていましたね」

「あれ? それってほとんど使えない能力なんじゃない?」


 最終的に三体死んだらそこで終わりだ。


「いえ、契約した魔物は魔力を与え続ければ死ぬ事はありませんし、定期的にアイテムを産んでくれます」


 お~ドロップアイテムとか、その辺はゲームっぽいな。


「しかし調律者は調律者のレベルが上がれば上がるほど、契約できる魔族の数が増えると聞きました。

もちろんあくまでもギルドに残っている文献の話の又聞きなので、どこまで正しいかは分かりませんが」


 え? ちょ、ちょっと待って、今頭の中で色々な思惑が過っているけど、まずは大事な事を聞こう。


「その契約をすると、相手や俺はどうなるんだ?」

「申し訳ありません。詳しくは知りませんが、契約した魔族と調律者は感覚を共有し力が強化されるとだけ聞きました」


 ふむ。その辺りはゲームの魔物使いとかのジョブに近いか。

 調教師の二ランクほど上のジョブっぽいな。


「使い魔の方から、契約の破棄はできるのか?」

「分かりません。少なくともテイムで使い魔になった魔物は無理だそうです」

「そうか、ジーナが契約破棄出来るなら試してみたかったんだか」

「え?」


 ジーナがきょとんとした顔をする。


「それはつまり……」

「あはは、ジーナ程の良い女が他の男に抱かれるのは悔しいからな。いっそ使い魔にして俺のものにしようと思ったんだが、一生隷属じゃあ可哀想だし」


 そもそも使い魔にしてデメリットはあるのだろうか?

 無いなら別に一生傍にいさせる必要も無い……ああでも無理!

 やっぱ使い魔って響き的に一緒にいて欲しい!


「あ、あの! ご主人様さえ良ければ、試していただけませんか」

「え?」


 予想外のジーナの提案に、今度は俺の方がきょとんとした顔で固まってしまった。


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