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友達の存在...  作者: りす君
58/58

friends57:容赦無し! 兵(つわもの)達の反撃、始動。

疲弊と打ち込まれでマウンドを降りた藤浦に変わって登板した高萩。 リリーフでしか投球してこなかった彼に、龍泉の上位打線が容赦なく畳み掛けてくる…。

ウグイス嬢:

「2番。 サード、上条君。」

主審:

「プレー!」


藤浦の代わりに、俺が登板する事になったが、正直言って無得点で切り抜けられるとは思って無かった。


高萩の心の声:

「まずは、様子見で…。」


(ビュッ!)

(パシッ!)


主審:

「ボール!」


スローボールをストライクゾーンギリギリで投げたが、振ってこなかった。 振る気配もなかった。 どうやら、優れた選球眼は、龍泉ナイン全員が持ち合わせてるらしい。


高萩の心の声:

「なら、確実に打ち取るしかないな。」


俺は、虔沼より精度が低いナックルを投げた。


(ビュッ!)

(カキンッ!)


一塁審:

「ファール!」

福本:

「ま…マジかよ…。」


上条が、ナックルを易々とカットしてきた。 凄いセンスだ。


高萩の心の声:

「なら、さっさとねじ伏せるだけだっ!!」


(ビュッ!)


力強く放ったフォーシーム。 だが…。


上条:

「フッ…。」


(カキーン!)


魚谷:

「クソッ!」


打球は三遊間を破り、左中間に転がった。 レフトの犀潟が捕って内野へ送球した時には、既に上条は二塁に到達していた。


ウグイス嬢:

「3番。 キャッチャー、霜尻君。」


次のバッターは今試合、茉山以外にホームランを放っている強打者の霜尻。 ツーラン(2点ホームラン)を打った相手なので、何とかゴロかフライに打ち取りたい。


高萩の心の声:

「ぜってぇ抑えるっ!」


(ビュッ!)


霜尻:

「俺を嘗めて貰っちゃ困る…よっ!!」


(カキンッ!)


葎塔:

「オーライ…はいよっ。」


(パシッ)


一塁審:

「アウッ!」


霜尻:

「…チッ、打ち損じちまったぜ。」

高萩:

「…ふぅ。」


霜尻の打球は、風に押し戻されて前もって後退していたライトの葎塔のグラブに収まった。しかし、今のフライで上条がタッチアップで三塁に進塁してしまった。


ウグイス嬢:

「4番。 センター、氷石君。」


そして、遂に一番勝負したくない奴との対決になった。


氷石:

「荊太郎君。君のフォーシーム、僕にとっちゃ絶好球なんだよね。 さっき、僕をコケにしてくれたお返しに、このバットで今度こそバックスクリーンに叩き込んで君を再起不能までに追いやってやるよ!」

高萩:

「…お前、変わったな。」


主審:

「プレー!!」


氷石の苦手なコースは解っていたので、そこにフォーシームを一球投げ込んだ。


(ビュッ!)

(スパンッ!)


主審:

「ストライクッ!」


高萩の心の声:

「昔、氷石はインハイ(内角高め)は手を出さなかった。唯一、手を出した試合があったが、確か結果は凡退だったはず。」


二球目も、同じ箇所にフォーシームを投げ込む


(スパンッ!)


主審:

「ットライーク!」


高萩の心の声:

「氷石が打てると言ったフォーシームを二球続けて投げたけど、奴は手を出してこない。やはり、苦手なコースだから、手を出さないのか………うん? あれは…。」


氷石の方を見ると、彼は目を瞑っていた。


高萩の心の声:

「まさか、さっきの2球共に目を瞑っていて見てなかったんじゃ…。 ヤバいぞ、奴がそれをする時は…。」


リトル時代の氷石は一番の勝負の際、打席に入った途端目を瞑り、初球と2球目を見送って、3球目に目を開いて打撃を開始していた。 死球を恐れないそれをする訳は、相手投手に集中する為に何もかも視界をシャットアウトしたい彼なりの方法だった。 集中度からすれば味方のサインを無視する程で、昔の氷石の癖だった。


高萩の心の声:

「この状態に入ると、粘って四球選びの粘りの打法から、氷石自らが嫌う三振を省みないデカい一発狙いに変わるんだっけ…。 なら、甘い球を投げる前にさっさと三球で終わらすっ!」


(ビュッ!)


俺は、緩急で三振させるためにナックルをインハイ気味に放った。 しかし…、


氷石:

「フンッ!」


(キーンッ!)


高萩:

「っ?!」


何と、氷石が苦手とするインハイに入ったナックルをジャストミートしたのだ!!


高萩:

「センターっ!!」


打球は、センター方向に上昇し…そして、


(ザッ)


球場奥の雑木林の中に、吸い込まれるように落ちていった。


高萩:

「…場外…ツーラン。」


俺は、呆気にとられてマウンド上でへたり込んでしまった。 それを後目に、氷石はダイヤモンドを悠々と回っていった。

(龍泉側ベンチ)


茉山:

「ったく、オイシいところを持っていきやがって…あのコワッパめ。」


これ以上、打たれてはいけなかったのに打たれてしまった。 しかも、旧友が放った特大場外ホームランに、俺は投げる気力を失くしてしまいそうになってしまった。

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