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友達の存在...  作者: りす君
56/58

friends55:茉山の実力。

5回に入り、全力投球してきた藤浦の体力はかなり消耗してきた時、あの茉山が勝負を仕掛けてきた…。

主審:

「プレー!」


前の回、代打千駄木によって2点追加した俺達。 だが、茉山達は動揺一つしていなかった。


高萩の心の声:

「しかも、交代時に茉山がナインを囲んで何か話してたのも気になる…。」


俺は、取りあえず藤浦にインコース高めのジャイロを要求した。


(ビュッ!)


石橋の心の声:

「…やはり、茉山の言う通りだ。」


(バシッ!)


主審:

「ボール!」

高萩の心の声:

「嘘?!」


俺は、明らかに動揺していた。


高萩の心の声:

「まさか…、アイツ疲れているんじゃ?」


俺は心配し、カーブを要求した。


(ビュッ!)


高萩:

「っ!?」


何と、藤浦のカーブの精度が落ちていたのだ。


石橋の心の声:

「貰った!」


(カキーン!)


藤浦:

「…あっ!?」


石橋の打球は、レフト前に落ちた。


高萩:

「タイム、お願いします!」

主審:

「タイム!」


俺は、藤浦の所に向かった。


高萩:

「大丈夫か?」


藤浦は肩を揺らしながら呼吸していた。 疲労しているのは、目に見えていた。


藤浦:

「大丈夫だ。 もし俺が降板したら、ピッチャーはお前がやれる。 だが、キャッチャーはどうする? キャッチャーがいないんじゃ、試合を続行出来ないんだ!」

高萩:

「だが…無理はするなよ。 これから、少し配球を考えてみる。」

藤浦:

「頼んだぜ…、名キャッチャー。」

高萩:

「ハハッ。」


俺は、藤浦の胸をポンと軽く叩いてキャッチャーの正位置に戻った。


ウグイス嬢:

「7番。 セカンド、日向君。」

主審:

「プレー!」

高萩の心の声:

「藤浦、踏ん張ってくれ!」


(ビュッ!)


日向の心の声:

「球速…キレ、茉山さんが指摘した通り、落ちている。 …なら。」

高萩の心の声:

「バント!?」


(コンッ!)


日向がバントした打球は、三塁線の深い所で止まった。


主審:

「フェア!」

高萩:

「っ!? 藤浦、サードに任せろ!」

藤浦:

「俺のミスを、他の奴に尻拭いさせてたまるかぁよっ!」


(ビュッ!)


藤浦:

「っ!! しまった!」

落合:

「うわっ!」


(パシッ!)


一塁審:

「セーフ、セーフ!」

藤浦:

「クッ!!」

高萩の心の声:

「藤浦の悪送球を、落合が捕るために、アイツの足がベースから足が離れていたんだ…。」


これで、ノーアウト、一、二塁になった。

その内の一人がスコアリングポイントに到達している。


高萩の心の声:

「ここでゲッツー(併殺)、最低でもアウト一つは取らないといけないな。しかし…。」

ウグイス嬢:

「8番。 ピッチャー、虔沼君。」


相手バッターは、先制点を入れた虔沼。 簡単にアウトを取れるとは、思わなかった。


主審:

「プレー!」

高萩の心の声:

「ここは、打たれて大量点を採られるより、フォアボール(四球)を選んだ方が良い。」


(パシッ!)

(パシッ!)

(パシッ!)

(パシッ!)


主審:

「フォアボール!」

虔沼:

「…分が悪くなっただけだな。」


(コン…コロロン…)


ウグイス嬢:

「9番。 レフト、野尻君。」

高萩の心の声:

「ノーアウト、満塁。 藤浦、コイツを何とか抑えよう。 最悪、点をあげても良い。」


(ビュッ!)

(カキンッ!)


美作:

「おりゃっ!」


(パシッ!)

(ビュッ!)


零園:

「オーライッ! …よっ!…と。」


(パシッ!)


二塁審:

「アウト!」


零園:

「落合っ!」


(ビュッ!)


落合:

「よっ! …と。」


(パシッ!)


一塁審:

「アウト!」


(芹沢勢ベンチ)


潮見:

「やった!」


(本塁)


主審:

「ホームイン。」

石橋の心の声:

「点をあげても、芹沢がリードしている。 だから…。」

高萩:

「ツーアウト、ツーアウト!」


(バッターサークル)


茉山の心の声:

「チャンスに滅法強い虔沼を歩かせて、確実に打ち取れる相手を選んで、被害を最小限に留めたっていう訳か…。」

ウグイス嬢:

「1番。 ライト、茉山(まやま) (すぐる)君。」


とうとう、茉山がバッターサークルに現れた。


(龍泉側ベンチ)


犀潟兄:

「茉山、俺を下ろしたからには、何としてでも点採れよ!」


(本塁)


主審:

「プレー!」


茉山は、バッターボックスに入ってから無表情だった。 マウンドには、宿敵である藤浦がいるのに、だ。


犀潟の心の声:

「未だ、ツーアウトでも三塁にランナーがいる。 一打打たれたらヤバいぞ、高萩、藤浦!」


俺は、カーブを要求した。


(ビュッ!)


茉山:

「フンッ!」


(カキーン!)


一塁審:

「ファール! ファール!」

茉山:

「チッ! 外したか。」


二球目、藤浦にフォーシームジャイロを要求した。


(ビュッ!)

(カキンッ!)


主審:

「ファール!」


バックネットに、打球が掛かった。


高萩の心の声:

「藤浦のフォーシームを楽々とカットしてる…何て奴だ!」


それから、藤浦がどんなに際どいコースに投げても、茉山にボール球として見送られたり、弾かれたりした。 もう彼の体力が残り少ないのを考え、俺は苦渋の決断をした。


高萩の心の声:

「藤浦、もう良い。 歩かせよう(四球)。」

俺は、そうサインして立ち上がった。 が、しかし…。


藤浦:

(首を横に振る。)

高萩:

「っ!?」


嘘だろ、と思った。 まさか、藤浦が勝負しようと思っているとは…。


高萩:

「主審、タイムお願いします!」


俺は、マウンドにいる藤浦へ駆け寄った。


高萩:

「どういうつもりだよ! もしホームラン打たれたら、同点になっ…。」

藤浦:

「打たせやしない!」

高萩:

「っ!?」

藤浦:

「打たせやしない。 必ずアイツを三振に仕留めてやる!」

高萩:

「だ、だがお前の残りの体力では…。」

藤浦:

「俺は、アイツと全力で勝負して、ぶっ潰したいんだ!」

高萩:

「ピッチャーは、藤浦しか居ないんだ! お前が降板したら、どうするんだよ!」

藤浦:

「その時は…高萩、お前がマウンドに上がれ。」

高萩:

「バカ野郎! 俺じゃ、龍泉打線を抑えられない!」

藤浦:

「それは、ヘボキャッチャーが恋女房だったらの話だろ?」

高萩:

「だが、そのキャッチャーすら、俺らのチームには居ないんだぞ!?」

藤浦:

「居るよ。 とっておきの、キャッチャーがね。」

高萩:

「えっ!? まさか…。」

藤浦:

「…解るよな。 もう俺にはまともに投球出来る体力は残っちゃいない。 次が俺のラストボールになると思う。 例え、アイツに打たれても同点。 大丈夫。 また打って、アイツらを突き放す。 行くぜ…全力投球、真っ向勝負だ、高萩!」

高萩:

「………。」


俺は、無言で藤浦にボールを渡し、キャッチャーボックスに戻った。


主審:

「プレー!」


俺は、勝負に出た。 ど真ん中の渾身のフォーシームジャイロボールを要求した。


藤浦の心の声:

「行くぜ、茉山!」


(ビュッ!)


茉山:

「バーカ。」



(カキーン!)


球場内に轟く金属音。


高萩の心の声:

「…よくやった、よくやったよ藤浦。」


藤浦や俺の目から、少し涙が出ていた。


(ガサッ!)


茉山の打球は、場外の雑木林に消えた。


(大歓声)


(茉山がホームに帰還する。)


主審:

「ホームイン。」


これで、とうとう同点に追いつかれた俺達。 このまま龍泉のペースに持ってかれてしまうのか?

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