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友達の存在...  作者: りす君
55/58

friend54:決意。

新たな魔球、ナックルカーブを持つ虔沼。 それに立ち向かう芹沢ナイン。 だが、高萩すらまともに当てられない状況である。

ウグイス嬢:

「5番。 キャッチャー、高萩君。」


俺は、バッターサークルからアイツの球を見ていたが、藤浦を空振りさせた変化球が解らなかった。


主審:

「プレー!」


(ビュッ!)

(スパンッ!)


主審:

「ストライーク!」


アウトコース高めの、ストレート。


(ビュッ!)


高萩:

「…くっ!」


(カンッ!)


主審:

「ファール!」


インコース低めに食い込んでくる、スクリューボール。


虔沼:

「…よくバットに当てたな。 誉めてやるよ。」

高萩:

「ハハッ…これでも精一杯なんだけどな。」

虔沼:

「なら、俺の抑え球は打てないな。」

高萩:

「抑え球…だと?」

虔沼:

「行くぜ?」


(ビュッ!)


高萩:

「っ?!」


虔沼が投げた球は、無回転でゆっくりとベース付近で曲がりながら落ちた。


(パシッ!)


主審:

「ボール!」

虔沼:

「チッ! …ボール一個分外れたか。」

高萩の心の声:

「こっ、これが…なっ、ナックルなのか?!」


(芹沢勢ベンチ)


岩原:

「ふぅ…これまた厄介なボールを投げてくるな。」

藤浦:

「あれは…ナックルですよね?!」

岩原:

「…あぁ。 だが、奴のナックルは、ただのナックルじゃない。 おそらく、奴が投げてるのは…ナックルカーブ。」

藤浦:

「ナックルカーブって…取得するのに苦労するが、ナックルより不規則に落ちる変化、更に孤を描くように曲がる高精度魔球。」

潮見:

「ふ…藤浦君?」

藤浦:

「何だ、潮見?」

潮見:

「な、ナックルって…高萩君も投げてる、無回転ボールの事だよね?」

藤浦:

「あぁ。 だが…高萩の投げてるナックルと比べて、奴のナックルは精密で、厄介な変化球だ。 打ち崩すのは、大層難しいだろうな。 バットに当たるかどうか…。」

潮見の心の声:

「た…高萩君、頑張って!」


(バッターボックス)


高萩の心の声:

「カウント、ツーワン。 しかも、アイツが投げるのは、食い込むスクリューと、魔球…新型ナックル。 藤浦が空振りするのも、無理ない。」


(ビュッ!)


高萩の心の声:

「だが、確実にあの魔球に当てる方法がある…それは。」


(芹沢勢ベンチ)


藤浦:

「バント?!」


(カーンッ!)


高萩:

「あぁっ?!」


(パシッ!)


主審:

「アウトッ!」

虔沼:

「…打ち上げたか。」

茉山:

「バカだな。 バントで、その場しのぎしたのかよ。 やはり、俺の見込み違いだったか。」

ウグイス嬢:

「6番。 ファースト、落合君。」


(芹沢勢ベンチ)


高萩:

「済まない…。 バントで、何とか相手の守備陣をかき回そうとしたが…無理だった。」

犀潟:

「しょうがねぇよ。 当てただけでも、凄いさ。」

藤浦:

「高萩。 あの変化球…。」

高萩:

「あぁ、新型ナックルの事か?」

岩原:

「あれは、ナックルカーブだ。 ったく…厄介なピッチャーを敵に回しちまったな。 前のガキのフォークは、出来損ないだったからジャストミート出来たが…あれは、俺でも打てるか解らん。」

高萩:

「無理に打ちに行くと、俺達自身のバッティングフォームを崩してしまいますからね…。」

藤浦:

「逆に、打ちに行かなければ、フォアボールやデッドボール(死球)が無い限り…三振。」

零園:

「俺は…。」

屋代:

「…零園?」

零園:

「俺は、勝ちたいです! あんな変化球でも、バットに当てさえすれば良いんですよね?!」

潮見:

「あ…あたしも、頑張るから!」

高萩:

「二人共、確率とか頑張りとかであの魔球を打てるか? 打てるなら、とっくに打ち崩してるよ…。」


(三塁)


三塁審:

「フェア!」


(芹沢勢ベンチ)


岩原:

「う、嘘だろ?」


俺がフィールドの方を見ると、落合が一塁で立っていた。


藤浦:

「た、タイムっ!!」


藤浦が、落合の元に走っていった。


高萩:

「うっ、打ったのか?! あの魔球を?」


(一塁)


藤浦:

「どうやって打った、あの球を?」

落合:

「いや…ただ適当に振ったら当たっただけで。」

藤浦:

「適当に…?」

ウグイス嬢:

「7番。 ショート、零園君。」


(本塁)


主審:

「プレー!」

零園の心の声:

「俺だって…、打てるんだ!」


(ビュッ!)

(ブンッ!)

(パシッ!)


主審:

「ストライク!」


(ビュッ!)


零園の心の声:

「クソッ! 何で当たんねぇんだよ!」


(ブンッ!)

(パシッ!)


主審:

「ストライク!」

虔沼:

「…ただ振っても、当たんない。」


(ビュッ!)


零園の心の声:

「何だよ…結局、俺は三振で皆に迷惑掛けちまうのかよ。 嫌だ、俺だって…。」


(零園の目が開く。)


零園の心の声:

「勝ちてぇんだ!」


(カキーン!)


虔沼:

「っ?!」

(芹沢勢ベンチ)


潮見:

「当たった!?」

藤浦:

「走れぇー、零園!!」


零園の打球は、二遊間を抜けた。


高萩:

「ストップ!!」


これでツーアウト、ランナーは一、二塁になった。


高萩の心の声:

「ランナーが得点圏に入った! 次のバッターは…。」


俺は、電光掲示板を見た。


高萩の心の声:

「ま…麻衣かよ。」


(芹沢勢ベンチ)


岩原:

「せっかくのチャンス、逃したな。」

藤浦:

「…当たってくれれば、良いんですけどね。」

ウグイス嬢:

「8番。 ライト、潮見さん。」


(本塁)


潮見:

「よ…よっしゃ〜、こっ来い〜。」

虔沼:

「…お手柔らかに。」

主審:

「プレー!」


(ビュッ!)


潮見:

「えいっ!」


(ブンッ!)

(パシッ!)


主審:

「ストライク!」


(一塁)


高萩:

「…ダメだこりゃ。」


(ブンッ!)

(パシッ!)


主審:

「ストライク!」


さすがに、ラッキーが続く事が無いと思い、俺は諦めていた。


(芹沢勢ベンチ)


美作:

「次の回の守備の用意をしておきます。」

藤浦:

「そうだな、頼む。 …おいっ! 千駄木、どこ行くんだよ! そっちは…って、おいっ! 無視するなよ!」


(本塁)


潮見の心の声:

「何で…何で打てないのよ! あたしだって、皆の役に立ちたいのに…。 また、あたしは足手まといになるの?」

???:

「主審、タイムをお願いします。」

主審:

「たっ、タイム! …何だね、君?」


(一塁)


高萩の心の声:

「せ…千駄木?! 何やってんだ、アイツは?」


(本塁)


潮見:

「せっ、千駄木さん?!」

虔沼:

「…萌?」

千駄木:

「芹沢高校、10番。 私、千駄木が潮見さんの代打になります。」

潮見:

「えっ?!」

芹沢勢:

「えーっ?!」

虔沼:

「正気か…お前?」

千駄木:

「私、亮也と一度勝負してみたかった。 それに…。」

潮見:

「せ…千駄木さん?」

千駄木:

「これは私自身、亮也への区切りをつけるモノになるの。 だから…潮見さん、身勝手で申し訳ないけど…私と変わってくれないかな?」

虔沼:

「………。」

潮見:

「…解った。」


潮見と千駄木が話を終え、主審が球場スタッフからウグイス嬢へ伝えに行った。


ウグイス嬢:

「ここで、バッター交代のお知らせを致します。 バッター、潮見さんに変わりまして、千駄木 萌さん。 背番号、10番。」

主審:

「ツーアウト。 カウント、ツー、ナッシング。 続行! プレー!」


(一塁)


高萩の心の声:

「千駄木…、打ってくれ!」


(本塁)


千駄木の心の声:

「アイツと別れてから…、今まで思い詰めてた。 あの時、伝えなければならなかった事が沢山あったのに…とか。」


(ビュッ!)

(パシッ!)


主審:

「ボール!」

虔沼の心の声:

「クソッ! アイツがあそこに立っていると、雑念が入って…。」

霜尻の心の声:

「どうしたんだ!? 虔沼の今のナックル、精度が落ちてる…。」


(ビュッ!)


千駄木の心の声:

「だけど…今、この場でハッキリさせる! 私は…私は…。」

霜尻の心の声:

「っ?! へ、変化しない!?」

虔沼:

「しっ、しまった!!」

千駄木の心の声:

「亮也。 本当に…。」


(ブンッ!)


千駄木の心の声:

「ありがとう!」

高萩:

「当たれぇー!!」

千駄木:

「えーいっ!!」


(カキーン!!)


虔沼:

「………くっ!」


(ヒュンッ!)


芹沢勢:

「…あっ!?」


この球場に、一瞬だけ静けさが漂った。


(トンッ…トンッ…。)


高萩:

「走れぇー、千駄木!!」

茉山:

「クソッ!」


千駄木の渾身の打球は、右中間の深い所に落ちた。


(本塁)


(ドシッ!)


落合:

「4点目っ!!」


(芹沢勢ベンチ)


藤浦:

「よっしゃー!! 続け、続けぇ!!」

岩原:

「回れー、一年!!」


(本塁)


(ドシッ!)


零園:

「5点目っ!!」


(一塁)


高萩:

「千駄木ぃー、サードに突っ込めぇ!!」


(外野)


茉山:

「そうは…させるかーよぉ!!」


(ビュンッ!)


(三塁付近)


千駄木:

「届けぇー!!」


(ビュンッ!)

(ザザーッ!!)


上条:

「フンッ!」


(パシッ!)


三塁周辺は、砂埃や粉塵が舞い上がって外からよく見えなかったので、アウトかセーフかどうか、解らなかった。 果たして…。


三塁審:

「…っ!? あっ、アウト!! スリーアウト、チェンジ!!」


(一塁)


高萩:

「あー、惜しい…。」


(芹沢勢ベンチ)


岩原:

「やはり…。 あの茉山の前じゃ、奇跡も消えるのか。」

藤浦:

「…あっ、お帰り。 千駄木。」

千駄木:

「走りには、自信があったのにな…。 しかも…あーっ!! 服がドロドロ…。」

藤浦:

「せ、千駄木…。」

千駄木:

「ほらっ、そんな顔してないで! チェンジだってよ! 点を追加したんだから、しっかり守ろうね!」

藤浦:

「あ、あぁ…。」


(フィールド)


ウグイス嬢:

「5回表。 龍泉高校の攻撃は、6番。 ファースト、石橋君。」


こうして俺達は、代打の千駄木に追加点を貰い、守備についた。

果たして、このまま俺達は茉山のチームを破る事が出きるのか…。

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