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友達の存在...  作者: りす君
54/58

friends53:ガチンコ勝負!!

野尻の変化球、フォークに岩原以外の芹沢勢は悪戦苦闘していた…。

氷石の心の声:

「そ、そんな…。 まさか、あれがハッタリだったなんて…。」


(ビュッ!)

(スパンッ!)


主審:

「ストライークツー!!」

高萩:

「どうした? 打たないのか?」

氷石:

「…ふ、ふざけるなっ!! ぼ、僕はこのチームの4番打者なんだ…。 さ、三振してたまるかっ!!」

高萩:

「来いよ、チームとか4番とか関係なく…俺達の球を全力で振ってみろよっ!!」


(ビュッ!)


氷石:

「ウォーッ!!!」


(ブンッ!)


藤浦が投げたボールは、氷石のフルスイングしたバットの下を通り抜けた。


(スパンッ!)


龍泉勢:

「あぁっ!?」


(シュ…。)


主審:

「す…ストライーク!!バッター、アウッ!!」

氷石:

「っ?!」

内野勢:

「ナイスピッチ!!」


俺が、氷石へ向けて藤浦に投じさせたボールは、三球全て直球(ストレート)だった。


(龍泉勢ベンチ)


茉山:

「どうした? 珍しいじゃないか、君が三球三振とは。 全部、ストレートじゃなかったか?」

氷石:

「えぇ。 でも、このチームで茉山さん以外の人が一打席で打てませんよ、あの球は。」

茉山:

「ふぅ…厄介だな、あのバッテリーは。」


(スパンッ!)


主審:

「ストライーク!!バッター、アウッ!! スリーアウト、チェンジ!!」


(芹沢勢ベンチ)


千駄木:

「スゴいじゃん!! あの氷石君を三振に仕留めるなんて!!」

高萩:

「ま、まぁな…。」


千駄木に言われ、俺は性に合わず照れてしまった。


(パコッ!)


高萩:

「痛っ! …な、何すんだよ、藤浦!?」

藤浦:

「デレデレしてる暇があったら、あの落差の大きいフォークの攻略法を考えとけ!!」

高萩:

「わ、解ってるさ!!」

潮見の心の声:

「…高萩君。」


俺達は、何とかしてあのフォークを打ちたかった。 だが、そう簡単に打てる球では無かった。


ウグイス嬢:

「4回裏。芹沢学園高校の攻撃は、2番。レフト、犀潟君。」


(ブンッ!)

(スパンッ!)


主審:

「ストライークツー!!」

高萩の心の声:

「やはり、犀潟でも無理か…。」


(スパンッ!)


主審:

「ボール!」


(スパンッ!)


主審:

「ボール!」

高萩:

「…ん?」


(スパンッ!)


主審:

「ボール!ツー、スリー!!」

石橋:

「た、タイムお願いします!」

主審:

「タイム!!」


先程から、相手ピッチャーのピッチングが定まらなくなってきていた。 フォークが、ストライクゾーンより下など地面スレスレだったり、ワンバウンドだったり…。

ようやく相手バッテリーの話も終わり、キャッチャーが戻ってきた。


主審:

「プレー!!」


(ビュッ!)


高萩:

「振るな、犀潟!」

犀潟:

「…えっ?」


(パシッ!)


主審:

「ボール…フォアボール!」

石橋:

「…チッ!」

高萩の心の声:

「…やはりな。あのピッチャー、フォークをあまり使い慣れていない!」

ウグイス嬢:

「3番。サード、屋代君。」


俺は、彼がバッターボックスに入る前に呼び寄せた。


屋代:

「何ですか、先輩?」

高萩:

「良いか? ゴニョゴニョゴニョ…。」

屋代:

「…解りました。」

高萩:

「よし、行ってこい!!」


俺は、屋代の背中をポンッと押した。


主審:

「プレー!!」


(芹沢勢ベンチ)


高萩:

「ちょっと一塁コーチャーに行ってくるわ。」


(一塁)


犀潟:

「…た、高萩!?」

高萩:

「シー! …良いか?俺の合図で、走れ(盗塁しろ)!」

犀潟:

「大丈夫か? 刺されないか(アウトにならないか)?」

高萩:

「二盗は、大丈夫。 あのピッチャーなら、パスボール(補逸)も有り得るからな。」

犀潟:

「…解った。 合図、頼んだぞ。」

高萩:

「…行くぞ。」


俺は、相手ピッチャーのモーションを見ながら走るタイミングを図った。


高萩:

「よし! リーリーリーリーリーリー…。」


(ビュッ!)


高萩:

「バック!!」


(ザザー!!)

(パシッ!)


一塁審:

「セーフ!」


さすがに、相手バッテリーは警戒しているようだ。

再び、モーションに入る。


高萩:

「リーリーリーリーリー…。」


その時、ほんの一瞬だけ相手ピッチャーに大きな隙が出来た。


高萩の心の声:

「わ…ワインドアップ!」

高萩:

「ゴー!!」


(ダッ!)


俺の合図と共に、犀潟が二塁へ走り出した。


石橋の心の声:

「盗塁!? させるかよ!」


(ビュッ!)

(パシッ!)

(ビュッ!)


相手キャッチャーのクイック投法も完璧だったが、犀潟の方が一枚上手だった。


(ザザー!!)

(パシッ!)


二塁審:

「セーフ!セーフ!」

高萩:

「ヨッシャー!!」


(二塁)


犀潟:

「ヘヘッ、(もう)けたぜ。」


野尻:

「………。」


野尻が、無言で足でマウンドの土を蹴り散らした。



野尻:

「…盗塁された…盗塁された…俺から盗塁された…ブツブツブツ…。」

石橋:

「た、タイム!!」

野尻:

「…うぉぉぉぉぉー!!!」

高萩:

「っ?!」


いきなり野尻が雄叫びを上げ、場内は騒然となった。


(龍泉勢ベンチ)


茉山:

「チッ、…ったく。」


石橋:

「落ち着け、野尻!!」

野尻:

「うるせっ!!邪魔するなぁ!!戻れぇー、ヘボキャッチャー!!」

石橋:

「っ!? の、野尻…。」


石橋は、キャッチャーボックスに戻った。


主審:

「プレー!!」


野尻の心の声:

「俺は…俺は…誰よりも強いんだぁ!!!」


(ビュッ!)

(スパンッ!!)


主審:

「ストライーク!!」

藤浦の心の声:

「さ、さっきより…速くなってないか?」

高萩の心の声:

「嘘だろ?! ここで立ち直られたら、俺達はまた三振でねじ伏せられちまう!!」

(スパンッ!!)


主審:

「ストライークツー!!」


俺は、必死にアイデアを考えた。


高萩の心の声:

「…そうだ!」


一か八か、俺は賭けに出た。


高萩:

「犀潟っ!! 走れぇ(三盗しろ)ー!!」


(二塁)


犀潟の心の声:

「えっ!? 三盗だと!?」


(ビュッ!)

(ダッ!!)


野尻:

「サードッ!!」

石橋:

「っ?! …あっ!?」


(カッ!)


石橋のキャッチャーミットが、暴投気味のフォークを捕らえられず補逸した。


(ザザー!!)


高萩:

「っ!? やったー!!」


(三塁)


三塁審:

「セーフ!セーフ!」

犀潟:

「…三盗成功。」


(本塁)


石橋:

「っ?! そ、そんな…。」


(龍泉勢ベンチ)


茉山:

「…使えねぇバッテリーだな。 おい滝本、そろそろ準備するから、ブルペンの奴らに連絡だ。」

茉山の部下、滝本:

「ハッ!!」

茉山の心の声:

「楽しいよ、こんなに俺を不愉快にさせるゲームなぞ、今までに無かった!! たっぷり楽しもうじゃないか…。」


(マウンド)


野尻の心の声:

「あっ、あれは滝本さん! ふ、ふざけるな!! こんな奴らの所為で、易々と交代させられてたまるかよ!!」


(ビュッ!)


高萩:

「打て、屋代!!」

屋代の心の中:

「…中学三年間、俺は補欠のそのまた補欠の身だった。 だから、チームの為に必死にバットを振る事なんて考えた事が無かった。 だけど…。」

石橋の心の声:

「っ?! お、落ちない!!


野尻の投球は、ホームベース付近で落ちずに進んでいった。


屋代の心の声:

「今こそ俺は、皆の為に全力で…。」

石橋:

「っ?!」

屋代の心の声:

「打つ!!」


(カキーン!!)


高萩:

「あっ!!」

バッテリー(野尻・石橋):

「「な、何ぃ?!」」

茉山:

「…フッ。」


屋代の打球は、レフト方向に大きなアーチを描いた。


屋代:

「落ちろー!!」

藤浦:

「…っ!?」

芹沢勢:

「「入れぇー!!」」


(ガサッ…トンッ…トンッ…。)


屋代の打球は、レフト後方のフェンスを越え、スタンドインした。


屋代:

「や…やったぁー!!」

芹沢勢:

「「入ったぁー!!」」


芹沢の電光得点板に、2の数字が光った。

俺は、ダイヤモンドを回り終えてきた二人に、ホームでハイタッチした。


高萩:

「よくやった、屋代!!」

屋代:

「お、俺…役に立ちましたよね?」

高萩:

「あぁ! 凄かったぜ、あのホームランは。」


(ブルペン)


茉山の心の声:

「滝本、伝えに行け。」

滝本:

「ハッ!」



俺と屋代が話している途中で、アナウンスが場内に響いた。


ウグイス嬢:

「龍泉高校。 ポジション、並びに選手交代のお知らせを致します。」

高萩:

「えっ?!」

ウグイス嬢:

「ライト、犀潟 真空君に代わりまして、茉山(まやま) (すぐる)君。 キャッチャーの石橋君がファースト。 ファーストの霜尻君が、キャッチャー。 ピッチャーの野尻君が、レフトに入ります。」

芹沢勢:

「っ!?」

高萩の心の声:

「あいつ…ピッチャーも出来たのかよ?!」


俺は、虔沼の才能に半ば羨ましい気持ちだった。


ウグイス嬢:

「4番。 ピッチャー、藤浦君。」

主審:

「プレー!!」


俺は、バッターサークルに入って、虔沼から打てる球を見極める事にした。


(ビュッ!!)

(スパンッ!!)


主審:

「ストライーク!!」

高萩の心の声:

「な、何なんだ…あの変化球は!?」

藤浦の心の声:

「スクリューボール…。 厄介だな。」


(芹沢勢ベンチ)


潮見:

「先輩? 今の変化球って何ですか?」

岩原:

「スクリューボール。 左ピッチャーが投げられる、右ピッチャーが投げるシュートと対称的な変化球だ。 右打者だとベース付近で手元で沈んで見えにくくなるから、空振りになりやすい。」

潮見:

「凄い…。」


(パコッ!)


潮見:

「いたーい!!」

岩原:

「感心してる場合じゃねぇ。 俺でさえ、攻略に困難な変化球だ。 いかに打てるか、考えろ!」

潮見:

「グスン…ふぁ、ふぁい。」


(本塁)


藤浦の心の声:

「マジかよ…、スクリューは右打者にとって打ちにくいんだよな。」


(マウンド)


虔沼の心の声:

「俺の球は、これだけじゃねぇぞ!」


(ビュッ!)

(カキーン!!)


一塁審:

「ファール!ファール!」

高萩:

「追い込まれた…。 藤浦、打ってくれ!」


(マウンド)


虔沼の心の声:

「変化球って、決まった変化はしないんだよ。」


(ビュッ!)


藤浦:

「っ?!」


(ブンッ!)

(パシッ!)


主審:

「ストライーク!! バッターアウッ!!」

高萩:

「う、嘘だろ!?」

虔沼の心の声:

「一丁上がり。」


何と、藤浦が空振りしてしまったのだ。果たして、虔沼が最後に投げた魔球とは…。

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