friends52:心理戦。
試合は中盤に差し掛かり、前の回のホームランで高萩達のモチベーションは上がっていた…。
ウグイス嬢:
「4回表。龍泉高校の攻撃は、2番。サード、上条君。」
上条の心の声:
「さて、そろそろ本気出させて頂くよ…茉山?」
主審:
「プレーッ!」
(ビュッ!)
(スパンッ!)
主審:
「ストライークッ!」
俺達はこの回、クリーンアップが回ってくる事が解っていたので、取りあえずこの上条を抑えておきたかった。
藤浦の心の声:
「やるしかねぇよな!」
高萩の心の声:
「こい、藤浦っ!」
(ビュッ!)
上条の心の声:
「ふざけるなよ、俺達を簡単に抑えられる訳じゃねぇ事ぐらい、理解れよ!」
(カキーンッ!)
高萩:
「っ!?レフトーッ!」
犀潟:
「オーライ…よしっ!」
(パシッ!)
三塁審:
「アウッ!」
上条:
「な、何ぃ?!」
高萩:
「ヨッシャー!」
茉山の心の声:
「確かに、上条のバットにジャストミートした。が、アイツら自身の心の方が強かったようだな。」
上条:
「霜尻。あのストレート、ベース付近で急に伸びてくるぞ。気をつけろ!」
霜尻:
「…あぁ。一打席で把握したから、今度こそスタンドに叩き込んでやるよ。」
ウグイス嬢:
「3番。ファースト、霜尻君。」
高萩の心の声:
「誰が相手だろうと、打たせない。いくぞ、藤浦!」
俺は、真ん中から外角に逃げるカーブを要求した。
(ビュッ!)
(カキーン!)
高萩:
「っ?!」
一塁審:
「ファール!ファール!」
打球は、ライトポールをほんの少し逸れてファールになった。が、初球から飛ばされるとは予想外だった。
霜尻:
「チッ!逸れたか。」
高萩の心の声:
「カーブは危険…そしたら、わざと打たせてフライにするしかないな。」
(直球のサイン)
(ビュッ!)
霜尻:
「俺は、二度も…ヘマしねぇんだよっ!!」
(ブンッ…)
上条:
「捉えた!」
(カキーン!)
藤浦:
「せ、センター!!」
打球は、大きく放物線を描いて飛んでいく…。
岩原:
「くっ…。」
打球は、センターフェンスを越え、電光得点板の麓に当たった。
龍泉群:
「ヨッシャー!!」
(霜尻が内野-ダイアモンド-を回って帰還し、龍泉群の電光得点板に1が映った)
氷石:
「ナイスバッチです、先輩。」
霜尻:
「フッ…次はお前が放て。」
氷石:
「…了解です。」
ウグイス嬢:
「4番。センター、氷石君。」
藤浦は、霜尻にあっさりとストレートを打たれて唖然としていた。俺は、藤浦に掛ける言葉を必死に探したが、こういう時に限って見つけられなかった…。
氷石:
「おや? あのピッチャー…バテてる様子だね、荊太郎君?」
バッターボックスに入ってきた氷石が、困惑している俺に向かって言った。 普通なら、ここで言い返せるのだが、今の俺には氷石に言い返せる言葉なんか無かった。
氷石の心の声:
「この様子じゃ、バッテリーは相当参っているな。 今が攻め時だな…。」
主審:
「プレー!!」
氷石の心の声:
「遠慮なく行かせて貰うよっ!」
(ビュッ!)
(ブンッ!)
(スパンッ!)
主審:
「ストライーク!!」
氷石の心の声:
「っ?! う、嘘だろ…?」
(高萩がニヤリと笑う。)
氷石:
「っ!? は、ハッタリだと?」
高萩:
「…悪いな、幼なじみ。」
氷石:
「っ!?」
高萩:
「さっきのお前の一言で、俺らの闘争心に火が点いちまった。 今から、お前ら全員を全力で潰してやっから…覚悟しとけ!!」