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友達の存在...  作者: りす君
52/58

friends51:振出(ふりだし)。

龍泉勢に、先制点をあげてしまった芹沢勢。

その裏、龍泉勢がピッチャー交代の申し立てをしたのだ。

犀潟兄に代わり、ピッチャーを務めるのは意外な選手(やつ)だった…。

(スコアボード)

龍泉:1-0:芹沢




到頭、俺達は茉山率いる龍泉に先制点を許してしまった。

何とか、続く9番を三振に仕留め、1番バッターの犀潟兄もセカンドゴロで抑えてチェンジになった。


犀潟:

「…あーあ、先制点あげちまった。」


犀潟が電光得点板を見て、溜め息混じり言った。


潮見:

「ま…まだ3回だし…や、野球って9回の裏まであるょ…。」

高萩:

「まぁ…潮見の言う通り、まだ3回だ。逆転は充分に有り得るぜ。」

藤浦:

「そうだ、次のバッターは…。」


藤浦が電光得点板を見た途端、唖然とした。


藤浦:

「ピッチャー…交代だと?」

高萩:

「えっ?」

ウグイス嬢:

「ここで、龍泉高校の守備変更をお知らせ致します。ピッチャーの犀潟君がライト、ライトの野尻君がピッチャーに入ります。」

野尻:

「………。」


龍泉勢の動きが全く読めない俺達は皆、呆然と守備交代を見ていた。


アナウンス:

「3回裏、芹沢学園高校の攻撃は7番ショート、零園(れいその) 彪岔(ひょうた)君。」

主審:

「プレイっ!」


あの1年のライトが、一体どんな球を放るのかを藤浦を含め、チーム全員が見つめていた。


野尻:

「…っ!」

(ビュッ!)


彼の投げた球は、ストレートの速さで真っ直ぐの軌道からベースの近くでいきなり急激に落ちた。


(スパンっ!)

主審:

「ットライーク!」


フォークボール…しかも、落差も大きい。敵が、そんなのを隠し持っていたなんて思いもしなかった。


藤浦:

「こりゃ、攻略が難しそうだな。」

岩原:

「…猿の一覚えか。」

高萩:

「何か言いました?」

岩原:

「いや、別に…」


そう言うと岩原は、一旦ベンチを出ていった。


高萩:

(?…何だ?)

(スパンッ!)

主審:

「ットライーク!アウッ!」


バットを提げながら、零園が帰ってきた。


零園:

「駄目だったッス。あの落ちる球に、全く当たらなかったッスよ。」

潮見:

「うー…エイッ!」

(ブンッ!)

(スパンッ!)

主審:

「ットライーク!アウッ!」


潮見も、あのフォークに手も足も出ず。


岩原:

「そろそろ…あのガキの調子鼻をへし折ってやるかな。」


いきなりベンチに戻ってきた岩原は、バットを持って打席に入った。


ウグイス嬢:

「9番。センター、岩原(いわはら) 克彦(かつひこ)君。」

主審:

「プレイッ!」


主審が言い終わると、野尻はワインドアップで球を放った。


(ビュッ!)


やはり、決め球のフォークだった。だが、岩原はバットを短く持って待ち構え、そして…。


(カキーンッ!)


心地よい快音が、球場内に聴こえた。


藤浦:

「う…嘘だろ?」


打球はグングンと伸びていき、ライトとセンター間のフェンスを…越えた。


芹沢側ベンチ:

「「うぉー!!」」


何と、岩原があの落差の大きいフォークをいとも簡単にホームランにしたのだ。


野尻:

「………。」

岩原:

「…フンッ!」

(龍泉高校側ベンチ)

茉山:

(ほぅ…やはりあの長身の根暗男は要注意だな。)

藤浦:

「凄いですね、先輩。」

岩原:

「別に。」


これで、1-1の同点に追いついた。


美作:

「だぁー!」

(ブンッ!)

(スパンッ!)

主審:

「ットライーク!バッターアウッ!スリーアウトチェンジ!」


しかし、この回は岩原のソロホームランで終わった。


藤浦:

「皆、同点に追いついた。まだ4回だが、油断するな。深く守れ。外野は…まず犀潟、お前は三遊間(さんゆうかん:サードとショート)を抜かれないようにしっかり守れ。」

犀潟:

「了解。」

藤浦:

「岩原先輩は、ニ遊間(にゆうかん:セカンドとショートの間)と若干のライト方向は潮見だけじゃ危ないんで岩原先輩、捕れそうだったらお願いします。」

岩原:

「面倒だな、この嬢ちゃんは。」

潮見:

「むぅ…。」

高萩:

「で…潮見は、ファールライン際にいて出来るだけ捕れ。捕るのが無理そうな打球は美作か先輩に頼め。」

潮見:

「う…うんっ、出来るだけ捕れるように…あたし頑張るぅ。」

藤浦:

「内野の美作以外は、間を抜かれないようにしっかり守れ。」

落合・美作・零園・屋代:

「「はいっ!!」」

高萩:

「しっかり守って、逆転しようぜ!」

岩原以外全員:

「「オーッ!!」」

岩原:

「…フッ。」


こうして、試合は振出に戻った。

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