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友達の存在...  作者: りす君
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friends4:少女の涙…

正月早々、高萩は潮見からメールを貰い、会う事になった。高萩が待ち合わせ場所に着くと、潮見は高萩の方にやってきていきなり泣きついたのだった…

年が明け、1月の第2週の火曜日。 始業式が終わり、俺は成増と福本の2人と話をしていた。


高萩:

「どうだった、冬休みは?」


俺は、成増に尋ねた。


成増:

「俺は、ほとんど部活だったな。 高萩は?」

高萩:

「えっ、まぁ…いろいろ。」

福本:

「何だよぉ、教えろよぉ!」


2人に、気軽に教えられるはずがない。 何せ、シリアスな出来事に遭遇してしまったのだから…。


あれは、年が明けて間も無いある日。

補習授業が終わり、俺は何にもする事がなくて家で適当にTVゲームをしていた。 すると、携帯のメールランプが点灯した。 確認してみると、相手は何と潮見だった。


潮見:

『今日、逢えるかな…?』


いきなりこのたったの一行の文面が送られてきて、さすがに俺は困惑した。 しかし、直ぐに何かがあったと察知した俺は、隣の街にあるターミナル駅へ潮見を呼び出し、自宅から自転車を漕ぎまくって向かった。


ターミナル駅に着くと、潮見はこちらから見える場所で待っていた。 遠くから観ても、潮見の表情が暗いのが解る。


高萩:

「よう。 いきなり一体、どうしたんだ?」

潮見:

「ごめんね、高萩君しか相談出来る人が居なくて。」

高萩:

「まぁ...、別に良いけど。」


すると、いきなり潮見が泣きながらこっちに寄って来た。 俺は何も出来ず、取り敢えず彼女が落ち着くまで待っていた。

約数分後、潮見が口を開いた。



潮見:

「ここでは話せないから、場所を移しても良い?」


俺は(うなず)き、潮見の後を付いて行った。


ターミナル駅から徒歩で約10分。 辿り着いた場所は、流星公園という公園だった。 閑静な住宅街の中にあり、正月明けだったのか一人も人が居なかった。

俺はベンチに座ったが、潮見と少し距離を置いた。 俺の方から静かに口を開いた。


高萩:

「潮見、何があったのか話してくれないか?」

潮見:

「うん、実はね…。」


次に彼女の口から出た言葉に、俺は言葉を失った。










潮見:

「あたし…、“また”義理の父と兄から強姦されそうになったの…。」

高萩:

「…えっ?」










自分の耳を疑うのは、初めてだった。


出来る事ならこんな事は、聞きたくなかった。










潮見は、静かに涙を流しながら俺の方を向いていた。 俺は驚きつつも、内心キツくて目を背けてしまった。このままじゃ、どうしようも無いのに…。


ただ、時間だけが流れた。


気がつけば俺は、潮見の手を握っていた。


潮見:

「えっ…、高萩…君?」

高萩:

「大丈夫。」

潮見:

「えっ?」

高萩:

「ごめんな。 今まで遭ってきた、潮見の苦悩の全てを今直ぐ理解しろと言われても無理だ。だけど、これからはその苦悩を分かち合う事が出来るんだ。 俺は、潮見の味方だ。」


何故、俺はこんな事を口走ってしまったのか解らない。 だけど、一つだけ解ることがある。

今、潮見は確実に助けを求めている。それを俺は無視出来ない。 そこまでゲスな男じゃない。

俺は、出来る限り潮見の手助けをしてやろうと思った。


潮見:

「ありがとう、高萩君…。」


潮見は、俺の胸で声を上げて泣いた。

俺は、ただ彼女が泣き止むまでただ目の前の景色を観ているしか無かった…。


帰り際、俺は潮見に自分が持っていた幸福の御守りをプレゼントした。


潮見:

「ビー玉? 水晶みたい。」

高萩:

「綺麗だろ。 これを眺めていると、なんだか心が洗われるような気がするんだ。」

潮見:

「ありがとう、高萩君…。 あたし、ずっと大切にするね!


潮見は、微笑みながら受け取ってくれた。 俺も微笑んで、潮見は更に笑顔になった。


高萩:

「じゃあ…、またな。」


潮見は下を向いていた。


潮見:

「待って、高萩君。」


帰ろうと自転車に(またが)った時に、潮見に呼び止められた。


高萩:

「何、潮見?」

潮見:

「今日は…、本当にありがとう。」

高萩:

「あぁ。」


俺は返事した。すると、潮見は(ほお)を赤らめて小さく(つぶや)いた…。




潮見:

「それと…あたしの事、潮見じゃなくて、ま…麻衣って呼んで欲しいなぁ。」

高萩:

「えっ?」




俺が聞き返す前に、潮見は走って帰ってしまった。 俺は溜息を一息つき、家へ向けて漕ぎ始めた。

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