表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
友達の存在...  作者: りす君
49/58

friends48:新たな強敵。

2回の裏、芹沢学園高校の攻撃。

いきなり、先頭バッターの藤浦が空振り三振した。これに調子に乗った犀潟兄に対する高萩は、彼の挑発の言葉に惑うが潮見に奮起され、彼の投げた渾身の高速スライダーを無心で打つが…。

2回裏。俺達、芹沢学園高校の攻撃。




俺は、岩原を問い詰めていた。


「先輩、あの送球は先輩がやったモンなんですよね?」

「…知らねぇよ。」


岩原は、さっきからシラを切っていた。


「あれは、レーザービーム…いや、それ以上ッスよ!見直しました!」

「うるさい!…俺は送球してない。ライトの嬢ちゃんが投げたんだ。」

「あ、あたしは、あんなの投げられないよぉ!」

「黙れ。てか、次のバッターはテメェじゃねぇのか?」


岩原に言われて、俺はようやく気付いてヘルメットとバットを持って待機した。


「2回の裏。芹沢学園高校の攻撃は4番…ピッチャー、藤浦(ふじうら) 成一(せいいち)君。」

「プレイッ!」


バッターは、強打者の藤浦。しかし、ピッチャーは巧投手の犀潟兄。まともに、球がバットに当たるかどうか…。


(ビュッ!)

(ボンッ!)

「ットライーク!」


外角のカーブで、1ストライク。


(ビュッ!)

(ボンッ!)

「ボール!」


彼の選球眼は、舐めたもんじゃない。ベースから少し離れたスライダーを、見逃せる余裕さがあった。


「さすが、藤浦君。俺の球を良く見てくれて、ありがとよっ!」

(ビュッ!)


犀潟兄が投げた球は、進行方向に螺旋回転していた。しかし、フォーシームジャイロの速さを大きく下回っていた。


(ボンッ!)

「ットライークツー!ツーワン!」

(な、何だ?あのフォーシームジャイロの遅いバージョンは一体…。)


「藤浦、良く見て打て!」


俺は、藤浦に言った。


(ビュッ!)


また、あの変化球だった。


「くっ!」

(ブンッ!)

(ボンッ!)

「ットライーク!バッターアウッ!」

(そ、そんな馬鹿な!藤浦が三振するなんて。)


俺は、驚愕していた。すると、犀潟兄が叫んだ。


「ダサっ!あんなスローボールも打てないとは、茉山の目も疑えるよ。ハハハっ!」

「くっ!」


藤浦は悔しく、バットを持って先端を地面に一回叩きつけた。


「5番…キャッチャー、高萩(たかはぎ) 荊太郎(けいたろう)君。」


まさか藤浦が三振するとは、思わなかった。

俺は、取りあえずストレートかスライダーを来るのを待った。


「君だっけ?あの武里から、奇跡のヒットを打ったのは。」


犀潟兄は、俺を見下すように言った。


「お前、あんな奴からヒットを放ったって、凄くも何とも無いぜ!フッ…フハハハハ!」


高らかと笑い声を上げた犀潟兄は、大きく振り被った。


「今からな、本物の高速スライダーを投げてやるよ!俺は、お前のような奇跡野郎が大っ嫌いなんだよっ!」

(ビュッ!)


風を切り、(うな)りを上げた剛球がベースの手前で急激に曲がった。


(ボンッ!!)

「すっ…ストライークッ!」

(う…嘘だろ…。)


「ヒャハハッ!打てねぇだろ?所詮、お前はマグレ野郎だったんだよ!」

「っ!!」


俺は、愕然としてしまった。


「マグレ野郎は、ホンモノの前に、(もろ)くも崩れ去るだけなんだよっ!」

(ビュッ!)

(ボンッ!)

「ットライークツー!」


俺の頭の中は、既に真っ白になっていた。


「フッ!愚かな臆病者め!手を出さないなら、終わりにしてやるよっ!」

(ビュッ!)


こっちへ向かってくる剛球。俺は、もう打つ気が無かった。

だが次の瞬間、誰かが放った一言で、俺の真価が発揮された。


「高萩君っ!マグレじゃない事を証明してよっ!」

(ま…麻衣…か?)


ベンチから潮見が大声で放った言葉に、俺は我に返った。次の瞬間、俺は何も考えずにバットを思いっきり振った。


「ウォー!!」

(カキーン!)

(ヒュンッ!)

「な、何ぃ?!」


渾身の打球は左中間に落ちた。


「行けー!高萩っ!」


俺は、一塁を蹴って二塁に行こうとした。しかし、思わぬ奴が俺の進塁を阻んだ。


(シュッ…)

(パシッ!)

(ビュッ!)

「…えっ?」

(パシッ!)

「アウッ!」


俺は、呆気に取られた。


「な、何で…。あの打球なら二塁まで行けた筈なのに…。」

「ナイス、レフトッ! 」


俺はハッとして、レフト方向を見ると、暗い雰囲気をかもしだしている男が立っていた。

身長170ぐらいで、緑と黒色の混ざった色で剣山のような頭髪の男が、俺をツリ目で睨んでいた。

その男の身体からは、強い殺気を感じられた…。

俺は、電光得点板に映されている茉山のチームの打順を見た。


(8番。レフト、虔沼 亮也-けんぬま りょうや-)

(け…虔沼っていう奴が俺をアウトにしたのか?)


俺は、ベンチへゆっくりと帰った。ベンチに戻ってきた俺は、驚いた。

何故かベンチには、千駄木の姿があったのだ。


「せ、千駄木?!何故、ここにいるんだ?」


俺が声を掛けると、千駄木が気付いて振り向いた。


「あ、高萩クン。惜しかったね!」


俺は、ポカンと口を開いたままだった。


「やっぱ、凄いよ…アイツ。」

「えっ?」


千駄木の意味深な言葉に俺は我に返り、彼女の目線の先を見た。


「うん?…え、えぇっ!」


彼女の目線の先は、何とあの虔沼だったのだ!


「…千駄木、つかぬ事を聞くが。」

「何?」

「あのレフトの…虔沼っていう奴を知ってんの?」


すると、千駄木はサラリと言った。知ってるなら、それ以上何も言わないが、しかし彼女は驚くべき発言をした。


「うん。だって、私はアイツの“元カノ”だもの。」

「そうなんだぁ…って、えぇー!?」


俺を含む、ベンチにいた皆が驚いた。


「嘘じゃないよ。私、アイツと一緒の中学だったし。」

「あ…あぁ、そ、そうなんだ。」


俺は、動揺を隠せなかった。


「あのレフトの事で、知ってる事があったら教えて貰えないかな?」


藤浦が、千駄木に言った。


「えっと…中学時代は2番で外野を守ってて、俊足で50m走で6秒4を出して良く白く四角い板の間を走ってたわ。

あと…私が言うのもなんだけど、アイツ結構打ってたよ。見てる私の方も、爽快な気分にさせられたしね。」

「千駄木の言った事は要するに…盗塁も良くやるし、三振も少ないって事だな。」

「レフトの虔沼っていう人、かなり強敵ですね…。あ、落合。」


零園の言葉に皆が振り向くと、6番打者の落合がうつ向いて戻ってきた。


「…その様子だと、三振したんだな。」

「す…済いません。」


落合は、弱々しい声で謝った。


「良いよ、しょうがねぇよ。さっ、攻守交代だ。」

「「オー!!」」




…藤浦の言葉に皆、奮起してフィールドに出ていったが、俺だけ新たな強敵、虔沼の事を考えながらキャッチャーボックスに入った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ