friends43:チーム完成!
(何か…野球の話ばかりで済みません。)
高萩と藤浦が、クラスの男子に“チームに入らないか?”と呼び掛けたが、何と犀潟以外の全員が拒否したのだ。
「何故に?!何でやりたくねぇんだよ?」
「あの茉山さんだろ?ボロ負けになるだけだろ?」
「それに、その日は少し予定があるしな。」
「済まないな高萩、藤浦。」
翌日、俺と藤浦はクラスの男子に呼び掛けたが…何と、犀潟以外の男子全員に、参加しないと言われてしまったのだ!
「どうするんだよ…藤浦。」
藤浦は、悩んでいたがある良い考えを思いついたらしい。
「高萩、今直ぐにお前のツンツン頭の後輩を呼んできてくれ!」
「ふんふん…成程です。解りました、俺は参加しますっ!」
「よく言ってくれた、零園!」
これで零園が入ってもらい、4人。しかし、まだ足りない。
「あと5人…どうにかならないか?」
「3人はどうにか出来るッスけど…。」
「残りの2人か…。」
「…そうだ!3年生の先輩に男が1人いたはず!」
「でかした、高萩!早速、行くぞ!」
「済みません、岩原先輩いますか?」
3年生の教室は、2年生の教室に近いので直ぐに到着した。
「何だよ、誰だよ…お前ら。」
窓側の一番後ろに座っていた、明らかにネクラな長身の男が気付いた。
「御食事中、申し訳ないんですけど…岩原先輩に御願いがあって来ました。」
「嫌だね。」
(回答、早っ!)
「え…えっと、今度の5日に岩原先輩と一緒に野球をしたいなぁっと。」
「ふざけるな、却下。」
岩原は堅くなに、断り続ける。それを見かねたある女子の先輩が隣に座った。
「岩原、可愛い下級生がこんなに頼んでるんだよ?行ってあげても良いじゃん、ねっ?」
(ナイス、先輩。)
「御願いしますっ!ただ、外野でつっ立ってるだけで良いですから。」
その時、岩原の眉が動いた。
「…チッ、果南が言うなら。」
俺と藤浦は、見合わせて笑顔になった。
「さて…、これであと1人。藤浦、どうする?」
「うーん、もう学校には男子がいないからな。」
「…ねぇ、高萩君?」
「えっ?…うわっ!」
いきなり、後ろから声が聴こえてきた。俺は驚いて、尻餅をついた。
「何だよ…またかよ。」
俺の後ろにいたのは、両手の人差し指を絡ませてうつ向いていた潮見だった。
「藤浦、先行っててくれないか?」
「あ…あぁ。」
藤浦は先に教室へ戻って貰い、俺と潮見は保健室に行った。
(ガチャリ…)
どうやら、保健の先生はいないようだったので、そこら辺にあったパイプ椅子を借りて座った。
少しの沈黙の後、俺から話し始めた。
「で、何だよ。あの話は、無理だから…。」
「…違うの。」
「えっ?…じゃあ、何だよ?」
潮見は、また両手の人差し指を絡ませてうつ向いて言った。
「…あたし、入っても良いかな?」
「何に?」
「…野球のチームに。」
「はぁ?!」
俺は驚いて、声域が上がった。
「ちょい待て。麻衣は女子だぞ?普通に考えれば危ないだろ?」
「でも…。」
「気持ちはありがたいけど、麻衣は入れられな…。」
「でもっ!」
いきなり、潮見が叫んだ。
「なっ、何だよ…。」
「でもあたし、やりたいっ!高萩君と一緒に野球したい!役に立ちたいの!」
潮見は、精一杯の声で主張した。俺は、少し悩んだ。
「麻衣…体力は自信ある?」
「うーん…無いかな。」
「握力は何ある?」
「解らないけど…両手共、16無いと思う。」
「…キツいな。」
「そんなぁ…。」
潮見が、涙目になっている。俺は、慌てて言った。
「で、でも…自分からやるって言ってくれたのは、嬉しかったよ。麻衣、やるかい?」
「…うんっ!」
潮見は、持っていたミニタオルで涙を拭った。
「…ありがとう、高萩君。あたし…頑張る!」
「御礼を言うのは、こっちだよ。ホントありがとう。」
「うん。…ねぇ、高萩君?」
「ん、何だよ?」
俺が潮見の方へ身体を向けると、背伸びした潮見の顔が俺の顔に近寄ってきた。
「えっ?!うわっ!麻衣、何すんだ!!」
メンバーが揃い、
俺達は3日と4日に全体練習をしたが、潮見は全然と言うほど、野球センスが無かった。零園が呼んだ3人もあまり上手くなかった。しかも、岩原に関しては2日間の練習に現れなかったのだ。
…そして、運命の試合当日の朝がやってきた。