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友達の存在...  作者: りす君
41/58

friends40:動き出す…

高萩は零園と、屋上で話していた。

零園に告白した人の名前を聴いた高萩は、心底驚く。

(ガチャリ…)


屋上に続くドアを開け、俺と零園は風の強い屋上のフェンスに寄り掛った。


「はい、先輩。」


零園は、先程購入した物が入ったビニール袋を俺に手渡した。


「で、さっきの話の続きを聴かせてくれ。」


俺はそう言いながら、袋からミックスサンドイッチを取り出して、封を開けて一つパクついた。


「それでですね、その告白してきた女子の名前が…」


零園は、サンドイッチを食べていた俺に耳打ちした。その名前を聴いた俺は、少し違和感が沸いて、すぐにその違和感が解けた。


「何ぃ?!新川の妹にだと!」


零園は、何故俺が驚いているのか解らないようだった。


「えっ!亜華梨さんにお姉さんがいるんッスか?初耳ッス。」


俺は呆れて溜め息を佩いた。


「あのな、そんな事ぐらい知っとけよ。」

「…済みませんでした。」


零園は、頭を下げた。


「で、どうするんだよ?さっさと結論付けろよ。」


俺は、かなりイライラしていた。


「えっ…うーん…付き合おうかな…って思う…」

「ハッキリしろ!」

「うわっ!は、はい。返事します!ちゃんと亜華梨さんに返事します!」

「付き合おう、と?」

「はいっ!」

「よぉし。」


俺は、零園の背中を叩いた。


「先輩、ありがとうございました!」


零園は、満足そうな笑顔で言った。この何とも愛らしい笑顔なら、女子の母性本能をくすぐるのも無理ない。


「あぁ。早く行け!」

「はいっ!」


零園は俺に一度頭を下げ、屋上から出ていった。


(ふぅ…疲れた。)


俺は一旦、地べたについてビニール袋の中から食べ掛けのサンドイッチを取り出し、食べようとしたその時だった。


「そのサンドイッチ、私に頂戴。」


その声に俺は心底驚いた。その声の正体は、新川 亜未なのだから。


「聴いてたよ。高萩君の後輩が、亜華梨に告られたんだって?」


新川は、俺の手からサンドイッチを取って、パクついた。


「…いるんなら、出てこいよ。」


新川は、フフッと微笑んだ。


「しかし…亜華梨やるわね。あの子、昔から引っ込みじあんだったのに。」


新川は、懐かしそうに呟いた。


「俺も、後輩の口から新川の妹の名前が出てきた時は驚いたよ。」

「あの子も成長したんだなぁ。」


新川は、笑った。


「てか、姉貴さんから見てアイツはどうなんだよ、妹と釣り合う男か?」

「そんなの考えないわ。あの子が好きになった人を評価するなんて、私には出来ない。」


新川は、溜め息を佩いた。


「…そうでっか。」


その時、昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。


「それじゃ、私は先に行くから。次は物理だから、遅れないようにね。」


そう言って新川は、屋上のドアを開けて階段を降りて行った。


「…皆、動き出してんだな。」


俺は、自分だけが取り残された気分だった。


(さてと、俺も行くか。新川の言う通り、授業に遅れるとヤバいしな。)


そう思い、俺は屋上のドアを開けて階段を駆け降りようとした。その時、後ろから声が聴こえた。


「…高萩君、新川さんと何話してたの?」


俺は、後ろを振り返った。居たのは潮見だった。


(物陰に隠れてて、見えなかった…。)

「何って…まぁ相談事かな。」


俺の口から、とっさに出た答えはこれだった。


「嘘。相談事なら、あんな楽しそうな笑い声は聴こえない。」


潮見にここからずっと見ていたのかと思うと、少し怖かった。


「で…一体、何が言いたいんだよ。」


俺は、授業に遅れているという事から少しイライラしていた。さっきのイライラ感とは別だが。

潮見は、一息置いて言った。


「高萩君、新川さんの事が好きでしょ?」

「なっ?!」


俺は、自分の耳を疑った。


「だって、あんな楽しそうな笑顔は私とか福本君とかには見せない。」

「だからって…」


俺は、困惑していた。


「本当なんでしょ?高萩君は、新川さんの事が好きなんでしょ?」


潮見は、少しヒステリック状態になっていた。


「違う。」


俺は否定した。しかし、潮見のヒステリックは治まらなかった。


「嘘つき!高萩君は、絶対新川さんの事が好きでしょ?!」


俺は、我慢の限界に達した。


「いい加減にしろっ!違うって言ってんだろ!」


潮見の動きが止まった。


「だって…だって…」


潮見は、嗚咽(おえつ)を漏らしながら言った。


「…俺はもう行く。」


俺は潮見を置いて、物理の授業に行こうとした…。


「待って!」


今度は、潮見が俺の動きを止めた。


「…何だよ。」

「あたし…あたし…」


潮見は、泣きじゃくりながら言った。俺は、更にイライラしていた。

しかし次の瞬間…俺のイライラ感は吹っ飛んだ。


「あたし、高萩君が好きなの!凄く好きなの!」


潮見の精一杯の声は連絡階段の構造上、かなり響いた。


「…はぁ?!」


俺は、かなり驚いた。潮見は、しゃがんで声を上げて泣いていた。


「あたし…んくっ…高萩君が…大好きだから…他の…女子と…仲良く…くっ…してるのが…許せなかった。」


俺は、階段を上がり潮見にポケットティッシュを渡した。


「ありがとう、麻衣。折角の顔が台無しになるから早く処理しな。」




俺は、それだけ伝えて教室へ向かった。

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