friends3:男女の修羅場
高萩は、駅のホームで口論していた福本と川端を止めてくれと蒲原に頼まれた。高萩は蒲原の頼みを拒み続けるが…
高萩の心の声:
「あぁ…、非常に面倒な場面に遭遇してしまった。」
目の前の現実に、俺は溜息を吐きながら思った。
顔見知りである2人の男が対峙し、側に同じく顔見知りである1人の女…。 俗に言うアレだ、修羅場。
川端:
「テメェ、理佳に何やった?!」
福本:
「お前みたいな奴に、蒲原さんと付き合う権利なんて無い!」
2人から聞こえてきた罵詈雑言の合戦。 蒲原の顔からは、二人のいがみ合いに心底困り果てているのが伺えた。 まぁ、何にせよ俺には関係無いから、さっさと立ち去ろう。
しかし、不運な事にその思惑は無下にも奪われてしまった。
蒲原:
「あ、高萩君。」
運悪く、蒲原に見つかってしまった。
高萩:
「何、蒲原?」
無視する事が出来ず、非常に迷惑そうな声色で言った。
蒲原:
「あのさ、あの2人のくだらない喧嘩を止めてくれない?」
高萩:
「はい?」
普通、無関係である俺より当事者側である蒲原の方が止められる筈である。 仮に、俺が仲裁に入ったとしても止められる保証は無い。
高萩:
「俺より、蒲原の方が止めやすいと思うよ。それじゃ。」
そう言って、俺は立ち去ろうとした…が、現実は厳しかった。 彼女は、泣きすがるような声で言った。
蒲原:
「ねぇ、助けてくれるよね? ねぇ? ね? 高萩君、ここで逃げたら明日から高萩君、学校中の女子全員から嫌われちゃうよ?」
呆れた、演技お疲れさん。 ほぼ脅しに近い事を言ってきた。 そんな脅しにも屈せず、断り続ける俺。 しかし、次の瞬間…。
蒲原:
「う…、うぅっ。」
蒲原が両手で顔を覆った。多分、嘘泣きをしようとしているのだろう。 こうなったら、男の立場は非常に悪く、そして脆くなる。
高萩:
「しょうがない、後で山野屋の焼肉丼奢れよ。」
ついに俺は折れ、口論している二人に近付いた。
高萩:
「おい、みっともない争いは止めろ。」
俺が言うと福本が反論してきた。
「おい、高萩。コイツ(川端)より俺の方が、蒲原さんに相応しいだろ?」
すると、川端も言ってきた。
川端:
「俺は、正式に理佳と付き合ってるんだ。なのにこのデブが、『お前に蒲原さんを付き合う権利は無い。』とほざいて、つっかかって来たんだ。 高萩、どう思う?」
俺は、かなり困惑した。
普通なら、川端の方が正論なので応援するが、福本の方も蒲原の事を一途に思っているのも伝わってくる。
福本:
「おい、高萩。 川端なんて、蒲原さんの彼氏に適してないと思うだろ?」
福本に真顔で言われてが、やはり川端が正しいと判断した俺は、福本を諭す事に。
高萩:
「俺は、正式に蒲原と付き合っている川端の方が正しいと思う。 川端には悪い言い方かもしれないけど、福本は川端が蒲原と別れたら、その時にアタックしろよ。多分、それは無いと思うけど。」
川端:
「さすが高萩、解ってんじゃん!」
川端が笑みを浮かべながら、俺の肩に手を置いた。
福本:
「なんで解ってくれねぇんだよ! クソ! 死ね! ファ…グフッ!」
怒り狂って危険なワードを言いそうになった福本に制裁を喰らわせ、その場を去った。蒲原がすれ違いざまに、焼肉丼の代金を俺のポケットに入れた。
高萩:
「もう、二度と仲裁なんてやらないからな。」
軽く蒲原に忠告し、俺は丁度到着した列車に乗って帰ったのだった。