friends38:夕闇に消え去っていく飛行機雲。
到頭、成増と高萩達との別れの時がやってきた…。
翌日、成は学校に登校してきた。そして…4時間目が終わり、成との別れの時間が訪れた。
「成増、元気でな。」
皆、一言ずつ成に声を掛けていた。瀬戸や川端は涙を流し、犀潟と魚谷は皆で密かに買っておいた花束を渡した。
「宮城でも、テニス頑張れよ。」
「あぁ。」
ついに俺の番が来た。成に、何て言えば良いか解らなかった。
「高萩…」
俺は、何も言えずにうつ向いていた。
「今まで…ありがとう。」
成の優しい言葉に、俺はやっと声が出せた。
「…約束だ。」
「何だ、約束って?」
「次、会うときには無条件で殴らせろ。」
「…ふっ、まだあの事を根に…」
「…解ったなら、早く行きな。」
…成は、哀しい顔をしながら俺に一回会釈し、教室を出ていった。
「…さよなら、成。」
…俺は、歩いて行く成の後ろ姿を見つめながらポツリと呟いた。
成が転校して行った後、俺は数日、虚脱状態だった。福本や潮見などに話しかけられていても、まともに返さなかった。
そんなある日の放課後、俺は藤浦に声を掛けられた。
「お前、時間あるか?」
俺は、虚ろな目で彼を見た。
「キャッチボール…しないか?」
学校から少し歩くと、一級河川が流れている場所に辿り着く。そこの河川敷で、毎日沢山の人達が遊んでいる。
俺と藤浦は堤防の上に通学鞄を置いて、グローブを鞄の中から取り出した。
「…さて、投げるぜ。70パーの力だからちゃんと捕れよ。」
(要するに、俺がキャッチャーって事かよ。)
俺は、溜め息をつきながらしゃがんで構えた。
「行くぜ。」
そう言うと藤浦は、振り被った。
(ビュン!)
球は、ライフル銃から放たれた銃弾のように螺旋回転しながら俺のグローブに収まった。
「ほう…よくジャイロを捕れたな。」
「別に…」
「…チッ、今度は全力だからな。怪我したって…」
彼は言い終わる前に、振り被った。
「知らないぜ!!」
(ビュン!)
球はさっきの軌道と同じだったが、浮き上がる感覚と共にグローブに迫ってきた。
「くっ!」
(バンッ!!)
俺は何とかキャッチしたが、同時に左手が痺れた。
「…痛ぅ」
「やはり、キャッチャーじゃない奴が俺の球を捕っても、たかが一回だけだよな。」
「…当たり前だろ。」
「フンッ!やっといつもの高萩に戻ったか。」
「!」
(藤浦…お前。)
…藤浦がキャッチボールに誘ったのは、俺を元気づけるためだった。
「おい、ボーッとしてねぇで早くグローブ構えろ!」
「藤浦………あぁ、来いっ!」
人には出会いと別れがある、友達同士でもそうだ。これは宿命なんだ。
(…元気でな、大切な仲間よ。)
俺は、不意に丁度空に夕闇の中を徐々に消え去っていく飛行機雲と轟音を残しながら飛んで行く飛行機を見つめていた。