表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
友達の存在...  作者: りす君
37/58

friends36:青天の霹靂(へきれき)…

いつものように部活から帰宅した成増。しかし、迎えてくれた母親の顔が悲しみに満ちていた…

(成増家)



(ガチャ)

「只今。」


俺は、テニス部の練習が終わって帰宅した。


「龍、ちょっと。」


いつものように、靴を脱いで2階へ続く階段を上がろうとした時、お袋に止められた。


「何、お袋。」

「…ちょっと来て、お父さんから大事な話があるの。」


お袋の目は、何故か悲しみに満ちていた。


「…解ったよ。」


居間のドアを開けるとソファーに腰掛け、テレビの野球中継を見ている親父がいた。親父は、テレビを眺めながら話し始めた。


「龍、済まない。」


いきなり親父に謝られた。一体、親父は何をしたのか?

親父は、少し間を置いて話し始めた。


「父さんな、会社で左遷(させん)を命じられた。」

「さ、左遷?!」


左遷…その言葉自体、高校生でも解る。でも、どうして…


「会社の重大プロジェクトが上手く軌道に乗らなくてな。その責任を取らされて、父さんが宮城の子会社に飛ばされる事になった。」

「…そんな。」
























昔から、俺ら家族の生活を支える為に必死で仕事をしてた親父。そんな親父を、俺は誇らしく感じていた。

しかし、今の父親にはそんな誇らしげなモノは一つも無い。


「龍、今日学校の先生と話してきたの。」

「俺…俺…」


嫌だ…その一言が言えなかった。


「…嘘だろ?左遷なんてそんな…」

「…残念ながら現実なんだ、龍。」




俺は、暗闇に堕ちた。




家族間内でしばらく沈黙が続いていた。


「ゆ…結花(ゆいか)は?アイツは何て言ってた?」


結花は、俺の妹の名前である。


「…結は、さっきから部屋に閉じ籠ったままだわ。」


可哀想に…


「…俺達、あと何日ここにいられる?」


単身赴任でもして貰いたいのだが、あいにく俺の家の稼ぎ手は父親か俺しかいない。例え、俺がバイトしたとしてもお袋と妹と3人の生活費には足りないだろう。と、いう事は…


「…2、3日にはここを出るつもりだ。」

「…龍と結の転入先の学校にはもう話をつけてるの。」




…俺のテニスバッグが、哀しげな音を立てて床に落ちた。

























(千駄木家)




「只今ぁ。」


外が夕闇に包まれた頃、私は帰宅した。


「お帰り。今日、ちゃんと貰ってきたわよ。」

「ありがとう、ママ。」




クラスの皆にはまだ話してなかったが、私はこの夏からイギリスへ長期留学するのだ。そのためのパスポートを母から受け取った。

私は既に、学校からは卒業認定を貰っている。


「あっちに行ったら、いつ帰ってくるんだっけ?」

「今の学年の人達が、順調に大学へ進学したら、大学2年になった春頃かな。」

「そんなに帰ってこないんだ…ママ寂しいな。」

「大丈夫、あっち行ったらちゃんと手紙送るからネッ!」




そろそろ、クラスの皆に話した方が良いかもしれない…そう私は思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ