friends34:魔球撃破!
9回裏、2組チーム最終回の攻撃。
現在、フォアボールで榎故が出塁していた。
(9回裏 2組チームの最終回攻撃)
(果たして…福本の作戦を俺達が出来るのか?)
俺は、正直不安だった。この作戦が失敗したら、併殺や最悪の場合、三重殺になる。
今はラッキーな事に、先頭バッターの榎故がフォアボールで出塁していて、ノーアウト一塁の状態だ。
「1番…ショート、川端君。」
(川端…必ず塁に出ろよ。)
ベンチでは、早速福本が川端にサインを出した。川端は頷いた。
(ヒュン)
(コンッ)
「ファール!」
川端がしたのは、バント。しかし、残念ながら最初から決まらなかった。しかも、今のバントで相手チームに気付かれてしまった。
(…バントシフトかよ、マズいな。)
ファースト(一塁手)、サード(三塁手)が前進して、バント処理する気だ。これじゃ、1アウト確実だ。
「川端っ!無理すんな!」
しかし、俺の声を無視した川端はバントの構えを取っていた。
「やめろ川端っ!既に気付かれてる!普通に打て!」
(ヒュンッ!)
(コンッ!)
何と川端は、プッシュバントをしたのだ。守備の意表を突く攻撃に、俺達を含むこの場に居た全員が彼の行為に驚いた。
「セーフッ!セーフッ!」
判定はフェアで、川端は一塁にギリギリで到達した。
「ヨッシャー、ランナー出たぞ!繋げ高萩ぃ!」
「2番…ピッチャー、高萩君。」
俺は、ベンチから持ってきたバットを一回振って、バッターボックスに立った。
(まず、高速スライダーの球筋を見ないと…)
しかし、俺の思い通りに行かずこの後、相手の投手がカーブやチェンジアップなどを投げてきて、2ストライク、3ボールになった。
「くそ…繋げなきゃ…繋げるんだ!」
投手が振り被って、投げた。
(あの球筋…もしかして…ヨシッ!)
投げてきたのは、待ちに待った高速スライダーだった。
(カキーンッ!)
球はセンター前でバウンドし、センターに捕られた。これで満塁になった。
「3番…センター、藤浦君。」
「打て藤浦!ランナーを一人でも生還すんだ!」
藤浦は、無言でバッターボックスに立った。そして、第一球目…
(シュンッ!)
球は、サイドで大きな弧を描き、藤浦を空振りさせた。
「ストラーイク!」
「よく見ろ藤浦!打てるぞ!」
第二球目…
「ストラーイク!」
藤浦は、明らかにボール球を振った。
「藤浦!クソヤロウ!テメェ、勝ちたくねぇのか!?」
ベンチで、魚谷と葎塔が藤浦に激を飛ばした。しかし、藤浦は全く表情を崩さなかった。
そして…第三球目。
(ヒュン!)
球は、ストレートの球速で藤浦の手元で曲がった。…だが、藤浦のバットは高速スライダー球を捕えた!
「…チッ!」
(カキーン!)
…打球は、凄いスピードで飛んでいき、ライナー気味に一直線でレフトスタンドに入った。
「ま…満塁…ホームラン?」
俺は、思わず声が漏れた…。その時、後ろから肩を叩かれた。
「おい、早く進めよ…ホームランだぜ。」
少し笑顔気味で立っていたのは、藤浦だった。
「…あぁ!」
俺は、我に帰り藤浦と一緒に生還した。これで6対7、あと1点差に追い込んだのだ!