表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
友達の存在...  作者: りす君
33/58

friends32:敗色濃厚…

俺らは、成を失って意気消沈としていた。

相手チームはその隙に、どんどん点を採り、気が付けば俺らはコールド負け寸前の状態だった…

(2回裏 3組チームの攻撃)




(このまま炎上する事無く、9回まで持続できるのか…)


1回表で、いきなり一人の貴重な戦力を失った俺らは、次の回の攻撃時を三者凡退(さんしゃぼんたい)で終わらせてしまい、益々意気消沈となっていた。


「4番、キャッチャー…山岡君。」

(落ち着け、俺。いつものピッチングで行けば、三振は採れる。)

(ヒュン!)

(カキーンっ!!)


打球は、どんどんライト方向に上がっていった。


「っ!!ライトっ!」


…葎塔が走ったが、打球はライトスタンドにゆっくりと入った。


「…う、嘘だろ。」


福本が、唖然とライトスタンドを見ていた。




その後、俺は完璧に炎上し…気が付けば7回終了時に、0対7だった。つまり、次の回の攻撃時に俺らが点を入れなければ、自然的に俺らはコールド負けとなってしまう…。


「このまま、コールド負けかよ…」

「俺達…やっぱ雑魚(ざこ)だったんだな。」


皆が落ち込んでいる時に、一人だけ素振りしているのは藤浦だった。


「なぁ、藤浦。」


俺は、藤浦に助けを求めていた。


「………。」

「今までの回、お前だけがずっとヒットで出続けたんだよな。」

「………。」

「何故、ホームラン球を打たない?」

「っ!!」


そう…藤浦は、内角のストレートばかり打って出塁していたが、甘く入ったスローボールやカーブは全てカットし、ファールボールにしていた。藤浦の力でアレをホームランにする事など、容易(たやす)いと思うのだ。

しかし、彼はわざとカットしてストレートを待っていたのだ。


「なぁ、何故なんだ?」

「…勝ちたくないから。」

「えっ?!」

「勝つのが面倒臭いから。」


藤浦の言葉に、魚谷がキレてしまった。


「藤浦っ!」


魚谷が藤浦に突っ掛った。


「止めろ魚谷っ!!」

「許せねぇんだよ、コイツが!!」

「馬鹿な奴だな。」

「何ぃ?!テメェ、ふざけんなっ!!」


魚谷は、藤浦に殴り掛った。が、しかし藤浦の方が一枚上手だった。

魚谷の拳を素手で簡単に受け止め、そのまま握り、一瞬の隙にそのまま横に魚谷の身体を投げた。


「ぐわっ!!」

「魚谷っ!!…藤浦、いい加減にしねぇと…」

俺は、怒り心頭の葎塔を押さえた。


「葎塔、無駄だよ。今ので解っただろ?藤浦は、お前が勝てる相手じゃ無い。」

「チッ…」

「藤浦、頼む。お前なら、ホームランを打てる(はず)だ。最終の9回に繋げてくれ。」

「断る。」

「へぇ…。じゃあ、この試合に負けた原因はお前一人の所為にして良い?」

「何っ?!」

「だって、お前がホームラン球をわざと打たないから勝てない…それで負けた。キッチリ理由になってるからな。」

「おい、ふざけんなっ!!」

「別にふざけてねぇよ。ただ、正論を言っただけさ。」

「ぐっ…」

「3番、センター…藤浦君。」


藤浦は、黙ってヘルメットを被り、バットを持ってバッターボックスに向かって行った。


(ヒュン)


甘く入ったカーブ…それを藤浦は見逃さなかった。


(カキーンっ!)


打球は、グングン上昇していき、そして。


(ポトリ…)


打球は、センター横のフェンスの上を通り越し、見事にスタンドイン。


「ヨッシャー!!」

「ナイス藤浦ぁー!」

(これで、コールドは逃れた…。)


藤浦のホームランで、1対7。


「4番、ファースト…瀬戸君。」

(ヒュン)

(カキーンっ!)

「よし、抜けた!」

「回れー、瀬戸ぉ!」


瀬戸は、見事な2ベースヒットを放った。


「5番、レフト…犀潟君。」

(ヒュン)

(ブンっ!)

「ストライーク!」

「犀潟ぁ!よく見ろっ!」

(ヒュン!)

(カキーンっ!)


犀潟の打球は、レフト方向に飛んだ。


「頼む、落ちてくれ!!」


彼の願いが通じたのか、レフトが捕り損ねて打球は落ちた。


「フェアっ!」

「走れっ、瀬戸!!」


瀬戸が全力で走り、三塁を蹴ってホームに。しかし、レフトも球を捕り、三塁へ中継して本塁に投げていた。


「瀬戸っ、突っ込め!!」

(ザザー!!)


砂埃が本塁の周りに発生し、ベンチから様子が見れなかった。


「だ…ダメか…」


砂埃が消え、瀬戸の手は捕手より先に本塁に触れていた。


「セーフっ!!」

「やった、2点目だ!」

「瀬戸、よくやった!」

「別に大した事じゃねぇよ。」

「6番、サード…魚谷君。」


魚谷…彼は、過去に野球の経験が無かったものの、持ち前の運動神経と反射神経を駆使して頑張った結果、サードのポジションを手に入れた努力者である。


「魚谷、打てよ!」

(ビュン!)

「くっ!」

(バシッ!)

「ストライーク!」


「あのスピードで…いきなり曲がりやがった。」


今の相手の球を見て、俺らは唖然とした。


(ビュン!)

(ブンっ)

(バシッ!)

「ストライーク!」


ボールは、ストレートと球速が何ら変わらないが、打者の手元でいきなり曲がった。


「あ、あれは…」

「瀬戸、あの球種を解るのか?」

「あぁ。魚谷が打てないのも解ったよ。」

「何なんだ、あの変化球は?」

「スライダー。しかも、ある程度の野球経験者じゃない限り、まともにバットに当てられない…高速スライダー。相手の投手は、それを最終兵器として隠してたんだ。」

「こ…高速スライダー?」

「普通のスライダーなら、球速もあんま無くて打てるが、高速スライダーはストレートと何ら球速は変わらない。だから、慣れてない人は、ストレートと混同して打てない。」

「そんな…」

(ビュン!)

(ブンっ!)

(バシッ!)

「ストライーク、バッターアウト!」


魚谷は、肩を落としながらベンチに戻ってきた。


「すまない…」

「ドンマイ、あれは初めて見た奴は打てない変化球だからな。」

「くっ…あれは、何だったんだ。」

「高速スライダー。俺達には、あれはまだ未知の変化球だったのさ。」


次の葎塔も三振し、福本は当てたが、判定はインフィールドフライだった。


「3アウト、チェンジ!」


俺達に残された攻撃は、次の回のみ…つまり、最終9回しか残されていない。

この5点差を、果たして俺らは覆す事が出来るのか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ