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友達の存在...  作者: りす君
31/58

friends30:チームとしての誇り…

体育の時間。

高萩達のクラスは、他クラスと野球の試合をする事になった。

3組のAチームとの初戦。高萩は見事にヒットを放ったが、得点には繋がらなかった。

1回表の終了時、突然控えの藤浦が口を開いた。

藤浦の言った言葉に、成増は激怒して…

(野球の詳細が解らない方は、この話を飛ばしてお読み下さい。この話を読まなくても物語上に支障はございません。)

体育の時間。


高校の体育は、結構ハードである。例えば、サッカーにおいて、もちろん技術も必要だが、戦略も考えないといけない。このような事から、ハードと言える。

しかも、今日は体育の時間を利用した学年球技大会なのだ。


「あーあ、球技大会ならサッカーが良かったな。」


体操着に着替えていた福本が、隣にいた成に話し掛けた。


「しゃあないだろ、体育の石岡が無類の野球好きなんだから。」

「だな。」

「で、1回戦と2回戦の相手は何組なんだ?」

「えーと…一回戦は3組のAチーム。まぁ…俺らがマグレで勝てば1組のBチームに2回戦で当たる。」

「はぁ…両方とも強いチームだな。」

「まぁ…こっちには榎故がいるし、うちらのクラスには、丁度9人しか男子が在席してねぇんだから。文句は出来ねぇよ。」

「確かに。」

「だからよ、気軽にやろうぜ。」

「あぁ。」


俺は同意した。


「でもよ…」

「ん?」


福本が、困ったような顔をしていた。


「俺らのクラスに…転校生来たじゃん。」

「…あっ!」

(そうか…藤浦が居たんだよな…)


クラス内を見渡すと、藤浦はもう教室には居なかった。


「アイツのポジションは、一体何処(どこ)にするんだ。」

「取り敢えず…控えじゃん。」

「控えピッチャーか?」

「いや、代打要員。」

「成程な。しかし、アイツがピッチャー出来れば案外頼もしいかもな。」

「そんなに控えピッチャー要らねぇよ。第一、もうセカンドと兼任している高萩もいるし…なぁ高…」

「………。」

「高萩…どうした?」

「…いや、何でもない。」

「お前、顔色悪いぜ。体育休むか?」

「休むもんか。第一、下手くそな俺は休んだら成績が危ないからな。」

「そうか…」

(キーンコーン…)

「おい、高萩ぃ…成。チャイム鳴ったから早く行かねぇと。」

「そうだな、よし行くか!」


俺らは、教室を後にしてグラウンドへ向かって走り出した。




「お互いに、礼っ!」

「「お願いしまぁーすっ!!」」


まず、俺ら2組対3組のAチームとの試合が始まった。先攻は、俺ら2組。

打順、各ポジションは以下の通り。


1番、ショート(遊撃手):川端(かわばた)

2番、セカンド(二塁手):高萩(たかはぎ)

3番、センター(中堅手):成増(なります)

4番、ファースト(一塁手):瀬戸(せと)

5番、レフト(左翼手):犀潟(さいかた)

6番、サード(三塁手):魚谷(うおたに)

7番、ライト(右翼手):葎塔(りっとう)

8番、キャッチャー(捕手):福本(ふくもと)

9番、ピッチャー(投手):榎故(えのもと)


「1回の表。 先攻チームの攻撃。」

「プレイボールっ!」


審判が高だかに声を上げたと共に、試合が始まった。

藤浦は、ベンチ(選手控え場)で座って、何やらブツブツと(つぶや)いていた。


(ヒュン!…バシっ!)

「ストライクっ!」

(思った以上に球が速いな。)

(ヒュン!)

(ブンっ!)

「ストライクっ!」

(川端…打てよ。)


しかし、俺の願いは届かず…


(ヒュンっ!)

(ブンっ!)

「ストライクっ、バッターアウト!!」

「早速…1アウトかよ…」


バットを持ってベンチへ戻る川端が、俺にこう言った。


「予想以上に速すぎる。無理矢理打っても、フライ(飛球)か精々ゴロだな、ハハハ。」

(はぁ…)


俺は、溜め息をつきながらバッターボックスへ向かった。


(さて、第一球目は…)

(ヒュン!)

(バシッ!)

「ストライクっ!」


一球目は、まず珠筋を見るために見逃した。


(内角低めの直球か…結構ウザいな。)


俺は、狙い球を変化球に(しぼ)る事にした。


(ヒュン!)


第2球目は、インハイ(内側の高め)のスローボール…判定は、ボール。


(あのピッチャー…、緩急で抑える気だな。)


俺は勝負に出た。バットを横に寝かせて構えた。そう…バントの構えだ。

相手のピッチャーもこちらがバントだと解り、わざと打たせて捕る気満々だ。


(ヒュン!)

(ひっかかったな!)


相手のピッチャーが投げた瞬間に、俺はすぐにバントの構えを止め、そして…


「うりゃっ!」

(カキーン!!)


相手の内野陣は、バントシフトで前に出ていた。しかし、俺はバントではなく、ヒッティングに切り替えて強く叩いた。

その結果、レフト前ヒットで出塁した。


「ば…バスター?!」


相手のピッチャーは悔しがっていた。

俺が今やったのは、バスターという打法。これは、相手のバントシフトに対して意表をつくのに有効なのだ。


「ナイス、萩ぃ!」

「やるなぁ…アイツ。」

「3番、センター…成増君。」

(成…打ってくれ。)


俺はそう思いながら、リードの構えを取った。

成は俺に気づき、一回頷いた。


(ヒュン!)

(ダッ!)


俺は二塁へ向かって走り出した。相手は、盗塁したと思っている筈だが実は違う。


(カキーン!!)


成は、見事なバッティングを見せてくれた。

打球は、ライト前に落ちた。ライトが捕って三塁へ投げようとしたが、俺は既に三塁へ到達していた。しかし、一塁を蹴って二塁へ向かおうとした成が相手の見事な中継プレーで一、二塁間に挟まれてタッチアウトとなった。


(これで2アウトか…)

「4番、ファースト…瀬戸君。」

(ヒュン!)

(カキーンっ!!)


残念ながら彼の打球は伸びず、センターのグローブに収まった。


「3アウト、チェンジ!」


ベンチに戻ると、何故か藤浦が笑っていた。


「ハハハっ!…笑っちまうね、このチームは!」

「何だとっ!」


藤浦の言葉にキレた成は、藤浦に掴み掛かろうとした。


「止めろ、成っ! 藤浦も、ちょっとは言葉を考えろ。」


しかし、藤浦は謝る様子が無い。 それどころか、更に成をキレさせてしまう言葉を放った。


「俺に指図すんな。しっかし、こんな草野球レベルじゃあ勝てねぇよ!」

「テメェ!! いい加減にしろよ!!」

「成! やめろ!」

「うっさい!」

「まぁ、そんなに怒るのなら見せてくれよ。」

「何をだよ!」

「次の相手の攻撃時、そこにいるピッチャーは、打者にわざと打たれやすい所へ投げる。それを連続で3回、ヒット、エラー無しでやってのけたらお前らの力、認めてやっても良いぜ。」

「フン! そんなの簡単じゃねぇか。んじゃ、頼むぜ榎故。」

「おいおい、冗談じゃねぇよ。わざと打たれる所に投げるなんて、野球部で一応ピッチャーやってる俺のプライドが許す訳ねぇだろ。」


榎故は、成の発言に(あき)れながら言った。


「なぁ、藤浦。」


俺は、藤浦に話し掛けた。


「何だ、高萩…」


俺は、藤浦に少し聴きたい事があった。


「お前は、過去に野球した事あるのか?」


すると、藤浦は嘲笑うかのように言った。


「精々、お前らより野球はやって来たと思うぜ。」

「その時のポジションは?」


俺が尋ねると、藤浦はいきなり得点板の方に指を差した。


「もうそろそろ、相手の打者が準備出来た頃だろ。 行って来いよ。」

「…あぁ、約束守れよ。」

「フッ…まぁ、精々頑張りな。あ、そうそう。」

「何だ?」

「さっき俺が下したテスト、クリアしたら俺が昔やってたポジション、教えてやっても良いぜ。」

「偉そうに。 行くぜ、皆!」

「オー!!!」




俺らは、チームとしての誇りを持って守備についた。

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