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友達の存在...  作者: りす君
27/58

friends26:親友…それぞれの思い。

3月のある日。

高萩が、福本にホワイトデーについて話し掛けられた。

この会話が発端となり、やがて彼の周りにいる人達の関係が徐々に(ゆが)ませてゆく事となる。

もう少しで高1の年が終わる、3月初旬の事。


クラス内では、バレンタインデーに男達へ義理(あるいは本命)チョコをあげた女子達が所々で集まってホワイトデーの話をしている。


福本:

「高萩ぃ、お前は返す宛てはあるのかよ?」


福本が、席に座って窓の外をぼんやりと眺めていた俺へ話しかけてきた。


高萩:

「何を?」

福本:

「“何を?”…って、おいおい。 この時期と言ったら、普通に考えてホワイトデーの話だろ! お前、どうせ貰ったんだろ?」

「バカ言うな、俺が貰えるわけねぇだろ。そうだなぁ...、榎故(えのもと)なら貰ってるかもな。」

⁇?:

「俺を呼んだか、高萩。」


後ろから俺に声を掛けたのは、クラス内一のイケメン男子と賞されている、榎故(えのもと) 草太(そうた)だった。

身長は180cm代後半と高く、野球部に所属している彼の身体には無駄な肉が付いていない超人。

それに加え、誰に対しても平等に接し、決して人を見下したりしない硬派な性格。

よって、女子達から人気があるのだ。


福本:

「お前や成とかなら、バレンタインデーに女子からチョコをわんさか貰えただろうから、返すのが大変だろうなって話してたのさ。」


頬杖(ほおづえ)をつきながら、福本は言った。


榎故:

「そんな事かよ、くだらない。元々、俺には関係ないし。」

福本:

「榎故よぉ、下手な嘘をつくなよ。お前には、当たり前に関係あるだろ?」


福本は、にやけながら榎故の右肩に手を置いた。


榎故:

「だから、俺には関係無いって。てか、福本。 すまないが、右肩に手を置かないでくれないか? 一応、俺ピッチャー(投手)だし。」

高萩:

「肉っ!(福本の蔑称。彼は少し太っていた。)」


俺は、福本をキッと睨み付けた。


福本:

「あっ、すまんな。」

榎故

「怒らなくて良いから、高萩。別にそんな気にしてないから。」

福本:

「榎故、優しすぎだろ。」


気まずい雰囲気(ふんいき)にしてしまったので、俺はとっさに話題を変えた。


高萩:

「あっ、そういやこの間、携帯の動画で観たぞ。榎故の初登板の試合。」

「ありがとうな、高萩。でも後半グダグダだったろ、相手にかなり打ち込まれたし。」

「しゃあないだろ、初登板だし。 けど、ストレートは異様に伸びがあって良かったぜ。 あれってまさか、ジャイロ回転かい?」

「なぁ、高萩?」

「何だよ?」

「ジャイロって何だよ?」

「おいおい。 お前は中学の時、野球部だったのに解らないのか?」

「いや、俺はライト(右翼手)だし。」

「ったく。 あのな、ジャイロ…正確にはジャイロボールっていう直球の一種でな。まぁ、ストレート(直球)とあまり変わりは無いんだけど、球の軌道としてはストレートと比べると打者の手元で少しだけ落ちるんだ。だけど、球速が速いから打者にはホームベース付近で球が浮き上がるように見えるんだ。また、ストレートはバックスピン(縦回転)だろ?だけどジャイロは、ドリルのような回転をするから周りからの空気抵抗を受けにくく、投げてからキャッチャー(捕手)に届くまでの時間が少しだけストレートより短いんだ。」

「へぇ…。」


知らなかったというような顔をしていた福本の隣で榎故が、感心したように言った。


「よく知ってんな、高萩。」

「下手なんだけど、地元で草野球やってたんだよ。 一応、ピッチャーだった。」

「成程な。だから知ってるのか。」

「ジャイロリリース(ジャイロボールの放り方)を取得すんのは難しいから、結構練習…」

「榎故くーん、ちょっと来てぇ。」


向こうにいた女子のグループが榎故を呼んでいた。


「ワリィ、ちょっと行ってくるよ。」

「おう。」

「このモテ野郎がっ!」

「それは言わない方が良いぞ、福本。」

「うるせぇ…。」


榎故は、女子達の所へ行ってしまった。


「まぁ、アイツは女子から需要があんだな。」

「そうだな。」

「おい。」

「…ん?」


不意に、後ろから声を掛けられた。俺は、振り返った。

そこには、仁王立ちした成が立っていた。


「…何だよ、成。」

「お前さぁ、千駄木さんから貰ったのか?」

「何を?」


俺がそう言うと、成はいきなり声を荒げた。


「とぼけんなっ! お前、バレンタインデーに千駄木さんからチョコ貰ったんだろ?」

「貰うわけねぇだろ。」

「本当か?」

「あぁ。」

「なら、いい。」

「あれぇ、高萩クン達どうしたの?」


いきなり、俺達の前に千駄木が現れた。


「せ、千駄木さん…」

「成ちゃん、ホワイトデー忘れないでネ!」

「も、も、もちろんっ!」

「フフっ…高萩クンも…ネっ。」

「えっ?」


千駄木は、何故か顔を赤らめてうつ向いていた。


「っ!! テメェ、嘘ついたな!実は貰ってたんだな! 許さん…。」

「えっ? 何、どうしたの?」


当の千駄木は、ボケッとしていた。


「ちょっと、待てって! 千駄木、俺は何も貰ってないけど。」


「あれっ?…もしかして高萩クン、私のあげたモノ…ロッカーから取り出してないの?」

「えっ?千駄木…俺のロッカーの中に何か入れてたのか?」

「えっ…、ヒドイ。」

「おい、千駄木?」

(ダッ!)




千駄木は、走って行ってしまった。


「おっ、おい、千駄木! えぇ...。」

「おい、高萩ぃ。千駄木さん、少し涙目だったぞ。」

「テメェ!!」

(ビュンっ!)



(うな)る成の右拳を、ギリギリで何とかかわせた。


「止めろ、成!何故、お前は高萩を殴るんだ?最近、お前変だぜ?」

「黙れ。お前には、関係無いだろ。」

「ふざけんなっ!」

「福本!」


俺は、福本を制した。


「何だよ、高萩?お前も、何か言ってやれよ!」

「解るだろ?もう俺達は、無垢な人間じゃねぇんだから。」

「………。」

「………。」



3人の間に(しばら)く沈黙の時が流れた。



突如、窓の隙間(すきま)から春風が吹いた。すると、成が何かを振っ斬ったような顔をして俺に話しかけた。


「…高萩。」

「何だ、成。」

「俺、決めた。」

「何を?」

「千駄木さんに…」

「告白すんのか?」

「いや…、まずは友達関係から始めてみようと思う。」

「そうか。」

「…出来るかな、こんな俺に。」

「解らない。だけど…一生懸命に何かをした人は何かを得られるってよく聞くけどな。」

「高萩…」



成の瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。


「あんま気にすんなよ。お前のやりたいようにすれば良いからよ。」

「ごめんな…」

「えっ?」

「あの時…本気で殴っちまってさ…」

「いや、あれは…」

「ごめん…すまなかった…」

「成…」
























目の前で泣き崩れた成。


俺の所為で深く傷つき泣いてしまった千駄木。




人間関係…それは、難しい壁を越えなければならない時がある事。


俺は、徐々に知っていくのだ…。

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