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友達の存在...  作者: りす君
25/58

friends24:重責…

佐伯から榮波の死を伝えられ、高萩は無言で肩を震わせうつ向きながら静かに涙を溢している。

佐伯はその姿を見て、榮波を死なせてしまった自分に重責を感じてしまう…

(高萩君…、やはり彼にこの事を伝えたのは間違いだったかもしれない…)




先程、私は榮波君の死を高萩君に伝えた。すると、彼はうつ向いたまま何か唱えている。第三者から見たら彼は鬱病者に見える…まるであの時の私のように。


「蔵瀬…何でだよ…何で死んじまったんだよ…」


私は、滅多に嘘はつかない。その事を彼は前々から承知していた。だから彼はあんな風になってしまったのだ…


「高萩君。」

「………。」


彼の目の下には、一筋の透明な線が出来ていた。


「榮波君…高校に入ってからも彼はクラスメート数人にいじめられてたの。」


高萩君は、何も言わずにうなだれて肩を震わせながら聴いてくれていた。


「私…彼の側に出来るだけ居たけど、結局何も出来なかった…。」

「………。」


(高萩君…)


「突然だけど…高萩君にカミングアウトするよ。私さ…榮波君の事を、誤解していて一時期嫌いになってた時があるんだ…」

「っ?!」

「そりゃ、驚くよね…。自分で言うのもなんだけど、あんなに彼にベタベタしてた私が彼の事を嫌いになるなんて…中学時代に私達の事を見てた人なら驚くよね。」


私は一気に()いた。この事を言って、相手が何と言おうが思おうがどうでも良くなったから。


「…何でだよ…何でさ?」


高萩君は、声を震わせながらも言った。


「正直言っちゃうとね…榮波君にヒドイ事を言われちゃって…“ウザい、死ね”ってね。」

「っ?!…う、嘘だ!そんな事…」

「そう…“いつもの”榮波君なら言わないわ。だけど…あの時の榮波君は、何ていうか…精神異常状態だったの。」

「精神…異常…だと? 」


私はコクリと(うなず)いた。


「夏休みに入る前ぐらいから榮波君…私に対する態度と口調が急に変わったの。最初は、私の事を嫌いになって突き放したかったのかなって思った。けど…」

「………。」

「夏休みに入って数日経ったある日、彼から急に呼び出されて…私行ったの。そしたら、榮波君が急に謝ったから、理由を聴いてみたの。」

「…イジメを受けて、心身共に辛いから佐伯につい暴言を吐いた…そういう事か?」

(高萩君…何故、あなたはそこまで榮波君の事が解るのよ…?)


私は、何だか敗北した気分だった。そこまで彼の事が解ってる高萩君に対して、私はずっと彼の側にいたのに少しも解らなかったから…。


「…で、自殺する素振りを見せたのはいつ頃からなんだ?」


高萩君が聞いてきた。


「私を呼び出した時から、その兆候(ちょうこう)があったわ。」

「佐伯…」

「えっ?!」


いつの間に、高萩君が私の目の前にいた。そして…


(ガシッ!)


「何故、止めなられなかった!!佐伯っ、答えろ!」


高萩君は私の服を(つか)み、私に怒鳴った。周りの客が私達の方を向いていたので慌ててそれを制した。


「ちょ…高萩君、声が大き過ぎるよ…周りの人達も見てるから…理由はあとで話すから。と…とにかく恥ずかしいから、早くここを出ようよ。」

「くっ…」


…私は、あんなに怒った高萩君は今まで見た事が無かった。


(…榮波君の事がホントに解ってるのは高萩君かもしれない。)


そう思いつつも、私と高萩君は会計を済ませて足早に喫茶店を立ち去った。




私達は、駅前の喫茶店から“ある場所”へお互いに無言で歩いていた。

私は、話し掛けようとするも、何だか話し掛けづらくて…ずっと黙り続けていた。

ある場所へあと半分近く来た所で、突如高萩君が口を開いた。


「佐伯…」

「ん、何?」

「さっきは取り乱してゴメンな。」

「ううん、あれは別に気にしてないから謝らなくていいよ…。それより…聴かないの…あの事。」

「…もういいよ。」

「えっ?!」

「元々、佐伯は悪くないし…今更佐伯に問い詰めてもお互いに辛く苦しくなるだけで…意味ないと思うからさ。」

「た…高萩君…」


私は、高萩君に対して申し訳ない気持ちで一杯だった。ほんの少しで、私自身が潰れそうだったから。


「…で、これから行くんだろ、蔵瀬の墓に。」

「…うん、お水とかあげにね。」

「…そうか、ありがとな佐伯。」


彼が私に言ってくれたその言葉が、私の背負っていた重責を取り除いてくれた。その瞬間、私の感情の奥から何かが出てくるのを感じた。


「う…うわぁーん!!」


私は到頭、感情を抑えきれず、道端の側面で顔を伏せて泣き出した。


「佐伯…今まで辛かったよな…すまない…。」


高萩君がぽつりと呟いた。

私は、感情が抑えられるまで延々と泣き続けた…。


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