friends22:彼の死…私の思い。(11)
秋季短期旅行当日。
佐伯は、先日榮波が言った言葉の真意を知りたかった。それを聞くため、彼と約束した事を果たす。
最終日の前日の夜、佐伯は榮波に呼び出された…
秋季短期旅行当日。
私は、朝6時に家を出た。外はまだ薄暗く…まるで、私の心の中のモヤモヤ感が現実に映し出されている感じだった。
「おはよ、那奈!」
「………お、おはよぅ…」
集合場所で久しぶりにクラスの親友に声を掛けられたのに…何か怖く感じて気が付かない内に避けてる私。やっぱり、参加しなければよかったかもしれない…。
「…おい、佐伯。」
「うん?…っ?!」
榮波君が、いつの間にか後ろに立っていた。
「約束…頼む。」
「う…うん、解ってる。」
一言だけ言葉を交わし、榮波君は離れていった…。
「なぁにぃ、那奈ってあんな陰湿な奴と付き合ってんのぉ?」
「っ?!」
その言葉に驚いて振り向くと、側にいた親友がニタニタと笑っていた。私は声が裏返りながら必死で思いを隠しながら弁解した。
「べ、べ、べ、別に付き合ってないよぉ?///」
「那奈…そこまで必死にならなくても…」
「…うぇ?あ…ハハハ、そうだネッ!何で慌ててるんだろ…私。ハァ…」
この時に、もう彼への気持ちが抑えきれない所まできていたのを悟った。
バスに乗って富士山の周りを観光して、そして…他の人達に見つからないように榮波君と沢山ツーショット写真を撮った。
そして、最終日の前日の夜。私は、榮波君に呼ばれて班員が寝静まったのを確認してから部屋を抜け出してホテルの近くの空き地に行った。
秋から冬に季節が移り変わる頃だったから少し肌寒く感じた。
「佐伯…来てくれてありがとな。」
榮波君は先に空き地に到着していて、横たわる土管に登って座っていた。
「ううん、別にそんなの気にしなくて良いよ。」
「…そうか。」
それからしばらくの間、会話は無かった。秋風の吹く音が耳にしっかりと聞き取れるぐらい周りは静寂だった…
私はその状態が窮屈に感じ、口を開いた。
「ねぇ、あの時の言葉…」
「えっ?…あぁ、あれか。」
そう言って、榮波君は少し笑った。
私は、とにかく彼のホントの真意が聞きたかった…
「あの意味って…」
「別に…深い意味は無い、言葉通り。」
そう言われて、私はすぐに不安を感じた。
(言葉通り?まさか…)
「さ、榮波君?もしかしてさ…変な事なんて考えてない?」
「うん?別に考えてないけど…」
そう言って、彼はおどけて見せた。無理してるのがバレバレだったけど…
「だ、ダメだよっ!そんな事考えちゃ…っ?!」
私は必死で彼に思いを伝えようとした時、彼が目の前に接近してきたのを認識出来た。そして、次の瞬間…
(ギュッ…)
榮波君がいきなり私を抱きしめた。
「え、え、え、ちょっ、ちょっとぉ!///」
「…佐伯、今まで俺の友達で居てくれてありがとう…元気でな。」
「…えっ?」
榮波君は、たったそれだけ呟いて私から静かに離れた。そして、何も言わず、ホテルの方に体を向けて一度も私に振り向かず歩いていった…
「榮波君…」
私はその場にしゃがみ込み、声を抑えて泣きじゃくった…
そして、秋季短期旅行が終わった翌週…
榮波君は…自殺した。