friends20:彼の死…私の思い。(9)
榮波は、呼び出した佐伯が既にいるのに一向に口を開かず、早1時間が経とうとしていた。
そして、ついに榮波が口を開いたが、彼が言った言葉に佐伯は…
今、私の目の前には昔と変わってしまった彼…榮波君が無言でベンチに座っている。既に会ってから1時間近く経過していた…。
少しだけ蝉の声が公園内に響きわたっている。その中、無言でただ立っている私と座っている榮波君…と、その時だった、彼がついに口を開いた。
「何故、俺がここに呼び出したか…佐伯には解るはずが無いよな。」
私は、静かに頷く。彼は、顔をうなだれて小さく息を佩いた。
「俺さ…学校辞めようかなって思ってるんだ。」
「っ?!」
榮波君が放った、その衝撃の一言が私の耳に響き伝わって、通り抜けた。
「やっぱ、中学と全然変わんなかった。…高校に行ったら、何か変わるかなぁって思ってたけどさ…結局、高校でもイジメのターゲットにされてさ…。」
淡々と覇気の無い声で私に話す榮波君が、とても惨めに見えた。
「そういや…佐伯。」
「…何?」
彼が突然、話を変えた。
「俺の所為…だよな?佐伯が、学校に来なくなったのは。」
「!!」
彼は、彼自身で解っていたのだ…私が、学校に行きたくなくなった理由を。
「あの時さ…俺自身、ボロボロだったんだ。毎日…毎日、悪質で陰湿なイジメを受け続けててさ。」
「………。」
彼が私に放った“あの言葉”は、私の心の奥深くで未だに刺さっていた…。
(痛くて…苦しくて…辛いのに…そんな理由で言われたなんて、信じられない…いや、信じたく無い!)
「もちろん、今更謝ったってもう遅いって解ってる。だからさ、もう…」
(だから、二度と佐伯を傷付けないため、学校を辞める…って言うんでしょ?それは、ただ自分を傷付けないために逃げてるだけじゃん。卑怯者っ!!)
彼に対し、私は率直にこう思った。
「…卑怯者。」
「…えっ。」
「そう言って榮波君は、私を守る振りして、ただ自分が傷付かないために自己防衛してるだけじゃん。卑怯者っ!!」
「………。」
到頭、私は我慢出来ずに口に出してしまった。彼は黙ってうつ向いたままだった。
「…そうやって榮波君が目の前から居なくなったら私、一生あなたを恨み続けるからっ!」
一方的に彼へ吐き捨てて、私は泣きじゃくりながら公園から家へ向かって走り出した…。
「…くっ…ひっく…うわぁーん!!」
私の両目からとめどなく溢れ出る大粒の涙。そして…彼への何ともやるせない気持ちが、私を苦しめる。
榮波君は、決して私を嫌いになってはいなかった。ただ、ムシャクシャしていただけ…。なのに私は、彼に本気で嫌われたのかと思っていた…。
そんな誤解から生じた彼との深い溝。その溝を、どうやって埋めたら良いか解らない。だけど…絶対に埋める…埋めてみせる!
(嫌だよ…。私、榮波君と離れたくない。だって、ずっと…ずっと彼と一緒に居たいから。)