表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
友達の存在...  作者: りす君
21/58

friends20:彼の死…私の思い。(9)

榮波は、呼び出した佐伯が既にいるのに一向に口を開かず、早1時間が経とうとしていた。

そして、ついに榮波が口を開いたが、彼が言った言葉に佐伯は…

今、私の目の前には昔と変わってしまった彼…榮波君が無言でベンチに座っている。既に会ってから1時間近く経過していた…。

少しだけ(せみ)の声が公園内に響きわたっている。その中、無言でただ立っている私と座っている榮波君…と、その時だった、彼がついに口を開いた。


「何故、俺がここに呼び出したか…佐伯には解るはずが無いよな。」


私は、静かに頷く。彼は、顔をうなだれて小さく息を()いた。



「俺さ…学校辞めようかなって思ってるんだ。」

「っ?!」


榮波君が放った、その衝撃の一言が私の耳に響き伝わって、通り抜けた。


「やっぱ、中学と全然変わんなかった。…高校に行ったら、何か変わるかなぁって思ってたけどさ…結局、高校でもイジメのターゲットにされてさ…。」


淡々と覇気の無い声で私に話す榮波君が、とても惨めに見えた。


「そういや…佐伯。」

「…何?」


彼が突然、話を変えた。


「俺の所為…だよな?佐伯が、学校に来なくなったのは。」

「!!」


彼は、彼自身で解っていたのだ…私が、学校に行きたくなくなった理由を。


「あの時さ…俺自身、ボロボロだったんだ。毎日…毎日、悪質で陰湿なイジメを受け続けててさ。」

「………。」


彼が私に放った“あの言葉”は、私の心の奥深くで未だに刺さっていた…。


(痛くて…苦しくて…辛いのに…そんな理由で言われたなんて、信じられない…いや、信じたく無い!)


「もちろん、今更謝ったってもう遅いって解ってる。だからさ、もう…」


(だから、二度と佐伯を傷付けないため、学校を辞める…って言うんでしょ?それは、ただ自分を傷付けないために逃げてるだけじゃん。卑怯者っ!!)


彼に対し、私は率直にこう思った。


「…卑怯者。」

「…えっ。」

「そう言って榮波君は、私を守る振りして、ただ自分が傷付かないために自己防衛してるだけじゃん。卑怯者っ!!」

「………。」


到頭、私は我慢出来ずに口に出してしまった。彼は黙ってうつ向いたままだった。


「…そうやって榮波君が目の前から居なくなったら私、一生あなたを恨み続けるからっ!」




一方的に彼へ吐き捨てて、私は泣きじゃくりながら公園から家へ向かって走り出した…。

















「…くっ…ひっく…うわぁーん!!」




私の両目からとめどなく溢れ出る大粒の涙。そして…彼への何ともやるせない気持ちが、私を苦しめる。




榮波君は、決して私を嫌いになってはいなかった。ただ、ムシャクシャしていただけ…。なのに私は、彼に本気で嫌われたのかと思っていた…。




そんな誤解から生じた彼との深い溝。その溝を、どうやって埋めたら良いか解らない。だけど…絶対に埋める…埋めてみせる!




(嫌だよ…。私、榮波君と離れたくない。だって、ずっと…ずっと彼と一緒に居たいから。)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ