friends17:彼の死…私の思い。(6)
時は過ぎ、佐伯達は中3になり、受験生になった。
しかし、佐伯は大好きな榮波の事ばかり考えてしまい、勉強どころではなくなっていた…。
…あれから月日が経ち、私らは受験生になった。目標の高校に合格するため、日夜勤勉していた。
(はぁ…辛いなぁ。また、榮波君とデートしたいな!)
そんな事ばかり考えている私。当然、私の学力は大幅に低下していった。
榮波君とは、あのデートの翌日から良く喋るようになった。でも、榮波君は私と話しているとき、たまに悲しそうな顔をしていた…。
(榮波君…私の事をどう思ってんのかなぁ。)
いつの間にか不安になっていた私。より一層、受験勉強に身が入らなくなっていった…。
そろそろ本格的に、受験する高校を選ばなければならなくなったある日、私は榮波君に話し掛けた。アレを聞くために…
窓際でボンヤリと外の景色を眺めている榮波君。私は、勇気を出して聞いてみた。
「ねぇ、榮波君。」
彼が、私の声に気がつき振り向く。
「ん、何?佐伯さん。」
「榮波君はさ…何処の高校を受けるの?」
そう…私は榮波君と一緒の高校に行きたかった。レベルが低くても彼と一緒ならそれで良いの!…それほど彼の事が大好きで、心から愛していた。
「まだ具体的には決まってないけど…公立に行く予定。」
「そうなんだぁ…。」
彼の目指すのは公立高校。一緒に行けたらどれだけ嬉しくて毎日が楽しくなるのか…そればかり考える毎日。私は、早く彼が行く高校が知りたかった。
やがて、彼は公立の木原高校を選択した。偏差値はちょうど平均だった。私も、目標校を木原高校にした。
それから私は、落ちた成績を元に戻そうと必死に勉強した。全ては榮波君と一緒の高校に合格するため…
そして、公立一般試験当日が訪れた…。
私は、持てる力を全てこのテストに注ぎ込むつもりだ。
榮波君は、もう受験会場に行ったらしく私もそこへ向かった。
「それでは…始めて下さい!」
この声に伴い、私と榮波君を含む受験生達は、テストという名の聖戦へ向かっていった…。
合格発表当日。私は、榮波君と一緒に見に行く事となっていた。
私の胸のドキドキは最高潮だった。半分は、私と榮波君が合格してるか、という不安からのドキドキ。もう一つは…
「…佐伯さん?」
「えっ?な、何、榮波君。」
「一緒に合格してれば良いね。」
…私の側にいる彼の自然な笑顔。私をドキドキさせるもう一つの原因。
「えぇーと、3214…3214っと…あ、あった!!」
合格掲示板には彼の受験番号があった。
「おめでとう!!あぁ…私の番号、あるかなぁ。」
次は、私の番。私は自分の受験番号を探した。
「3284…3284…あっ!」
私の番号は、掲示板にくっきりと書かれてあった…。
「あったぁ!やったわ、榮波くーん!!」
私は、無意識に彼に抱きついていた。
「さ、佐伯さん…やめようよ、周りが見てるから恥ずかしい。」
「えっ?!…あ、あぁ…ゴメン!!」
私は、恥ずかしさでカーッと顔が熱く感じた。榮波君も、顔が赤くなっていた…。
「合格…おめでとう!」
「うん、ありがと!…これからも、私達はずっと一緒だよっ!」
「ああ!」
私と榮波君は、自然に抱き合った…
そして卒業式も終わり、4月になった。
「那奈ぁ、遅刻するわよ!」
「はぁい!」
今日から私は高校生。しかも、榮波君と一緒の高校だと思うと凄く幸せだった。
…1年後、この“幸せ”が簡単に脆く崩れるなんて…今の私は思う筈が無かった。思いたくなかった…。