friends14:彼の死…私の思い。(3)
ようやく佐伯の鞄が見つかり、二人は安心する。
鞄が見つかり帰ろうとした榮波に、どうしても御礼したい佐伯は、彼を呼び止めた。そして彼女自身、今まで言った事の無い、一番大胆な御礼を言う…。
「あっ…あったぁ!!」
私の鞄は、探し始めてから約2時間…ようやく見つかった。埃まみれで、みすぼらしかった。
「榮波君…ホントにありがとね。榮波君がいなかったら、見つかるまで更に時間が掛ってたかもしれないから…。」
私が御礼を言うと、彼は笑って言った。
「僕はただ、目の前に困った人がいたから助けただけで…別に御礼を言わなくて良いよ。それじゃ、また明日。」
と、言って彼は私に手を振ると教室を出ていった。私は、彼に何かしらの御礼をしなくちゃと思い、走って彼を呼び止めに行った。
「榮波君っ!」
彼の姿を下駄箱で見つけた時、私は精一杯の声で呼んだ。
(>ο<)←余談だが、その時の私は必死で、こんな顔をしてたと思う。
「何?どうしたの…そんな一生懸命な顔して…?」
榮波君が、心配そうな顔をして尋ねてくれた。
私は、途切れ途切れだったけど息を整えながら言った。
「あのね…ハァハァ…私、榮波君に…どうしても御礼…したくて…」
「いいよ、元々僕から勝手でた事だしさ。それよりも…制服…汚れちゃってるよ。」
榮波君に言われてよく見ると、私の制服は埃まみれで凄く汚れが目立っていた。
「…でも、榮波君だって。」
「…あぁ、そういや僕も無我夢中で探してたから随分と汚れるまで気がつかなかったよ。ヒトの事を指摘する前に、自分のを確認してないから…ったく、ダメな奴だな、僕。」
そう言って、榮波君は苦笑いした。私は、何か自然に笑ってた。
それから私は、榮波君といろんな話をした。テストや友達の事など。私は彼と話している中、御礼の事を考えた。ようやく決めたけど…少し言うのが恥ずかしかった。
「それでね…榮波君。明日の土曜…って用事とか入ってる?」
私が恐る恐る尋ねると、榮波君は首を横に振った。
「特に…予定は無いけど。」
それを聞いてホッとして、私は胸をなでおろした。
「じ、じゃあ…さぁ…私と…1日デートしよっ!」
榮波君に言った瞬間、物凄く恥ずかしくなった。今まで、こんな可愛い言葉なんて言った事が無いから、もう頭の中は真っ白だった…。
「で…デート…」
榮波君は、明らかに困惑していた。
「私じゃ、ダメ…かなぁ?」
私は、彼が迷惑だったら諦めようと思った。
でも、神様は私にチャンスをくれた。
「…相手がこんな僕でホントに良かったら…宜しくお願いします。」
私は、彼のこの言葉を聞いた瞬間、凄く嬉しくて心の中で舞い上がっていた…。
「ありがとう!榮波君。じゃあ…土曜日の朝10時に駅前の喫茶店で待ってるよっ。」
「…解った。」
この時の私は、榮波君のホントの気持ちを知らずにただ彼とデート出来る嬉しさで舞い上がっていた…。