friends13:彼の死…私の思い。(2)
教室には佐伯と榮波…二人しかいない放課後。榮波は、隠された彼女の鞄を一緒に探すと言った。その榮波の優しい気持ちが佐伯は嬉しくて…。
「ほ、ホント…どこにあるのかなぁ?」
私は、榮波君の事が直視出来なかった。見ると見とれてしまいそうだったから。だから、いきなり鞄探しを再開しようとした。
「佐伯さん?」
「えっ?な、何?」
振り向くと彼は、そんな不自然な態度をとった私を見つめていた。
「僕も…探しても良いかな?佐伯さんの鞄。」
「えっ?」
彼からの思いがけない言葉に、私は驚く反面…彼の気持ちが嬉しくて…嬉しくて、しょうがなかった。
「二人で探した方が、早く見つけられる。」
「い、いや…でも…」
私は、彼の気遣いに対して申し訳ない気持ちで一杯だった。
「ご、ゴメン…。やっぱ、余計なお世話だよね…。」
彼は、申し訳なく謝ってきたので私は慌てて言った。
「あっ…ううん、余計なお世話じゃないよ。でも…。」
「でも?」
私はやはり、彼に迷惑を掛けたくなかった。
「こんなくだらない事に榮波君を手伝わすなんて…出来ないよ…。」
私は、彼のその優しさが嬉しかった。だって、私の事を考えてくれたヒトは家族以外に今までいなかったから。
でも、彼に迷惑を掛けたくなかった。これで私が彼に迷惑を掛けてしまい、もう二度と彼が私と話してくれないかと思うとイヤだし…怖かったから…。
「榮波君の気持ちは嬉しい…嬉しいよ。でも、これは私が探さないといけない気がするの。だから…」
「嫌だよ。」
「えっ?!」
彼の言葉に驚き私が振り返ると、彼は真面目な眼差しをしていた。
「嫌だ。今、目の前の人が困っているのに無視するなんて…僕には出来ない!」
「さ…榮波君…」
“嬉しい”
私が彼の気持ちに対して感じた事。
「ほら、早く探そうよ!暗くなる前に。」
「…うんっ!」
彼の全ての言葉に込められたホントの優しさ…。
私は嬉しくて…いつの間にか私の目から涙がとめどなく溢れてた。榮波君がボヤけて見えていた。
「あ…あり…ありがとう…榮波君。」
私は泣きながら、必死で感謝の気持ちを伝えた。彼は、頬を赤らめていた。
「い…いいよ、感謝しなくて…。」
「でも…」
「さ、さぁ、探そうよ!さて、どこだ…鞄。」
そう言って彼は、私の鞄を探し始めた。
私の為に一生懸命に鞄を探してくれている榮波君…。
そんな彼の優しい姿を見て、私は自分では気付かない内に、彼に聞こえない程の小さな声で一言呟いていた…。
「…あなたが好きです。」