プロローグ:憂鬱の2学期終業式の日...
友達、親友と言う言葉を日々、何も考えずに軽々と使っていませんか?
友達なんて、俺には必要ない。
“親友”という言葉なぞ、実に胡散臭くてくだらない。
別にいなくても、生きていける筈なのだ。
俺の名前は高萩 荊太郎、高校1年生の男だ。身長161cmというこの低身長ながら、入学した4月から今までを私立の進学校で適当に過ごしていた。
現在、俺の胸中は憂鬱感で一杯だった。その理由として、2学期の中間・期末テストの世界史にて2回連続で赤点を採ってしまい、冬休み返上で補習を受ける事となってしまったからである。何せ元々、勉強は出来ない方だし。 不幸中の幸いとしては、過去に一度夏休み中に受けていたから、補習には慣れてると言っちゃ慣れているが…。
学校の体育館にて行われた、2学期の終業式の日。 俺は仮の友達...通称“仮ダチ”としてつるんでいる福本、成増の2人と、校長が話している間中ずっと小声で話していた。
話の内容としては、冬休みをどう過ごすかが主な話題だった。補習仲間である福本はと言うと、冬休み中毎日の如く友達の家に押し掛けるらしい…。全く、相手にとってはとんだ迷惑野郎である。一方の成増は、成績優秀のために補講も受ける事無く、所属しているテニス部の練習に集中するらしい。 好きな事が出来て、冬休み中を悠々自適に過ごせるなんて実に羨ましい限りだ。 俺はと言えば、ほぼ補習がメインだ。
終業式が終わり、教室に戻った俺達に担任から通知表が配られた。
俺の通知表はバリエーションというモンを知らない。ほとんど2か3だ。ただ現代文と物理が4だった。 まぁ…、いつも通りさ。
そして、帰りのホームルームが終わり、荷物をまとめて出ようとした時だった。
???:
「ねぇ、高萩君?」
誰かに声を掛けられた。
面倒臭くも一応振り返った俺は、見えた光景に自分の目を疑った。 何故なら、俺に声を掛けてきたのは、クラスの女子の中で一番可愛いと男子全員から認定されている、千駄木 萌だったからである。ちなみに、彼女とまともに会話した事は入学時から今まで一度も無かった。
高萩:
「何、千駄木さん?」
千駄木:
「あのさぁ…、高萩君も受けるの?」
高萩:
「えっ? 何を?」
千駄木:
「世界史の補習。」
高萩:
「あぁ、受けるけど。」
千駄木:
「良かったぁ! 私と一緒だね!」
高萩:
「あ…うん、そうだね。」
俺は、呆気にとられて生返事しか出なかった。
千駄木:
「24日、一緒に頑張ろうね! じゃあねぇー。」
高萩:
「あ…、うん。それじゃ。」
千駄木が教室から出て行くのを、後ろから見送った。
高萩の心の声:
「確かに、前イメージ通りの女子だ。あの明るさが、彼女のモテる秘密なのかもしれない。 まぁ…別に、俺には関係ねぇけど。」
俺は、帰宅する為に教室を後にした。