第9話 最強の帰還
「此岸」
その瞬間、目の前から骸が消えた。そのことを脳で意識した瞬間、マグマの柱や周りのマグマは消えた。
「なん...だと?」
(何も見えなかった...それにマグマが消えた!?有り得るのかそんなことが?)
「マグマを斬ったのか?」ナノオシはそう考えた。けれど、詳しくはマグマを”粒子サイズ”になるまで斬りこんだ。結果、マグマは人の目では見えないほど小さくなって分散した。その事実に誰かが気づくことはない。
紫雨は骸の姿を見失って焦る。けれど、冷静な判断はできていた。
「周り一帯ををマグマにすればいいだけだ!!」
半径10mの地面がマグマに変わるように剣を振った。はずなのに──────
(変わらない!?)
紫雨はまた心の中で叫ぶ。
「まさか...変わった瞬間から斬ったのか!?」
ありえないと最初こそ感じたが、奴の五感は明らかに他のものより、優れている。それ故に納得ができて─────。
納得?できるかそんな非常識なこと──
「何者なんだお前は!!!!!!!」
「落星斬!!!!!!!」
隕石が衝突する威力と同等の威力を繰り出す剣術。
(これで......!!!)
「ああ、終わりだな...」
骸はその剣術を呆気なく弾き飛ばす。弾き飛ばされたメオダは宙を舞い、ザクッと地面に刺さる。剣は高温で、地面にめり込んでいく。
一方、芽依は懐かしさを感じていた。
(何も変わってない...圧倒的な剣術。まさしく────”最強”)
だが、着地の拍子でしゃがんでいた骸はしゃがんだまま─────動かなかった。
(限...界......!!)
腕や脚がパキパキと鳴っていて動かない。
「どうやら私の方が運が良かったようだな!!」
剣は赤オレンジに輝き、燃える。それはまるで、隕石が落ちてくるように。
紫雨は剣術を使う。
「骸!!!」
「骸!」
二人が叫んで骸の方に駆けるが間に合わない。
(まずい...)
「.....来ちゃダメだ」
骸はかろうじて口を動かす。
カキンッ!!
黒いマントを羽織った男性が紫雨の剣を受け止める。
「...誰だ?」
骸の目の前には、黒いマントを羽織った男性が立っていた。
「お前、夜冠にしては弱いな。」
そう一言、呟く。
「どけ!!!!」
紫雨は叫びながら全力をだす。
「溶世!!」
それに対して男性は静かに言う。
「庵現」
その直後───
ザクッと鈍い音がなり、血が吹き出す。
倒れたのは─────紫雨だった。
(私は一切油断していない..なのに.....一体何者だ...?)
紫雨はそのままガクッと動かなくなる。
その男性は紫雨の脈がないことを確認する。
「俺は世界境界防衛軍三條流。以後お見しお気を。」
剣を鞘にしまって、骸の方を向きながら言う。
「君強いな。防衛軍入らない?」その誘いを吹き飛ばすかのように芽依は掛けてくる。
「骸!!!」
「骨化は大丈夫?」
真っ先に芽依が骸の手を取る。骸は腕を回したりして、動くか再度確認すると、さっきと違って問題なく動いた。
「大丈夫そうだ。」
その言葉を聞いて安堵したのか、芽依は嗚咽を出しながら「......バカッ!!」と骸の胸を優しく叩く。
「...ごめんな」
「...何が?」
「剣を使って......」
「ほんとよバカッ!!もう本当に、これが最後!!二度と使っちゃだめだからね?」
芽依は涙をふいてから、小指を出す。
「約束!!」
「ああ...」
骸も小指出し、約束を交わす。
骸自身ももう本当剣を使ってはいけないと感じていた。
(骨化の病..次に剣を使えば俺は.....)
「骸!無事でよかった...俺からも二人に言わせてもらう!」
「すまなかった!!!守りきれなかった俺の責任だ。」
最敬礼をして、泣きながら謝るナノオシ。
「どちらかが死んででもしていたら俺は...俺は!!!」
「落ち着いてナノさん。」
「そうだよ。ナノさんは沢山守ってくれたよ。」
その掛け声でナノオシは落ち着く。
「良かったら後で、俺も色々訳を聞かせてくれないか?」
それを聞いて後から近づいてきていた、ナノオシが聞くと、「わかった」と骸は頷く。
「で、助けてくれた方は?」
ナノオシは男性の方を向き直して聞き直す。
「やっとか──」
(気まず...自己紹介するタイミング完全に間違えたな。)
三條はさっきと同じことを言うと、ナノオシが叫ぶ。
「境界防衛軍隊長!?紫暮さんが呼んでくれたのか?」
「その反応を待ってたよ。」と少しほっとするように言う三條。
ぽかんとしている骸と芽依を見てナノオシは心の中で察する。
(田舎らしいからな.....とはいえ知っていて欲しいぐらいには有名だけど.....)
世界境界防衛軍とは、世界の境界を均等に保つための組織。主にノクスレインを相手にしている。
「紫暮さん?違う。”死亡した隊員”を探知してここに来ただけだよ。」
その時、三條の顔は少し悲しそうな顔になった気がした。
そして、隊員について一番最初に引っかかったのは芽依だった。
「...ユウさん?」
「そう。ユウの死体どこにある?」
「村です。」骸は答える。
「よし、じゃあ村に向かうか.....と、その前に」
「ちょっと待ってください。夜冠達は?」
芽依は血だらけの夜冠の方を見よう出来なかったため、森の方を見ていた。
三條がパチンッと指パッチンを鳴らすと、どこからか、人が出てきて、戦闘不能の雨徒や、夜冠を拘束した。
「拘束班だ。安全に本部まで届ける。」
「改めて、夜冠を確保できたのは君達のおかげだ、ありがとう。」
三條は頭を下げる。
「今度こそ村へ行こう。」
すると、骸をおんぶして、村に向かって歩き始める。
「お前ら名前は?」
「俺は、骸で、彼女が芽依。その隣はナノさんです。」
「俺は三條とでも呼んでくれ。」
その時、古代の剣メオダを三條は拾っていく。
「その剣どうするですか?」
骸が聞くと、三條は淡々と答える。
「封印するよ。我々の組織は世界の均衡を保つこと、古代の剣は混沌そのものだからな。全部回収して、均衡を保つのも一つの目標だよ。」
(なるほど..)
持ち主が亡くなった今、メオダは今一度元の姿に戻る。─────”宝玉”へと。
その様子を見ていた三人は同時に叫ぶ。
「「「宝玉!!」」」




