第7話 勇敢な男
芽衣はまず、下っ端の雨徒、複数人の相手をする。突っ込んでくる雨徒のお腹に柄を撃ち込み、気絶させる。
それと同時に夜冠とも相手をしている。そうなるとやはり────攻撃を捌ききれずに剣が頬をかする。
(やっぱり夜冠は別格!!......せめて、雨徒がいなければ...!)
歯を食いしばって反撃をする。
その時───はっとなる。
芽衣は投げやりな行動をしてしまっため。簡単にカウンターを入れられ、蹴り飛ばされる。そのまま地面に転がった芽衣はすぐに顔を上げたが。
─────隙だらけだ。
「隙を見せたな...」
夜冠はその隙を見逃さずに素早く間合いに入り、剣を振る。その剣は今までの剣とは思えないほど、威圧を感じていた。
受けちゃダメだと、避けないと!!そう肌で感じたが、身体は動かない。
(ごめん......骸...)
ドーーン!!!
雨徒は次元の違いを感じていた。
夜冠が振った剣による影響は目に見てわかる。
たった一振りで、地形をえぐっていた。
周りにいた雨徒まで巻き込まれていた。
(恐ろしい...これでもまだ、”あの力”を使っていないのだから...夜冠は底が知れない。)
冷や汗を垂らす。
(でも、これで敵は死んだ......)
その前方で夜冠は「ちっ!」舌打ちをしていた。
「滴位の奴...しくじったな!!」
夜冠の目の前に広がっていたのは──
「ナノ......さん?」
剣を前の地面に刺して動けない芽衣の前に立っていたのはナノオシだった。
先程の夜冠の攻撃をナノオシは剣を前の地面に刺し、それを両手で支え、芽衣に攻撃が行かないように耐えたのだ。
─────数分前、
「もう終わりですか?」
滴位の突き技がナノオシの腹をかすったことにより、血が飛び散り、痛みでナノオシは思うように動くことが出来なかった。
「くっ.........!!」
ナノオシは再び剣を滴位目掛けて打ち込むが、軽々しく受け止められる。
(貫通こそはしなかったけれど、さっきの突きがだいぶいい所に入りましたね..力と動きが数段下がっています。)
「まだまだ!!」
今度は横に斬り掛かるナノオシ。だが、滴位は足を上げて、その剣をかかとで地面に叩きつけた。その反動でナノオシも地面に膝を着く。
「さようなら...」
滴位はナノオシの首を目掛けて突き技を構えた。それに対してナノオシは下を向く。
(この男の身体は頑丈だ...首を突いて確実に殺す……)
剣がナノオシの首に目掛けて発射され、首に当たる数コンマ直前────!!
(だろうな...狙ってくると思ったぜ!首をな!!!)
ナノオシはそれを予想しており、勢いのある剣を恐れず掴み、突き技を両手で受け止める。当然受け止めたナノオシの両手は血だらけだった。
即座にナノオシは滴位の腹を目掛けて蹴り込む。
「なっ...!?」
驚く暇もなく、滴位は蹴りを食らう。ナノオシに剣を受け止められて混乱しており、ガードが間に合わなかった。
立ち上がったナノオシは、剣を素早く持って最後の力を振り絞る。地面を蹴り、吹き飛ばされた滴位に追いつき──
相手を油断させるために、傷を理由に、スピードと力をあえて落としていた。
俺は地元の大都市”オルニカ”で最強だと称された。
だが──圧倒的最強だった訳ではなくて、
勝負は耐えて、耐えて、相手が油断した瞬間を見逃さないで、隙を見せたが一瞬で勝利を勝ち取りに行く。
一戦一戦が苦しかった。でもだからこそ、
”戦闘センスと経験だけは負けない”
「落天!!!」
(どうやら、この男をなめて、油断した……私の負けのようだ。)
滴位は、攻撃を食らう瞬間目を瞑る。
せめて──最後にこの勇敢な男の名を、聞きたかった。
ドーーン!!!という轟音が鳴り響き、辺りがしばらく静寂に包まれた。
(...痛くない?)
目を開けて横を見ると──
剣は私にギリギリ当たらない場所を斬りこんでいた。
その剣をナノオシは抜き、鞘に収める。
「じゃあな、」と手を振りながら村の方に歩いていく。
「待ってくれ...なぜ、殺さない?」そう滴位はその男を引き止める。
「俺はお前を足止め出来ればそれで良かった。殺気ももう感じないし、殺す必要は無いそれだけだ。」と笑顔で答えるナノオシに滴位──いや、”明星ソノン”は問を変える。
「勇敢な男よ、名前を教えてください。」
「俺の名前はナノオシだ!」
「じゃあな俺、仲間を助けに行かないと!!」
「行くならやめた方がいいですよ。この先で”夜冠様”が戦っています。」
その言葉にナノオシは
「なら、尚更急がなきゃな!!」と言って走るのだった。
───こうして今に至る。
「......無事だったか?...手短に話すぞ?」
呼吸を整えながらナノオシは話す。
「...俺は夜冠と戦う。芽衣は周りの雨徒を倒してくれ。」
剣を地面から抜いて再度構える。
「ダメだよナノさん。私を庇ってボロボロじゃん!!私が夜冠と戦う!!」
「それに──わかったの弱点!!」
その言葉にナノオシはすぐに聞き返す。
「夜冠のか!?」
「...いや、自分の”弱点”を─────」
今のナノオシと、あの時のユウさんの血を見て、思った。これ以上血を見たくないと。
(私は人の血を見たくないために、無意識に力を抜いていた......)
逆に血を流さないように戦えば本気を出せる─────
覚悟を決めた芽衣の目を見たナノオシはふっと笑う。
「すまねぇ......じゃあ...頼むぜ!!」
そう叫んで二人は夜冠の方に剣を構えて立ち上がる?




