第6話 襲撃
その後、順調に骸達を乗せた馬車は進んでいた。
芽衣と紫暮が談笑している端で骸とナノオシは警戒していた。
(順調...それが一番恐怖)
敵が襲ってくるのはおそらく安心し始める最後の3日目。それ故に警戒は一段としていた。
(!?)
「敵襲です!!数人います!!」
五感を極めたていた上にいち早く気づいた骸が叫ぶ。それを聞いた全員の顔が変わる。
「紫暮さん、敵意を感知するのって半径5mですよね?」
「ええ、そうよ」
(馬車と敵の距離は10mってところか?)
「いまの所相手の方が速い!ユウさん!全速力でお願いします!」
「かしこまりました!!」
馬車のスピードを上げて、秒速約4m。これでもまだ敵の方が速いと感じた骸は、最悪自分が囮になろうとした。
「もう無理だな...」
そう呟いて骸が降りようとした途端、真隣にフードを被った人が現れる。
そのフードの人は宝玉を持っていた。フードには雨模様のマークが描かれていた。
それを見たナノオシは目を見張る。
(ノクスレイン!?)
「走り続けろ!!!」
ナノオシはそのフードの人と一緒に馬車から降りる。そして─────
フードの人に(こいつを倒す!!)という敵意を出した。
宝玉はゆっくりと光出す。その隙に馬車は離れていく。そして、宝玉の反撃の能力が発動する。
辺り一帯に光を、放ち、すぐ後ろまで来ていた数人とフードの人、そしてナノオシを包む。
(計算通り...この距離なら馬車は巻き込まれない)
──昨夜、骸と芽衣が寝ている後、ナノオシと紫暮は会話をしていた。
「なぁ、紫暮さん」
「なんだい?」
「宝玉の爆発ってどれぐらいの規模なんだ?」
ナノオシが聞くと、
「そうねぇ〜何度か見たことがあるけど、半径8mぐらいだったかしら?そんなに広くないわよ?発動時間も2秒ぐらいかかるしね〜村に持ち帰って、門の前に置いておいても、脅しぐらいにしかならないかもね。」 と最後の方は笑いながら言う。
「そうか...ありがとう!それと───」
「もし、俺が何も言わずに馬車から降りたらたら迷わず村に向かってください。」
ドーーーン!!!!
その轟音の直後、砂埃がしばらく周りを支配した。
幸い。爆発は馬車には届いていなく、無事だった。
「ナノさん!!」
馬車の後方に移動して叫ぶ。すると、何かが砂埃の中から飛んでくる。それを反射でキャッチし、その正体を見た骸は驚く。
「...宝玉!?」
骸がキャッチしたものは光を失った宝玉だった。
これはナノオシが投げたんだと察した骸と芽衣。
「馬車を止めてください!!ユウさん!!」
「いいえ、このまま進んで!!」
芽衣が言うと、紫暮は止める。
ユウさんは馬車を止めずに走る。
「どうして!?」目に涙を溜めながら聞く芽衣に、紫暮は一言。
「彼の意思を受け取ったからよ!」と真剣ナノ顔で答えた。けれど、よく見ると唇を噛み締めていて、悔しそうな顔をしていた。それを見た二人は何も言えなくなった。
「ゴホッゴホッ!!!」
負傷した所を抑えていたナノオシは周りを見渡す。
(さっきの爆発で”雨徒”は一掃できたな...)
先程馬車を追っていた数人は下っ端だったゆえ、爆発に耐えられなかった。
───フードの人を除けば。
ナノオシが警戒していると
「良くもやってくれましたね……」
そう近づいてくるのは銀髪の背の高い男性だった。
手には雨模様のフードを持っているのを見てナノオシは先程のフードの人だということに気づく。
そして───その男が”滴位”であることを改めて知ってしまった。
「あの宝玉…私から奪って何処へやったんです?」
その男は剣を抜いて答えろと言わんばかりに圧をかけてくる。
「.....知るか!宝玉なんかに興味があるのか?随分変わった趣味だな。」
「......死ね」
その男はにやりと笑い、一歩踏み出して勢いを付け、気づけばナノオシの目の前に迫っていた。
(すまん...条件を破らせてもらう。)
ナノオシは剣を抜く。
カキンッ!!と甲高い音を立てて二つの剣が交差する。
ナノオシの力に弾かれて、男は一度後ろに下がる。
(力は俺の方が上!!)
アドバンテージを上手く使って勝利を勝ち取る!
すかさず追撃をするナノオシ。剣を振り上げて思いっきり振り下ろす。
「遅い...」
それを軽々しく横に避けた男は隙だらけのナノオシを目掛けて突き技を使う。
「うぉぉぉ!!!」
雄叫びと共に、重い剣をナノオシは持ち上げ、その突きを下から弾き飛ばした。
─────はずだった。
血が激しく飛び散る。
一方、走り続けていた馬車では
「村まで後どれぐらいですか?」
骸の問いにユウさんは
「残り500m程です!」
ゾワ────────!!!!!!!!!!
そこでとんでもない悪寒が急に感じる。
(...なんだ!?)
即座に骸は宝玉を上空に全力で投げた。
その時に手の骨から鈍い音がする。
「骸、何を......?」
そこでやっと芽衣達も殺気を感じ取った。
ドーーーン!!!
宝玉は上空で爆発する。
それと同時に馬車が止まる。
「一体何!?」と紫暮も叫ぶ。
(...嘘!?)
馬車の前方を芽衣が見ると、信じられない光景が広がっていた。
”月の模様”の入ったフードを被った人が剣一本で馬車を止めていた。
(夜冠!!?)
骸も気づく。
そして即座に行動に移したのは、芽衣だった。
剣を抜いて、フードの人に斬り掛かり、森の方に吹き飛ばす。そこでフードの人が馬車から剣を離したのと、”嫌な光景”を確認して────
「骸!!ユウさん...亡くなってる……骸が馬車を引いて村まで紫暮さんを届けなさい!!!」
そう叫んだ。
「俺は馬との相性が悪い、芽衣がその役をやれ!」
「骸!!!!お願い......」
顔は覚悟が決まっていても、瞳に水がたまり、恐怖で剣を持つ手が震えているのを見た骸は、拳を強く握り、目を瞑る。
「わかった...」
芽衣は視線をフードの人に移し替えて
(骸を戦わせたくないのは本当……でも、今は─────今だけは...ユウさんの仇をとりたい!!)
その思いが剣術となって現れる。
「朝凪一閃……」
全力のスピードでフードの人に突っ込む。剣でフードの人は何事もなく受けるが、そのスピードと威力でフードの人を押し続ける。
そしてちょうど宝玉が落ちてくる。
骸はそれをキャッチする。
(爆発しない...芽衣のおかげでフードの人は5m以上離れたのか)
そしてすぐに──
「ユウさん...助けられなくてごめんなさい」そう謝罪してから馬車の先頭席に乗ってリードを両手に持つ。
(頼む...言うことを聞いてくれ……今だけは!!!)
そう願って馬車を発信させる。
「!!!」
(動いた...指示通り!)
馬には申し訳ないが、そのまま全速力で馬車を引いてもらう。
「かなり飛ばしてくれたな?」
芽衣の朝凪一閃の威力が落ち始めた頃、ついに止められる。
パチンッ!!
と夜冠が指を鳴らすと周りから、何十人もの人が現れる。
(仲間...?おそらく全員雨徒!)
いくら下っ端でもこれだけ人数がいるとかなりキツイと感じた。
それに──────
「夜冠様...こいつ殺しますか?」
「ああ、」
この人を先に行かせるのも阻止しないと...
夜冠は命令を出した後、村の方に向かおうとした。そんな夜冠の進行方向に芽衣は剣で通行止めする。
「ここから先は通行止めよ!」
「......後悔するぞ?」




