第5話 朝練
監視を順番にやることはしないで、睡眠はしっかりとる方向にした。なぜなら、骸が寝ていても敵襲には気づいてくれるから。
芽衣は朝早く起きて、馬車からかなり離れた所で朝練をしていた。
「98...99……100!!」
素振りを百本終えた芽衣は一度休憩する。
(スピードはあっても...威力が足りない!!もっと強くなるためにはそこが課題ね……)
そう考えながら再び剣を持つ。
「朝凪一閃...」
勢いよく岩に向かって剣で真っ二つに斬る。
パチパチ
ふぅ〜と剣を鞘にしまうと後ろから拍手が聞こえた。
「お見事ですね。」
歩いてきたのはユウさんだった。
「こんな早くから朝練ですか?」
「はい......」
「どうしてそんなに不満げなんですか?」
ユウさんの質問に芽衣は悔しそうに答える。
「岩なら大丈夫なんですけど、対人となると昔からいつもの威力が出なくて......」
(この子はまだ若い。だから私と違って本当の殺し合いなんて、経験がないのも当然ね。)
そう考えて、ユウは普段持っていなかったはずの剣を構える。
「え...?剣持ってたんですか?」
「紫暮さんを守るために、一応ですよ。それに、強くはないです。」
続けて
「芽衣さんは私の剣に向かって先程のように斬りかかってください。」
その言葉に芽衣は混乱する。
「え...!!?」
「おそらく...芽衣さんは人を斬るのが怖いんですよ。だから、慣れるための特訓です。ほら、構えてください。」
(怪我しない程度に...)
芽衣が剣を構えてそう考えた時────
「言っておきますけど、手加減なんかしたら私、ここで自害しますね?」と笑顔でとんでもないことを言う。
「できません。そんなこと...」
「できないと強くなれないわよ?弱いままでいいならいいけどね」
その言葉に芽衣は少しムッとした。
「本当に怪我しても知りませんよ!!」
「朝凪一閃」
ユウさんの目の前にまるで瞬間したような速さで移動する。
(さっきも見たけど、この子……速い!!)
ユウさんはかろうじて両手で剣を受ける形で構える。
けど───────
ユウの剣に芽衣の剣が当たった瞬間、ブワッと風が起こる。
ユウの手は震えていたけれど、確かに芽衣の剣の威力に耐え切っていた。
「手加減したわけじゃない...斬り込む直前に”無意識”に力を抜いてしまっている。」
「...どうして!?」
無意識に力を抜いている理由が自分でも分からない芽衣。
「人を斬るという覚悟が足りないからです。それとも怖いだけかしらね?」
(私が力を抜いている理由...)
「まぁ、早く慣れましょう。」
そう言って再び剣を構える。
「え?いや...まだ手が震えてますし.........」
「構いません!!今日と明日の朝で練習しましょう。」
穏やかに言うユウさんに芽衣はニコッと笑い。
「よろしくお願いします...」
しばらく練習をして──────
「そろそろ皆さんが起きる頃でしょう。戻りましょうか」
ハァハァ...と息を荒くしている芽衣に声を掛ける。
「わかり...ました.........」
「では、また明日の朝......」
(この調子で行けばこの子...化けますね。)
将来を想像しただけでも笑みがこぼれる。
でも──この先の成長が見えないのが残念です。
─────2日目は特に敵襲もなく終了した。
3日目の朝。
芽衣は再び朝の修行をしていた。
「剣には大切な心得があります。」そうして剣の心得をユウさんから聞く。
数時間の練習後───
「!?」
芽衣の攻撃にユウさんは驚く。
パリッ!!
初めて剣にヒビが入った。
「...時間的に、ここまでですね。」
「ありがとう...ございました。」
疲れて地べたに座り込む芽衣にユウさんは近づいていき......
「よく頑張りましたね...」と芽衣の頭を撫でる。
「...はい!!!」
芽衣はそれに対して嬉しそうにそう答えた。
休憩中────
「ユウさんは、骨化する病って知ってますか?」
「..?ごめんなさい。聞いたことないです。」
「そうですか.....」
芽依はすぐに剣を持って再び素振りをする。
このたった2日の短い朝の時間だけでも、ユウは確かに芽依の強さを変えた。




