第4話 条件の厳しい護衛
時計台への移動中、ナノオシに依頼の説明をした。
「つまり剣以外で護衛すればいいんだな?」
「ああ、とりあえずナノさんの力は頼れるしな」
護衛中は抜刀することを許されない。それ故に馬力が強いナノオシを中心に護衛を行うことにした。
(なんか...二人ばっか喋ってるな〜)とつまんなそうに二人の後ろを歩く芽衣。
その様子をナノオシはチラリと見る。
ユースコク塔────
巨大な時計台の下で三人が待っていると、一台の馬車が止まる。そこから降りてきたのは一人のお婆さんだった。
「間違ってしまっていたらすいません。あなたが依頼主兼、護衛対象ですか?」
芽衣がお婆さんに聞くと。
「......そうよ」と短く答える。続けて「早速護衛してちょうだい。」と無愛想に言うのだった。そして無言で親指で馬車を指す。
「乗れってことかな?(小声)」
芽衣が骸に聞くと
「言葉には気をつけていこう(小声)」
それに芽衣と後ろで聞いているナノオシは頷く。
全員が馬車に乗ると意外なことが起こった。
「ごめんなさいね〜。たとえ街でも外に出ると警戒しちゃうのよ〜」
と、さっきとは態度が打って変わって優しいお婆さんという印象に変わる。
「ユウさん、馬車動かして」とお婆さんが言うと馬を操作する人は馬車を発信させる。
「あ、あの...」
芽衣が言葉に詰まっているとお婆さんは。
「改めてさっきは驚かせてごめんね。あたしは紫暮よ。よろしくね!!」
と爽やかな挨拶をする。
「私は芽衣です!...で、こっちが骸であっちがナノさん」と骸とナノオシもぺこりと頭を下げる。
「紫暮さん、よろしくお願いします。」
「ふふ、敬語は別に良いわよ、よろしくね!」
「じゃあ、早速依頼の説明をするわね。」
「まず最初に、あんなに条件が厳しかった理由を説明しないとね。」
すると紫暮はバッグから白い宝玉を取り出す。
「これは、古代文明の道具でね、半径5mに殺意を感知すると、その人に反撃してしまうの」
その説明を受けて骸は納得する。
「剣を抜くのだけでも殺意判定になる...だから抜刀は禁止ということか。」
「そういうこと。でも、確実に半径5m以上離れていたら抜刀はしても大丈夫よ。」
「わかりました。」
紫暮はふふっと笑い話を続ける。
「話を戻すと、この宝玉を私達の村に持ち帰って村の防衛力を上げようと思って……」
そこでナノオシは疑問を口に出す。
「でも、宝玉があれば護衛が無くても無事に村に着くんじゃないか?」
確かにそうだ、反撃システムという能力を持った宝玉があれば何も護衛を雇う必要は無い。
「それは......この宝玉を狙うある組織がいるの...」
紫暮は深刻そうな顔をしてその組織名を言う。
「その組織の名は───”ノクスレイン”」
「なっ!?」
その名を聞いてナノオシは思わず声を上げる。そしてすぐに身を乗り出して聞く。
「なんでそんな大物が出てくるんだ!?」
そこで芽衣がちょっと...と言うので、ナノオシと紫暮の目線は芽衣と骸の方に向く。
「なぁ...そのノクスなんちゃらってなんだ?」
首を傾げている二人を見て、ナノオシはまた叫ぶ。
「知らないのか!!?」
「まぁ...俺達がいた町って......」という骸の言葉に芽衣が続いて
「......かなり田舎だったからね」と、頬を人差し指でポリポリしながら答える。
その様子を見てナノオシは一度椅子に座り直して落ち着いてから説明を始める。
「”ノクスレイン”この世界最大の犯罪組織だ。簡単に言えば「秩序の“隙間”を商売にする組織」」
「この組織は世界的に問題になっていた」
骸はその発言に引っかかる。
「なっていた?」
「最近音沙汰がなかったのよ。だから世界の人達の頭から少しづつ存在感が薄くなっていた。」と紫暮は補足する。
顎に手を当てて理由を考えるナノオシ。
「まぁ、とにかくそれは正式な所に依頼した方が良かったんじゃない?」
芽衣が聞くと、紫暮は悲しそうにこう言う。
「こんな老いぼれの言うことを信じてくれる所はなかったわ...」
その様子を見た芽衣は
「紫暮さん...」と目を細くして紫暮を見つめる。
「わかりました!私達が責任をもって護衛します!!!」
そこからしばらく、何事もなく馬車は進んだ。その途中、ナノオシからノクスレインについて聞いていた。
「位は四段階に分かれる。」ナノオシは指の数で四を表し、そう言う。
「”雨徒”これは一番下の位。要は下っ端だ。次に”滴位”中の位だ。この位の奴らはフードを被っていて、滴位は雨模様のフードを被っている。」
「滴位でも十分やばいが、ここから先は会っただけでも逃げろ。わかったな?」
それに二人は頷く。
「上の位”夜冠”この位は月の模様がフードに入っている。」
「そして最後───このノクスレインのトップであり、最高位。その名は......」
”黒雨王”
「出会った人は殺される。だから情報はここまでしか分からない。」
説明が終わり、ある森で馬車は止まる。
「この辺でキャンプをしましょうか。」
と、先程紫暮がユウさんと呼んでいた。そして馬車を操作してした使用人?のような人が言う。
「わかりました。」
「俺は食糧になりそうな物を探してくる。二人は紫暮さんのそばに居てくれ。」
そう言ってナノオシは森に入っていく。
「俺達は火を起こそう。」と提案する骸を芽衣はすぐに止める。
「待って骸!!」
「火は敵意に入るかもしれない。」と言って紫暮の方を見ると─────
「その火を悪用しようとしない限り大丈夫よ」と笑顔で答えてくれる。
「よし、早速!」
許可が出た骸は木の棒を持って原木に当て、素早く擦る方法で火を付けようとする。
すると────
「待って!!」
と再び芽衣は骸を止める。
「骨化の危険、忘れてない?(小声)」と芽衣は骸の耳元で聞く。
「別にこれくらい大丈夫だよ〜」
「ダメ!絶対ダメ!!」
「大丈夫だって!!」
そうやって二人は木の棒を奪い合う。
これには骸にも譲れない理由があった。
(木の棒で擦り続ければきっと手の肌が荒れる。そんなことを芽衣にやらせることなんてできない。)
「ふふっ」
その様子を見ていた紫暮は笑みを微かにこぼした。
「仲良しさんね〜」
骸と芽衣は目をぱちくりさせて紫暮を見つめ返す。
結局二人の譲らない決着はつかず、最終的に帰ってきたナノオシが火を起こすことになった。
「全く二人とも子供じゃないんだからさ」
「「ごめん...」」
よっと!っと木の棒を擦り始めると一瞬で火の種が生まれ、すぐに成長し、パチパチと音を立てて燃え広がる。
「少し牧を追加で集めてくる。」
火が起こせて喜ぶ二人を見てナノオシは牧を集めながら思う。
(さっきはああいったが、二人はまだ若い。それに、俺は”紛い物”だし、二人の方が強いかもしれない。......けれど、若い芽は摘ませたくない。俺が二人を守らないと...)と密かに感じていた。
───それこそノクスレインでも中の位”滴位”あるいは上の位”夜冠”でも出てくれば
”命を掛けてでも守らなくては”
ナノオシはそう覚悟の目をしていた。
「お〜い!ナノさん!紫暮さんが全部食べちゃうよ〜」
という芽衣の言葉を聞いて「なんだと〜!?」とナノオシは走って馬車の方に戻るのだった。




