第20話 逃げない心
「頼むハヤテ!」
洞窟が崩壊するまで残り10秒
(理由は分からないけど、骸さんには何か崩壊を止める方法があるんだ。だったら……)
ハヤテは頷き、骸の手を掴んで走り出す。
それに反応して、鉱川は反応して、鉱石を飛ばすが、走り出したハヤテは猛スピードで当たるわけが無い。
「ちっ、今更何を?」
崩壊寸前の天井を見て鉱川は疑問に思う。
「あんたは逃げなくていいのか?」
ナノオシが聞くと、はっと笑う。
「私は洞窟が崩壊しようと自分を守れますから。」
そう言って、ナノオシに鉱石を飛ばしながら、自分の周りに世界一硬い鉱石、ダイヤモンドを生成し始める。
ナノオシは必死に鉱石を弾いて、芽衣を守っている。
先程、数十分かけて歩いてきた道を通って洞窟の中心に向かっていた。
スピードはとてつもなく早い────だが、洞窟は狭く、くねくねとした道が続くので、ハヤテは全速力は出せなかった。
崩壊まであと、3秒.....
骸は心の中でそう呟く。
あと、2秒.....
「骸さん、もうすぐ着きます!」
この洞窟はまるで”生きた洞窟”のよう。そういう噂だった。
だけど、洞窟の中心に来た時、感じた視線と、違和感。
あと、1秒.....
この洞窟は本当に生きてるんだろう。
骸はそう考える。
それなら─────
骸とハヤテは洞窟の中心に戻ってくる。
この考えがあっているなら──
そして骸は心の中で静かにこう呟く。
止まれ...
偶然にもこの中心は、最高の間合いだった。
「...?洞窟の揺れが止まった?」
目を閉じていたハヤテは微かに目を開けて、言った。
ダイヤモンドに囲まれた鉱川は不快な顔をする。
崩壊の音が聞こえない。むしろ、さっきよりも静かだったから。
(まさか本当に崩壊を止めたということですか.....?)
ダイヤモンドの囲いをそのまま大剣にする。
そして、倒れている芽衣を"殺すために"そのダイヤモンドの大剣を投げる。
投げた直後ふふっと笑う。
(彼が帰ってくる前に皆殺しといきましょう。)
(上手くいったんだな、骸!!)
その直後、ナノオシは「なっ...」と声をあげる。
飛んでくる鉱石が飛んでくる中、紛れているつもりだろうか?明らかにやばいのが飛んでくる。それは芽衣に向かっていた。
大剣だ。まだ血に染まっていなく、とても輝いているダイヤモンドできた大剣。
それをナノオシは剣で受け止めるために、飛んできた大剣に合わせて、上から自分の剣を振り下ろすことで、地面に叩き落とそうとした。
見事、大剣と剣はぶつかり合うが────
ナノオシは(このままじゃ剣が折れる!)そう考えた。
けど、避けたら芽衣に当たってしまう。
そして、目の前には古代の剣を持って向かってくる鉱川と無数の鉱石。
ナノオシが鉱石が目の前まで飛んできて、受け切る覚悟をする。
「キュ!!」
隠れていたコツメが、口で剣を振り、鉱石を切り落とす。
「コツメ!なんで出てきた!!!」
(なんですか?あのカワウソは?)
鉱川の目線が、ナノオシとコツメに集中する。
ダイヤモンドの大剣を受けているナノオシの手が震える。目の前に迫る鉱川。
鉱川は間合いに入って、ナノオシを古代の大剣で斬ろうと大剣を大きく振る。
その大剣が来るとわかっていても、避けられないナノオシは目を瞑る。
コツメもナノオシと芽衣にぶつかりそうな鉱石を斬るので精一杯。
鉱川はニヤリと笑う。
(これで、一人と一匹.....)
洞窟の崩壊を止めたからなんだというのですか?目の前の奴とカワウソはこれで終わり、もう一人は動けないし、すぐに殺せる。
そして、絶望して心が壊れた彼を殺せば勝ち。
結局は私の勝ちなんですよ──────
"私"はこの瞬間をずっと待っていた。
「朝凪一閃.....」
私はもう動けないと相手が考えた時、それは大きな隙となる。
芽衣は、鉱川の持つ古代の大剣を目掛けて、剣術を放つ。
「ガッ...!?」
短い声とともに、鉱川は洞窟の壁に吹き飛ばされる。
そして鉱川は、完全に油断したため、受け身を取れずに頭をぶつけ、朦朧としていた。
(彼女はまだ、動けたのですか?それに───なんですか?この威力は!?)
ナノオシが止めていたダイヤモンドの大剣と、飛んできていた鉱石は消え、ナノオシは安堵する。そして芽衣の方をむくと、
「はぁ、はぁ、」
芽衣は剣を地面に刺して、その剣に寄りかかっていた。
(出し惜しみはしなかった。だから、威力重視の朝凪一閃だったはず...)
相手が強敵なほど、芽衣は相手は死なないだろうと、無意識にかけるリミッターがなくなる。
それゆえに、前に戦った紫雨の時よりも、朝凪一閃の威力は上がっていた。
(お願い...もう立ち上がらないで.....)
ナノオシが芽衣の方に歩き始めた時、ボコっ!!と岩の弾ける音がした。
そちらを見ると、鉱川が、洞窟の出口に向かって、猛スピードで進んでいた。
「逃げたか.....」
ナノオシが呟くと
「でも、いいじゃない。誰も.....死ななかった...んだか.....ら.....」
そのまま芽衣は意識を失って倒れる。
「芽衣!!」
ナノオシがよく見ると、腹からは血がかなり流れていた。
「出血多量か?」
「ナノさん!!!」
そこで、骸とハヤテが急いで戻ってくる。
「ごめん、崩壊を止めるのを、維持するのために時間がかかちゃって.....夜冠は?」
あのまますぐに離れても、洞窟の崩壊が再び始まってしまう。それ故に、骸は洞窟を穏やかに...要はあやしていた。
「芽衣の一撃で、撤退して行ったんだが、芽衣の出血がかなりまずい。」
その言葉で、ハヤテがすぐに、治療に取り掛かる。
(こんなにもなって、どうして、あの時治療を拒んだんだろう?)
不思議に思いながら、出血を止めるべく作業をする。
そして、芽衣の表情が少し和らぐ。
その時、洞窟内にまた知らない声が響き渡る。
「全くどうなってるんだい?洞窟がおかしいと聞いて来てみれば、普通じゃないか!」
その声の主は、少し年老いた女性で、防衛軍の服を着ていた。そして、骸たちを見た途端...
「って、一体どうしたんだい!?」
「あれ?聞いてないんですか?」
ハヤテが疑問に思う。
「というか、あなたは治安維持部隊の方ですよね?僕が通信機で伝えたのは、医療部隊と、攻撃特化型部隊なんですけど.....」
「いつの間に?」
骸が驚くと
「骸さんが、洞窟の崩壊を止めている間に、通信しといたんです。」
「なんだ、そういう事か、あたしは近くの冒険者から、洞窟の様子がおかしいと、報告があって急遽偵察に来たんだ。」
「君たちが呼んだ部隊は時期に来るんじゃないかい?」
「...っと、噂をすれば.....」
数人の援軍が来て、骸たちは安心する。




