第2話 剣を置く
門をくぐってしばらく歩いたところに待っていたのは先程の男達だった。男達は既に剣を構えていて戦闘態勢に入っていた。
「やっぱりお前が気に入らなくてな」
「ここで死んでもらう!」
「しつこい...」
芽衣は剣を抜こうとするが、その手を骸が止める。芽衣は驚いた顔で骸を見つめる。
「こんな奴ら”戦わなくても勝てる”」
「強がらないで、私がやる」
(骸はすぐ無茶しようとするから...)と思い、芽衣はすぐに言いながら骸の方を見た。
そこで、芽衣が見たのは真剣な眼差しでこちらを見ている骸だった。
「頼む...」
「わかったわよ...」
芽衣は剣に近づけていた手をすっ...と遠ざける。けれど意識はすぐに剣を抜けるようにしていた。(剣を使わないで骸はどうやって勝つの?)と言う疑問の答えが自分の中で出なかったからだ。簡潔にいえば”勝てない”と思っていた。
「話は終わったか!?」
「ああ、来いよ」
骸は剣を構えず、ただ左手を前に出す。
男達は二人はそんな丸腰の骸に同時に向かって走る。
だが──────
一歩、という言葉は軽い。
今の骸の前に立つと、その一歩が、異様に重くなる。
その異変を二人は感じていた。
(なんだ?この、足が地面に吸われる感じは.....)
足が動きずらい。息が乱れる。
(攻撃されてるのか?)
足は負傷してないし、痛みも無い。
(圧なのか?)
ありえない、こいつは病に冒されて剣の使えない雑魚だろ?剣すら抜けない奴に圧なんか──────
あらゆる可能性を考える男達。気づけばさらに二人の息が荒くなっていた。
なら────
なら─────こいつは一体何をしているんだ?
理解が追いつかない男はやがて足が止まる。
骸は骨化が進まないように、ゆっくりと歩いて動きが鈍くなっている二人に近づいて行く。
何もしていないといえば嘘になる。
息が乱れる理由としては、向こうが息を吸った時に、こちらが息を吐いて相手のリズムを狂わせている。すると相手の無意識に息が浅くなる。
もちろんその効果であんなに息切れしたり、足が動かなくなる訳では無い。
俺は病を知ってからの5年間、五感を極めたことの他に、戦闘に置いて大切な、間合い・呼吸・重心・地形についての四つを重点的に知り、鍛えた。
そして骸はそれらを利用して”戦わずして勝つ方法”を編み出した。
言えば、”間合いの技術の究極系”
だから──────
骸は二人の前に立ち、
「俺の勝ちでいいな?」と聞く。
動けない二人はゆっくり頷いた。
「すごい...」と一部始終を見ていた芽衣は呟く。
(本当に剣を使わずに勝ってしまった)という驚きと、骸の勝てた要因の不思議さに唖然とする。
────俺はもう剣を抜かない。
足がすくんで、座り込む男達。
「なんでだ?なんで剣士でもないお前に俺達は勝てないんだ?」
───剣士でもない?それは違う
「剣士は、剣を使えばいいってことじゃない。」
「剣士は、最後まで立っていればいい。」
「そういうもんだと俺は考える。だから、剣を使えなくても俺は剣士を名乗る。」
そういいながら骸は芽衣の方へと歩いて戻る。
戦闘?を終えて、骸と芽衣の二人は草原を歩いていた。
「ありがとな芽衣!お前のお陰で俺は今、旅に出ることができた!!」
笑顔で骸はお礼を言う。
「...大丈夫なの?」
「何がだ?」
「病の進行は...」
骸は手を首の後ろに回して
「ほぼ動いてないし全然大丈夫だよ」と軽い感じで答える。
「それでも!!」
「次からは私が闘う。骸は無理しないでね...」
芽衣は心配だった。だって骸は昔から無茶をするから───
「善処する..」と顔を見せずに短く答える骸。
「...話は変わるけど、この旅の目標はあるの?」
そう違う話題を作る芽衣
「うーん、自由に生きる?」
「......適当ね」
そこでうーんと芽衣は考え始めて、しばらくしてから少し走り、骸の方を向いて人差し指を立ててこう言う。
「とりあえずの目標は、有名になるってのはどう?具体的には”依頼を受けて人の役に立つの”」
「それはまたなんでだ?」
骸が聞くと、芽衣は子供っぽく
「私...有名になりたいから!!!」
「お、おう...」
(なんでそんなに有名になりたいんだろう?)
芽衣の圧に思わず骸は気圧される。
「まぁ、そうと決まれば、まずはあそこに向かうか。」
「依頼の街”レクシア”へ!」
レクシア:通称”依頼の街”
骸達の町”ユバナ”からそう遠くない位置にある各地の依頼が集まる街である。
「今から向かえば、とりあえず明日の夜には着くな」
骸が計算した結果を言うと───
「いや...」
芽衣は足を止めて
「馬に乗っていきましょ?」
親指で小さな馬小屋を指さす。
その言葉を聞いた骸の顔が濁る。
イヤッフ!!
「私、馬に乗ってみたかったのよね!」
初めての割には完全に馬を乗りこなして、爽快に走る芽衣。
その一方で─────
「うわぁぁぁ!!!!!!」
骸は馬の制御が全くもってできておらず、落馬仕掛けていた。
「情けないわね〜」
「俺は昔から馬との相性は悪いだよ」
結局骸は芽衣の後ろに乗ることになった。
「なんでこんなことに...」
「しょうがないでしょ?落馬したら骨化が進むんだし...」
「......面目ない」
しょげている骸に芽衣は「ほら元気だして!このスピードなら夜には街に着くわよ!」と声をかける。
そうしてしばらく草原を駆け抜け、空が暗くなり始めた頃、街に着いた。
今日はもう夜遅いからひとまず宿に泊まることにした。
コンコンコン
ドアをノックする音が聞こえて、骸は目を覚ます。
「骸〜依頼受けに行くよ〜」
聞こえてきたのは芽衣の声だった。
骸はふぁ〜と、大きなあくびをしながらドアを開けると芽衣は口を膨らませる。
「早く準備して!!」と朝から怒鳴られてしまうのであった。




