第19話 信じる力
「全滅か...仲間を捨てて逃げるか、あなたはどちらを取りますか?」
崩壊を始める洞窟により、光源が減った関係で、鉱川の顔は明かりに照らされたり、真っ暗闇に包まれたりしていた。
(崩壊を止める方法は一か八かだけどある。けれど...鉱川の言う通りそれは────)
そこで骸は何かを口パクで言う。
芽衣とナノさんをこの場に置いていくことになる。仮に置いていけば、確実に鉱川に殺されてしまう。
「そんなの迷う理由もない。」
骸はそうして、鉱川の質問に答える。
「...お前を倒してから崩壊を止める。」
「現実的では無いですね」
鉱川は嘲笑うかのように、剣を構える。
(崩壊を気にしなくなった今、私は力を存分に使えます。)
鉱川の古代の剣、オレトは古代の力を解放する。
どこからともなく鉱石が生成されて、それはまさに、太古代に初めて金などの鉱石が生成されたということを表しているようだった。
鉱石は超スピードで骸に向かってくる。
鉱川は芽衣とナノオシ、それとハヤテをちらっと見る。
(二人は致命傷を避けて意識はあるけど、もう動けないですね...もう一人は、絶望している。)
この瞬間、芽衣やナノオシを狙うことができたかもしれないが、いつでも殺せると思っていた鉱川は骸だけを標的に絞っていた。
標的を絞っているのだが、
(1発も彼に当たらない...)
向かってくる鉱石はとても尖っていて、直接当たれば重症だろう。
それを骸は避けながら、さらに鉱川の相手をしなくてはいけない。
向かってくる鉱石を掻い潜りながら、鉱川の剣をスレスレで避ける。
(攻撃が当たらない...なんで、こんな青年一人殺せないのですか?)
鉱川は苛立っていた。いや、彼に夢中になっていたのかもしれない。
(早くみたいんです...彼が動かなくなって、血を吐き出す姿を...!)
(鉱石が邪魔であの間合いに向かえない...)
骸は歯を食いしばって、ある地点を見つめる。再び動きを止めて、何とか決定打を与えなければ、このまま全滅だ。
だが、相手は夜冠─────
いくら骸でもそんな猛攻に耐えられることもなく、ついに隙を見せてしまう。
「やっと隙を見せましたね!」
不敵な笑みを浮かべて、鉱川は剣を振るう。
それは斬撃として、打ち込まれた。
そして鉱川は間髪入れずに何百発も連続で撃ってくる。
先程の攻防、そしていまさっきの攻撃で、洞窟は震えている。もう1分でも経てば完全に洞窟は崩壊するだろう。
舞った砂埃が消えてゆく。
「さぁ、君の死にゆく姿を見せてください!!」
そして────────────
「あと50秒ってところか?」
崩壊する洞窟の振動が響く中でも、その言葉が鮮明に聞こえた。
「え?」
(完全に隙を着いた...なのに......なんで彼は生きているの!?)
「...化け物ですね。」
鉱川は苦笑いをしてそう呟く。
あれだけ間髪入れずに攻撃したのに、目の前の彼は普通に”無傷”で立っている。
相手は殺したと思っただろう。でも、まだ俺の間合いと五感をフルに使った回避能力の方が上だ。
そして...俺は、あえて隙を見せた。なぜなら、そうすれば相手は派手な技を打って確実に俺を殺そうとすると思ったから。
それをした理由は...
「ありがとうな、ハヤテ」
「すいません。時間的にナノオシさんだけが限界でした。」
「いや、流石の速さだ。治療も速いとは予想外だったがな...」
見る限り、ナノさんは包帯を巻かれて、動けるようになっていた。
”土埃”で鉱川から見えない間、ハヤテがナノオシを一瞬で治療していたのだ。
「馬鹿な...さっきまで絶望してたのに、それに、いつ、どうやって伝えたんですか?」
「さぁ〜?」
それは敵に情報を伝えたえないためにそれには答えない。
骸は心の中で整理する。
答えは”小型通信機で伝えた”だ。
ここに来る前、創隊長から貰っていた小型通信機で、ハヤテに伝えたのだ。
骸は、戦いの最中に口パクをしたことを思い出す。あれで、ハヤテに指示をしたのだ。
ハヤテは医療部隊で治療を学んでいたと言っていたことを思い出し、二人を回復できるように”信じて”頼んだ。
「...隙を作るから、二人を回復してくれ。信じてるからな...」
「...骸さん?」
ハヤテはすぐに応答するが、骸はもう何も言わない。
(無理だ...こんな状況......勝てるわけない。)
ハヤテは目を瞑る。
そして、逃げてばかりの...何も出来なかった自分を思い出す。
このまま逃げても死ぬだけだから────でも、
(僕を信じてくれた骸さんの気持ちからも逃げるのか?)
ハヤテは拳を握る。
戦いからは逃げてもいい。それは戦略的撤退だから─────。だからかっこ悪いと思ったことは無い。
けれど、仲間からの”気持ち”から逃げるのは
(かっこ悪い!!)
視界が悪くなった瞬間、ナノオシが倒れている場所へ走る。
そして、ハヤテはとんでもない速さで回復する薬を飲ませ、ナノオシの負傷した部位に痛み止めを塗り、包帯で巻く。
ハヤテは集中して気づいていていないが、普通の医療部隊の隊員だと、十分程かかる作業をものの数秒で行っていた。
ハヤテは一度医療部隊から逃げたが、実は、速さと医療を合わせたシナジーにより、医療における才能が、天才並だった。
そしてすぐに、芽衣さんの元に向かう
「芽衣さん、今治療します。」
「私は.........いい。」
覚悟をした目でそう言った。
(え?)
ハヤテには理解できなかった。
そんなに出血しているのに、そんなにボロボロなのに...
”絶対に逃げない”という目を彼女はしていた。
そして土煙川消えて今に至る。
そう、俺はただ時間稼ぎをしたかっただけ。
そして、骸はハヤテの方へ向かう。
「ナノさん!ここは任せた!」
ナノオシも痛みで動けなかっただけで、今までの会話も通信の会話も聞いていたが、骸の作戦自体は詳しく言っていないので、混乱するだろう。
けれど、信頼していれば──────
「...?わかった!ここは任せろ!!」
ナノオシはすぐに落ちてる自分の剣を拾って、芽衣を守ろうと、芽衣の前に立つ。
「ハヤテ!俺を...お得意の速さで洞窟の中心へ連れて行ってくれ!」
骸はそう叫んだ。




