第17話 ハイエナ狩り
かなり洞窟を進んできたと思う。けれど、この洞窟は広くて、大きくて、進んでいるという実感はあまり湧かなかった。
そこで、突如前方から人の気配がして、骸が足が止める。
(急に気配が...?)
「そこで止まりな!!」
そこで岩陰から出てきたのは、男性と女性だった。二人は剣を突きつけてきている。
(途中まで気づかないぐらいに気配がなかった。)
と骸はかなり警戒する。
「俺たちは、ここまで来て、疲れた冒険者の荷物を奪って回っている。」
その男性の言葉に女性が続いて こう言う。
「怪我したくなかったらそこに荷物置いていきな!!」
(面倒なことに巻き込まれたな...それに、あまり騒がれると、洞窟に影響が────)
男性と女性はかなり声を上げていたので、ナノオシはそちらの方が不安だった。
「わわわわ...」
隣からそんな慌てた声が聞こえた。
(まさか...混乱したのか?)
「コツメ!ハヤテの口を塞いで!」
ハヤテが混乱したとなると、大声を出す可能性が高いので、遠くにいた芽衣が言う。
ハヤテが声を出す一歩手前で、一番近くにいたコツメは尻尾でハヤテの口を塞ぐ。だが──────
そのままハヤテはものすごいスピードで走り出した。
けれど、足音がなく本当に”静か”だった。
「キュ!?」
コツメはハヤテにそのまま連れてかれる。
「ちょ、お前...」
手を前に出しながら、男性が言うが既に姿が見えない。
「逃げるの早すぎだろ...」
それを見て、唖然としている二人はよそ見をしていた。
それに気づいた、芽衣とナノオシは剣を構えた。だが、骸は右手を前に出して止める。
左手は動かないので、右手をそのまま自分の口元に持っていき、し〜、と静かに言う。
「ちょ、骸!」
「適材適所ってやつだ。」
剣を抜いて、派手な戦闘になれば、洞窟に衝撃を与えかねない。
それなら、音を出さずに相手を制圧できる骸が適材だった。
芽衣の抑制を聞かずに、骸はそのままゆっくり歩いていく。
「お、お前も動くなよ!!」
男性は叫ぶが
(ここかな〜?)
今回は前と比べて”かなりゆっくり”探せる。
”最高の間合い”を───────
剣を前に出そうとするが、男性と女性は動けない。
(なんで────足が動かない...)
そして、芽衣とナノオシが瞬時に剣を突きつける。
(私達...死んだ...?
)
男性と女性は覚悟をして、目を瞑る。
(!?)
「ハイエナ狩りみたいなことはやめてもう帰るんだ。」
その骸の言葉で、二人は目を開ける。
「こ、殺さないのか!?」
「ああ」
骸は静かに...冷徹に答える。だが、二人の敵意が完全に消えたことを感じ、表情を緩める。
「ただし、これからは、真面目に生きてください」
芽衣とナノオシも剣を鞘に収める。
「「ありがとうございます。」」
二人はお礼を言って、洞窟の出口へと向かった。
「次会った時には、いい人になってるかな?」
近づいてきた芽衣が骸に聞く。
「分からないな...人の性格とかは、他人がどうこう言っても、なかなか変えられないから─────」
でも───改心してたらいいな〜
「とにかく、ハヤテとコツメを追うぞ!!」
ナノオシは洞窟の奥へと進む。
(ものすごいスピードで走ってったから確かに心配だ。)
ナノオシに続いて骸と芽衣も洞窟の奥へと進む。
「本当なら死んでた...」
「ええ、あの人たちが優しかったから、私たちは生きている。せっかく生かされたのだから、今からは、真面目に生きましょう。」
男性は微笑んで「ああ、」と返す。
この洞窟を出たら、人生をやり直すんだ────
ゾワ────!!!
その途端、二人は鳥肌がたつ。男性はその”殺気”に耐えられなくなって、足が震える。次の瞬間、男性は膝を着き、吐血する。
コツコツ...と誰かの足音が洞窟を反響する。
涙を流しながら、吐血している、男性を見る。
男性は、既に一本の大剣が身体に刺さっていた。
よく見れば、腕がぐったりとしている。もう息はないのだろう...
大剣を投げた人物は、男性から大剣を抜き、女性の方をむく。
女性は睨み返そうと、その人物の方を見るが、
(”フード”で顔が見えない...)
次の瞬間、女性の身体にも大剣が刺さる。
即死することはなかった。
それゆえに、痛みで叫ぼうとした。助けを求めようとした。
けれどそれをすれば、この洞窟は崩壊する。
彼らに恩を仇で返すようなことはしたくない。
私は歯を食いしばって、痛みに耐える。
ああ──どうして今まで、真面目に生きようとしなかったんだろう────。
そうして、私は意識を途絶えるのだった。




