第15話 最後の素材
ナノオシはゆっくりと木に近づいて、一瞬苦い顔をして止まったが、数秒後には何事もなく、歩く。
(ナノさん...精神攻撃が効いてない?)
いや、乗り越えたのか?
ナノオシはやがて木に到達した。
(こういうのって、果実を取るのにも何か条件があるんだよな...)
ナノオシは木のそばで止まって考える。
一度普通に取ってみるか。
そう考えたナノオシは古代の果実に手を伸ばす。
だが、以外にも何事もなく、古代の果実を採取できてしまった。
(帰る時に何か起こるのか?)
警戒を解かずに来た道を戻る。
結果は本当に何も無かった。
「ナノさんお疲れ様!!」
「ああ、それにしても不気味だな...果実自体には何もトラップがないなんて───」
不思議に思っても、何事もなく果実を取れたのが事実だ。
「ありがとう、ナノさん...」
「骸、お前体調は大丈夫か?」
顔色がまだ優れない骸に対して芽衣とナノオシは心配する。
(骸への精神攻撃って、もしかして...あること?)
それならここまでのダメージを受けるのにも納得がいく。
だとしたら─────あの時みたいに寄り添うべき?それとも今はそっとしておいた方がいい?
再び帰路を辿る私たちは、周りが暗くなってきたので、同じような場所でキャンプをしていた。
「ごめんナノさん...少しコツメと魚取りに行ってて。」
ナノオシは言われた通り、コツメを連れて川に向かった。
さっきの答えは、私に正解は分からない。
けれど、身体は反射で動いていた。
「!?」
骸は心で叫ぶ
芽衣が骸のおでこにデコピンをしたからだ。
何すんだよと、骸が言おうとするが、芽衣が顔を近づけてきて、言葉が引っ込む。
「辛かったら、遠慮なく”仲間”を頼って。」
「君は、生まれてきてから今の今まで、独りじゃないんだから。」
昔と変わらない。芽衣の前だと、本音を言ってしまう。
「俺は何も守れない。剣を使っても守れなかった。それにもう、剣を使えない。」
自分で言っていて思う。本当に俺は”無能”だということに。
俺は5年前と何も変わっていないことに─────
「剣を使わなくても人は助けられる!!そう私が言ったから、今の戦い方ができるまで頑張ってきたんでしょう?その力で、私を助けてくれた。」
「ありがとうね!!」
────骸は静かに涙を流す。
「ああ、ありがとう...芽衣」
芽衣は咄嗟に顔を後ろに向けた。
「全く、旅に出てそんなにまだ経たないのに挫けられると困るのよ!」
芽衣は頬を赤らめて言う。
「ごめんなさいー(棒読み)」
「謝る気ある?」
骸の棒読みに芽衣は突っかかる。
「めんご」
「雑になった!やっぱ謝る気ないね!?」
あはは───と、笑い合う二人。
真っ暗な骸の目に光が灯る。その光が、涙で反射し、真っ暗な夜を眩しい朝日にした。
「エインソードさんのところに戻ろう。」
骸の顔色が戻ったことを確認したナノオシと芽衣は安堵して、山に向かった。
昼頃、再び山を登っていた。
標高が上がると、コツメは寒さに怯えて、骸の服の中に入る。
「カワウソは寒いのが苦手だからな。」
そして、エインソードの家が見えてくる。
「キュ!!!」
コツメが鳴くと、やまびこが帰ってくる。
それにコツメは骸の服から飛び出て大喜びでその場を回り出す。
「エインソードさん〜最後の素材を聞きに来ました。」
芽衣の掛け声で、エインソードは家から出てくる。
「おぉ、カワウソをペットとしたのか...」
エインソードは驚くが、骸はそれに対してこう答える。
「いいえ、仲間です。」
「ほっほ、そうか。古代の果実も本物じゃな...」
そしてさっきとは打って変わって、真面目な顔でエインソードは言う。
「さて────最後の素材は”人の臓物”じゃ。」
「お主たちには”人の臓物”を取ってきて欲しいのじゃ。」
「断ります」
エインソードの言葉に芽衣は即刻拒否する。
その答えにエインソードは目をぱちくりさせて芽衣を見つめる。
「合格じゃ....わしは...本当は、人を殺すために使わない───正しい剣の使い方ができる者に剣を打ちたかった。」
悲しそうな目をしたエインソードは続けて
「お嬢さんになら、自信を持って古代の剣を打てる!」
(ちょっ?)
そしてエインソードはその場に土下座をして
「頼む!!奴らを倒して.....古代の剣を救ってくれ!!!」
奴らとは言うのはノクスレイン。
その答えは─────────
「わかりました。その依頼を受けます。」
その芽衣の一言だった。
「ありがとう...ありがとう...」
ただ、ありがとうと何度も言いながら泣くノクスレイン。
「作り終えるのには、時間がかかる。作り終えたら、この鷲で剣を届ける。」
「最高の剣をお嬢さんに届けるよ」
そうして、私達は防衛軍へと帰還した。




