第14話 古代の果実
古代の果実のなる木があるという丘に向かう最中───日が暮れ始めたため、夜を越す準備をし始めた。
やがて、辺りは真っ暗となり、パチパチと鳴る焚き火だけが目印になる。
「キュ!!」
焚き火の牧を両手で掴んで持ってくるコツメ
「もう〜いい子ね〜」
カワウソの頭を撫でてから、芽衣は牧を受け取る。
「もう暗いが、コツメの魚を釣りに行こう。」
ナノオシが釣竿とランタンを持って川に向かった。そのナノオシの足回りをコツメは素早く回りながら、嬉しそうに付いて行く。
ランタンの明かりが見えなくなった頃、二人きりで黙々と夕食の準備をする。
そこで口を開いたのは骸だ。
「集落の人たちに何を聞いていたんだ?」
「なんの事?」
コツメを見る人たちの騒ぎで鮮明には聞こえなかったが、芽衣が集落の人たちと小声で話しているのは聞こえていた。
それだけじゃない─────こういうことは旅に出て幾度もあった。
「気のせいじゃない?」
「───そうかな。」
パチパチと鳴り響く焚き火の音。
その火が一度消えかかる。その一時の暗闇に骸の質問は葬られた。
─────早朝から目的の丘に向けて歩いていた。
時計の小さい針が2回ほど動いた頃だろうか────丘と、その丘の上にそびえ立つ一本の木が見えた。
「あれか──」
ナノオシが遠くにある木を見て呟く。
そこで骸が「1回止まろう」と言ってまえ歩くナノオシを止める。
「ここから先、突然自然が妨害してくるなら、五感が冴えてる俺が前を歩いて、安全が確認できたら俺の後に続いてくれ」
そう言って、腕に抱きついているコツメを芽衣に預ける。
芽衣とナノオシは頷いて、ナノオシはいつでも対応できるように、剣を抜く。
しばらく丘に向かって歩いて、骸が足を一歩前にだし、地面を踏んだ途端、風の音を感じた─────
「戻れ!!!」
骸が叫ぶと同時に竜巻が巻き起こる。
骸の指摘のお陰で、竜巻に巻き込まれる前に、安全圏に戻ってくる三人。
戻った時には、竜巻は消えていた。
「俺が突っ込んで古代の果実を取ってこようか?」
「でも、竜巻の中で古代の果実を収穫するのはリスクがあるよ?」
ナノオシの提案に芽衣はそう答える。そして今度は骸の方を向いて───
「無茶振りだとわかってるけど、骸の間合いで止められない?」
「...ごめん、無理だ」
(無理...というより、俺自身が自然に間合いが関係あるのか理解できていない。)
────ここで考える突破口は二択だ。
ナノさんの言う通りゴリ押しで行く方法
これは芽衣の言った通り、リスクが高い。
となると─────
「気配を完全に消して、自然に侵入を悟られないようにする。」
呟く骸がそう言うと、芽衣とナノオシは目を見合わせる。
「そんなこと可能なの?」
芽衣の質問に骸はコクっと頷き
「あまり得意ではないけど──今ここで克服する。」
骸は目を瞑って、身体の力を抜き、ゆっくりと一歩一歩、歩いていく。
(すごい...骸の気配がない。)
骸が先程、竜巻が発生した所を超えて芽衣は心の中でガッツポーズをする。
雑念を与えないために声に出すのはぐっとこらえた。
しばらく歩いて、木に着々と近づいていくが、そこで骸の目の前の景色が一変する。
(...は?)
骸には何が起こったのか理解できなかった。
骸に見えている景色は、”トラウマ”だった。
「最強も落ちたな!!!」
「骸遅い〜笑」
「もう私の方が強いんじゃない?」
友達にそう言われて骸は静かに泣いていた。
ああ──どうして自分なんだろう?
「激しい戦闘を行えば行うほど、骨化は進み......やがては──”死に直結します”」
医者にそう言われる景色
剣だけを頑張ってきたのに──────どうして!!!!
「骸って無能だよね笑」
同い年の男の子は嘲笑らわれる景色
どうして剣を──取り上げるんだ?
そして場面は切り替わり、もう一人の骸が俺に問う。
動かないで勝つなんて甘いこと、この先通用するか?
もう一人の骸が指をパチンと鳴らすと、紫雨と戦ったって、骨化の影響で足が動かなくなっていた時の場面になる。
危うく人を守るどころか、仲間も守れないところだったんだぞ?
それに、結局剣に頼った。でも守れない。
”君は本当に無能だな”
(.........)
俺は乗り越えた気でいた。
でも、実際は────────────
「骸!骸!起きて!!」
俺が重いまぶたをゆっくり開けると、泣いている芽衣、ナノオシ、コツメが心配そうに見守っていた。
「うっ!...今のは?」
頭を抑えながら骸は起き上がる。
「骸!大丈夫?」
「俺は一体...」
骸が起きて安堵した芽衣は説明する。
「急に倒れて竜巻が発生したから、ナノさんが骸を何とか救出したの。」
「そうだったのか。ありがとうナノさん。」
「礼には及ばない。とにかく、今は少し休め。」
骸の顔色の悪さが目に見えて、ナノオシはそう気遣う。
「そうよ、骸は休んでて、次は私が...」
そう立ち上がる芽衣の手を骸は掴む。
「ダメだ!!!」
「え!?」
「あの木に近づくと、おそらく”精神攻撃”を受ける。」
精神攻撃で動けなくなったところを竜巻で仕留める。これでゴリ押しをすることもできなくなった。
「精神攻撃か......なら、俺が行こう!!」
ナノオシが自信満々に歩き出す。
止めようと声をあげようとしたが、骸は驚く。
(ナノさんの気配が消えた......さっきの俺を見て、もうコツを掴んだのか?)
「安心しろ、骸。俺は、辛いことに耐えることには最も得意だ!」




