第13話 剣を持ったカワウソ
集落に向かう道中。
”カワウソ危険!絶対に近づくな!!”
でかでかとそう書かれた木の看板があった。
「そんなに凶暴なのかな?」
「カワウソって大人しいイメージだったけど違うんだな.....」
そんなことを話しながら数十分、川が近くに流れる集落を確認する。
「あそこだ!」
骸が先導しようとすると、芽衣が隣から口を出す。
「私とナノさんが戦うから骸は前に出ないでね。特に剣を使わないでね?」
それは圧がこもっている言葉だった。
(俺が剣を使ってから余計厳しくなったな....)
そう思っている骸は「わかってるよ」と言い捨てて集落に向けて再び足を動かす。
「カワウソを討伐に来ました」
集落について「君たちは?」と集落にいた人に聞かれ、骸はそう答える。
するとその人は急に顔が暗くなった。そして周りの人が集まってくる。
「──君たち、やめておきなさい。」
「あのカワウソには勝てないよ」
そういった発言ばかりで困っていると、突如少し遠くから叫び声が聞こえた。
「おーーーい!例のカワウソが出たってよ!!」
その声に集落の人達は顔を手で抑えた。
中には、なんというタイミングだ……などと言葉をこぼす者もいた。
「勝てるかどうかは置いておいて、カワウソを見に行ってもいいですか?」
最初に声をかけた集落の人がやれやれと言った顔で「仕方ない...着いてきて」と、言った。
着いていくと、噂通りの剣を持ったカワウソがいた。だが、集落の人達の様子は違った。
────誰も恐れていない?
ナノオシは疑問に思った。だが、すぐにその答えはわかる。
剣を両手で持つために、二足歩行に切り替えたカワウソはよちよちと少しずつこちらに向かってくる。
これは怖いというより─────
「か、可愛い!!」と芽衣は目をきらきらさせる。
「これがカワウソに勝てない理由だよ.....」
「どの人も、この姿を見たら可愛くて攻撃なんてできなくて────」
「なるほど...」そう呟きながら骸はカワウソに視線を戻す。
よちよちと歩いてきていたカワウソは、可愛らしい雄叫びを上げながら、剣をブンブン振っている。それはただ空を斬っているだけ、でもその姿が────
「やばい!可愛い過ぎる!」
芽衣は集落の人達と完全に意気投合して会話しながらカワウソを近場で見ている。
「これはもう、お手上げだな...」
「そうだな...」
骸とナノオシも戦闘態勢なんてとっくの前に解き、カワウソを見つめる。
「ムッ...」
その声と共に、突如カワウソは派手に転んだ。
「大丈夫か〜!!!!」
「大変だ〜!!包帯を!!!」
先程までの集落の人達は慌てふためく。
そんな中、骸は既にカワウソに寄り添っていて、包帯を巻いていた。
「キュ!!!」
「キュ?」
カワウソは最初こそ警戒していたが、自分が転んでけがしたところを包帯で巻いてくれている様子を見て、ゆっくりと座る。
「骸!包帯なんていつ買ったの?」
「星空さんに貰ったんだ。もしもの時に使えって」
これでよし...と包帯を結び終えた骸は立ち上がる。そしてナノオシの方に戻ろうとした。
「キュ!!」
その鳴き声と共に、骸の足に何かが触れる。
骸が足元を向くと、カワウソは剣を地面に置いて、骸の足に抱きついていた。
「どうした?」
骸がしゃがむと、カワウソは今度は腕に抱きつく。
「もしかして、カワウソに気にいられたんじゃない?」
「そんなまさか〜」
芽衣の言葉に骸は、はははっと笑いながらそう言ったが────
「キュ!!!」
元気よく鳴くカワウソに目をぱちくりさせる。カワウソを腕から少し強引に離して
「と、とにかくカワウソは危害を加えることはないってわかったから。古代の果実を探しに行こう!!」
骸の言葉に、集落のある女性が反応する。
「古代の果実ですか?」
「こんな感じの果実です。見覚えはありませんか?」
骸はエインソードから貰ったイラストを見せる。
「やっぱりですか。その果実...この近くの丘に生えている木になってます。」
「本当ですか!?」
喜ぶのもうつかの間、その女性はすぐにこう答える。
「はい。ただあの果実は───”自然のトラップ”が守っています。」
「自然のトラップ?」
「まず、あの果実がなる木は古代から生えていたと呼ばれるほどに細い枝ですらとても丈夫で、回収が困難です。さらに周りにはその果実を守るために、侵入者には自然が敵となって向かい打ちます。それに、もう一つとんでもない試練があると────」
「なるほど...」
「まぁ行ってみないと分からないし、行くか!!!」
ナノオシが士気をあげる。
「そうよ、トラップなら適材適所な骸がいるしね!」
「...そうだな」
早速出発しようと歩き始めた時────
「なんで着いてくるんだよ...」
後ろをむくと、早く歩くために、剣を口に咥えて、四足歩行になったカワウソが着いてきていた。
「迷惑でなければ連れて行ってあげてください。」
困っていると、集落の人達は優しく言う。
「迷惑ではないですよ。」
ただ──────────
集落の人達は号泣しながらそう言ってくるから連れていくのにも抵抗がある。
ズビビィ!!
鼻をかむ音と共に
「じあばぜ(幸せ)になっでね」
と泣き顔で言ってくる。とりあえず、その人達を置いておいて、骸は「しょうがない」と呟きながらカワウソの方を向く。
「カワウソ...一緒に来るか?」
骸が手を伸ばすと
「キュ!!!」
と元気よく鳴いて、腕に掴まった。
「新しい仲間だ〜!」
はしゃぎながらカワウソを優しく抱っこする芽衣。カワウソは嫌がることなく芽衣の腕にも抱きつく。
「そうだ、名前を付けてあげましょ!」
芽衣はそう提案する。
「いい名前付けてやれよ!!」
と骸の背中を優しく叩くナノオシ。
「俺が?」
それに対して芽衣は変な顔をする。
「ナノさん...骸はめっっっっっちゃ!ネーミングセンスがないの!」
芽衣はために溜めて強調する。
「そんなにか?」
「昔、いつも使っている木刀に名前を付けようとして」
「”ムムノニテヒマユキテ”って名前を付けたの。」
「えっと...なにかの暗号か?」
苦笑いでナノオシが聞くと
「違うよ芽衣。”ムムノニテヒマユキテマル”だ。」
マル足しただけじゃね?と心で思うナノオシ。
「とにかくやばいのはわかったでしょ?」
「ああ...」
納得したナノオシはそう答える。
「この数年で成長してるから!!!」
「じゃあ言ってみなさよ。」
「”コツメ”───とかどうだ?」
芽衣とナノオシは目を見合わせる。
「普通にいいじゃん!」
「ああ、ぴったりだな。」
カワウソ改めてコツメも「キュキュ!」と鳴く。
「コツメも気に入ったみたいね!」
「よろしくなコツメ!」
骸の言葉に再び答えるように
「キュ!!!!!」
と、元気よく鳴いた。




