動物ってお風呂嫌がるよね
リビングにて。
ルーミィに温かい紅茶のようなものを出してもらって、三人で一息ついていた。
今日二人に沢山聞きたいことや知りたいことがたくさんあったんだけれど、また明日にしようかな。
夜の冷気にすっかり冷えてしまった体に、ルーミィがそっとショールをかけてくれた。
「ありがとう。」
「ご主人様、寒そうです!お湯を入れましたので、入って下さいです!」
「お風呂!?やったあ!ありがとう!」
こんな森の中だもの、雨でシャワーとか考えていたからかなり嬉しかった。
ルーミィに抱きついてクルクル回ると、ルーミィが感激して抱き返してきた。
「ああああ、お風呂でこんなに喜んでいただけるなんて・・・ルーミィ、お仕事したかいがありましたです!」
「・・・お風呂好き?」
ルーミィの感激を不思議に思って、二人を振り返るとものすごい勢いで視線を逸らされた。
クォーツは背中まで見せて懸命に視線を逸らそうとしているし、おじいちゃんは涼しい顔をして紅茶を飲んでいる。
二人とも風呂嫌いか・・・!
「うう、かわいそうに、ルーミィ!これからは私が二人の分までお風呂に入り倒してあげる!!」
「入り倒すってどんな様子だよ・・・」
クォーツから聞こえたぼそぼそ声は、背中に手をかけて強制的にこちらを向かせて耳元で私が入れ倒してあげようかというささやき声で対処しておく。
真っ赤になって固まったクォーツにガッツポーズをとって、今度はおじいちゃんに向き直った。
じとっと視線を送るとついっと視線を逸らされる。そ、そんなに風呂が嫌いかー!
負けず視線を送り続けると、耐え切れなくなったようにおじいちゃんが紅茶を置いて鉄壁の微笑みを見せた。
「ごほん。レ、レイ、この国の神話を話して差し上げましょう。今日はそれを聞いて眠りなさい。」
あ、誤魔化した。
すごく誤魔化した。
席を立って本棚の本を探しているおじいちゃんにじっとりとした視線を送ってみたけれど、困ったことに神話の話はすごく興味がある。
今はうまく誤魔化されたけれど、今度はちゃんとお風呂に入ってもらおう。
心に固く誓って、とりあえずこの話は保留ということで。
おじいちゃんが持ってきたのは手作り感溢れる古文書みたいな古さの本だった。丁寧に扱わないとすぐ破れてしまいそうな気がして大事に受け取った。
繊維質のもので作られていて、端の方は擦り切れて丸くなっている。相当古い本なんだろう、文字も時々掠れているけれど読めないほどではない。
そして案の定。
「読めない・・・。」
中国の甲骨文字のような字で書かれていて、検討もつかない。
ため息をついて本をクォーツに渡す。
クォーツが微笑んで、一ページ目から行を辿りながら丁寧に読んでくれた。