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第一話 俺は配管工。異世界でも、水を繋いで生きていく。












 


──灼熱の太陽が容赦なく照りつける砂の大地。

肺に針でも刺さったかってくらい、乾いた空気が痛い。

ただ息をするだけで、命を削っているような──そんな世界だった。


 


まさか、勝っちまうとはな……。

この異世界で初めて出会った“化け物”相手に。

無我夢中だったけど……いま、こうして生きて歩いてるってことは──


 


 ──俺は、生き残ったってことだ。


 


厚手の作業ズボンの裾を引きずりながら、修平は砂を踏みしめて歩き出した。

背中には革の腰袋、手には鉄のレンチ。

そしてその後ろには、ずるずると引きずられる、一匹の巨大な砂トカゲ。


 


「……よく見りゃ、トカゲっていうより、ワニに近ぇな……。こりゃ今日びの釣果ってやつだな」


 


そうぼやきながらも、どこか満足げに口元を緩めた。

やりきった──という達成感が、重たい疲労の中にわずかな誇りとして残っていた。


 


──そしてこの直後、修平は「村」と出会う。

異世界において、初めての人との邂逅だった。







* * *





 


「……っつ、ここは……どこだ……?」


 


村瀬修平むらせ・しゅうへいは、熱で霞む視界をゆっくりと起こした。

焼けつくような陽射しが、顔面に直接突き刺さる。

全身から汗が噴き出していた。


 


──そうだ。今日は朝から現場だった。


 


府内の再開発エリア。

高層ビルの建方が続く中、修平はいつも通り詰所でスマホを手にしていた。

小さな画面の中では、現場監督が淡々と朝礼の注意事項を読み上げていた。


《本日はA工区にて、鉄骨の建方がありますので、旋回範囲内には……》


聞き慣れた口調。聞き慣れた文言。

だが、それがいつもの“始まり”の合図だった。


 


動画が終わると、いつものように設備班だけのKY(危険予知活動)が始まり、

「今日も一日安全作業で頑張ろう!」という掛け声に、全員が続いた。


「「「「「おーっ!!」」」」」


 


その声の余韻が残るなか、修平は昨日と同じ工事エリアに向かいながら、頭の中で今日の段取りを反芻していた。安全通路を歩く足取りも、どこか軽かった。


ただ──どこか妙だった。

普段なら聞こえるはずの鉄骨を吊るワイヤの軋み音が、やけに湿っているように感じた。

風も、生ぬるい。

朝の冷気が残る時間帯のはずなのに、まるで梅雨明け直後の午後みたいな不快な熱気が、足元から這い上がってくる。

それでも修平は、特に気に留めることなく、足を止めずにいた。


だが──異変はそのすぐあとに起きた。


 

夜のうちに降った豪雨のせいか、地盤がどこかゆるんでいた。

朝イチから鉄骨の揚重をしていたラフタークレーンの片側アウトリガーが、

下敷きの鉄板ごと、ゆっくりと──だが確実に、傾き始めた。


 


「倒れるぞ!!」


誰かの怒鳴り声。


 


修平が顔を上げたとき、目の前には巨大な鉄骨の梁。

まだ頭上5メートル以上──それでも、間に合わない。


 


(ヤバい──これ、落ちる……!)


 


次の瞬間。鋼材が空気を裂いて落ちてくる音。

悲鳴。叫び。パニック。

誰かが叫んだ。


「誰か下敷きになったぞ!!」


 


そして、すべては、そこで途切れた。


 


 


……だが、今、修平の目の前にあるのは──


 


鉄骨もなければ、叫び声もない。

聞こえるのは風の音だけ。

見渡す限り、どこまでも続く、乾いた砂。


舗装されたアスファルトも、白線もない。

コーンもフェンスも、信号も電柱も、何ひとつ。


 



そこは、どこまでも“異質”な世界だった。


 



 


立ち上がった修平の全身から汗が噴き出す。

焼けるような熱気、照り返す砂の輝き、そして──見渡す限りの地平線。


「……なんだなんだ!? おい、どうなってんだよ……!」


鋼材も、クレーンも、詰所もない。

ただ、空と砂と、どこまでも無音の世界。


「鉄骨は?……おい! 山田!! どこだっ!? 佐々木ッ!!」


返事はない。まるで人の気配すら消えてしまったようだった。


 


「なんでだよ……なんで俺生きてんだよ……っ!」




目の前を何度も手で仰ぎ、額の汗をぬぐう。

そして──“いつもの作業服”のポケットに手を突っ込む。


「……あれ、スマホ……ねぇ!? ない、どこだ、どこやった……!」


胸ポケットにも、腰の工具袋にも、愛用のスマホはなかった。


「いったい、何がどうなってんだよ……っ!」


 


声が震える。喉も痛む。全身が悲鳴をあげている。

……だが、どこにも痛みはなかった。

落下したはずの鉄骨の衝撃も、割れる骨の感覚も──何一つ、ない。


 


気づけば、服は汚れてはいるが破れてはいない。

皮膚も無傷。血も、打撲もない。


 


「……マジかよ。転移……ってやつか……?」


 


まるで、漫画やラノベの中でしか見たことのない言葉が、思わず口からこぼれた。


そしてそのとき──彼は、自分の腰にある“いつもの重さ”に気づく。


 


「……ある。パイプレンチ……!」


 


修平は思わず、その重みを確かめるように腰袋へ手を伸ばした。

普段なら道具箱に仕舞っておくはずの一本──

けれど昨日、作業の終わりに慌ただしく片付けたせいで、そのまま腰袋に差し込んだままになっていた。


十年以上、現場で使い続けてきた赤グリップの愛用工具。

仲間内では“ヨンゴウ”の愛称で通るパイレンだ。


 


「……なんで、お前が……」


 


修平は腰袋からそっとレンチを引き抜いた。

その金属製の持ち手には、見慣れた刻印──『450』のサイズ表示がはっきりと浮かんでいる。


けれど、今その刻印の縁だけが、微かに光を帯びていた。

まるで、意思を持つように。彼の目覚めを待っていたかのように。


 


「おいおい……マジかよ……」


 


そのとき、腰袋の縁から、見覚えのない木片がぽろりと落ちた。

掌に収まるほどの薄い木札。

拾い上げて見ると、表面には焼き印のような文字が刻まれていた。


 


【スキル:パイプ生成】

任意のパイプを生成し、水・蒸気などを高圧で流す。


【特典装備:工具袋】

高耐久・多ポケット構造・自動拡張対応


 


「……スキル……? なんだこりゃ。って、マジかよ……」


まじまじと木札を見つめる。

最初は目を疑った。だが、何度見直しても、そこに刻まれている文字は変わらない。


【スキル:パイプ生成】

【特典装備:工具袋】


「……これが、現実か? 俺は夢でも見てんのか?……スキルって……ゲームとか、ラノベとかの……」



胸の奥で、ざわざわと不安が泡立つ。

手のひらにはじんわりと、砂と微かな震えが残っている。

無意識のまま、視線が彷徨うように空と地平をなぞった。


砂、風、空。


あの喧騒も、クレーンの音も、同僚たちの姿も、どこにもない。


思考がゆっくりと沈んでいく。

現実と非現実の境目が、じわじわと溶けていくような──そんな感覚。


「……まさか、マジで……異世界……ってやつなのか……?」


言葉にした瞬間、自分の中で、何かが確定した気がした。

ここはもう、“昨日までの世界”じゃない。

配管工・村瀬修平が、十年以上足を踏みしめてきた、あの現場とは違う。


これは──完全に異常だ。




 


訳も分からない。ただ、ひとつだけ確かなのは──

喉の渇きが、限界だった。


唇が乾いて裂け、舌が歯に貼りつく。

立ち上がろうとするたび、視界がかすんで砂に倒れ込む。


「くそ……このままじゃ……」


周囲に水らしいものは一切ない。

道もなく、建物もなく、人の気配もない。

あるのは、焼けつく太陽と、果てしない砂地だけ。


木札に記された【スキル】の言葉が、脳裏にちらつく。


「……出るわけないよな、そんな都合よく……」


だが、腰袋にあるレンチを手に取ると、不思議と指がしっくりと馴染む。

十年以上、現場で握ってきたあの感触だ。

手の中にある、それだけが確かだった。


修平は、ふっと息を吐いた。


「……まぁ、死ぬ前に……やれることは全部やっとくか」


 


修平は、ふらつく脚でそのまま砂の上に膝をついた。

右手には、いつもの“ヨンゴウ”──パイプレンチ。


 


「……パイプ生成……っ!」


 


──ゴシュッ。

砂の中から、銀色の鋼管が一本、ゆっくりと伸び上がる。

太陽の反射を受けて、管面が鈍く輝いた。


 


「……マジか……ホントに、出た……」


 


パイプは、しっかりと地中に根を張っていた。

サイズも太さも申し分ない。

けれど、水は──出てこない。


 


「……なんでだ?」


 


修平は銀色の鋼管にそっと手を当てた。

指先を這わせて接合部の滑らかさを確かめる。

そして、カン、カン、とレンチで軽く叩いてみる。

内部に響く音から、構造や詰まりの有無を探るように。


 


「詰まりはねぇ。ってことは……埋まってちゃダメなのか?」


 


続けて、地中から伸びたパイプを引っこ抜き、出口側に顔を寄せる。

だが、何も流れてこない。気配も、音もない。


 


「……継手か? 配管すれば……」


 


腰袋に手を入れながら、念じるように口を動かした。


 


「継手、生成……!」


 


──ゴシュッ。


 


腰袋の中に、見慣れた形状のL型の継手が転がり込んでくる。

ネジ山も、サイズもバッチリ合っていた。


 


「普通のエルボだな、よし……」


修平は迷わずもう一度、腰袋に手を差し入れた。


すると、ごそりとした感触と共に、短い直管がふたつ転がり込んでくる。

続けて、もうひとつのエルボも。


無言のまま、それらを次々に取り出して並べ、手早くネジを回して仮組みする。


 


修平は手早く配管のネジ部に継手をねじ込み、角度を調整。

手早く配管してエルボを回し、パイプの先端を蛇口のように下向きに変える。

そして、もう一度。


 


「……放水っ!」


 


全神経を指先に集中させ、手応えを探る。


 


──しかし、何も起きない。


 


「……くそっ。水は……なんで出ねぇ……」


 


唇が渇き、喉が張りつく。

それでも手を止めず、何度も継手をいじり、角度を変え、締め直す。


 


「管種は合ってる。これだけねじ込めば、水を流すだけなら漏れるわけもねぇ……なのに、なんで……っ」

 


肩を落とし、パイプの根元に両手をつく。

乾いた砂が指にまとわりついて、手が重い。


 


(……このままじゃ、死ぬ……)


 


そのときだった。

何気なく、腰に下げたパイプレンチに手を添えた瞬間──


 


ビリ、と。

微かな感覚が、手のひらに走った。


 


「……え?」


 


ただの工具だったはずのパイレンが、まるで“脈打つ”ように感じられた。

手の中で微かに温度を持ち、呼吸するように──応えてきた。


 


(……これ……なんだ?)


 


その感覚を否定せず、ただ身を委ねるように。

修平はゆっくりと、パイプに手を当てた。

そのとき、心の奥に浮かんだのは、ただひとつの願いだった。


 


「……頼む、水よ……出てくれ……っ!」


 


まるで祈るように、念じる。

ただ、水を。──ただ、それだけを。


 


──シュボッ!


 


突然、パイプの先から細い水流が噴き出した。

驚きに目を見開く間もなく、修平はその場に顔を寄せ、

渇ききった喉へと、流れ込む水を貪るように飲み干した。


 


「……ッくはぁ……っ! 生き返る……っ……!」


 


全身に染み渡る、冷たい水の感触。

乾いた身体に、命が戻っていく。


それは、涙が出るほど──美味かった。


 


喉が潤い、視界が少しずつ明瞭になっていく。

荒れていた意識が、ゆっくりと地に足をつけはじめる。

胸の奥で、確かな実感が湧いてきた。


 


「……これ、マジで……生き返るわ……」


 


修平は、思わず顔を上げて笑った。

何日も断食したあとのような、空腹とはまた違う、深いところからの満足感。

そのまま両手で水をすくい、顔を洗い、腕にかけ、喉元から胸元にまで水をばしゃばしゃとかけまくる。


 


「……へっ、だったらよ……!」


 


彼は立ち上がると、新たに杖ほどの長さのパイプを生成し、

無駄に──とにかく無駄に、

放水しまくった。


 


砂の上に、水の筋がいくつも走る。

じゅわじゅわと音を立てて吸われていく水。

けれど修平は構わず蛇口のバルブよろしく手を広げ、声を張った。


 


「見ろよ……! これが配管屋の“仕事”だぁっ!!」


 


ジャバジャバと水があふれ、広がり、

そこにはやがて、直径数メートルの小さな“水たまり”ができた。


 


そして。

その水場に──数羽の鳥が、ふわりと舞い降りてきた。


見たことのない鳥だった。

羽根の縁が青く光り、砂の上を器用に跳ねながら、水際に小さなくちばしを寄せる。


 


「……へぇ、マジかよ……」


 


命が、水を求めて集まってくる。

それを前に、修平は肩で笑った。


 


「……やっぱ、配管屋はこうでなくちゃな……水出してナンボだ」


 


一瞬、

(……いや、これ食えんのか?)

と腹を鳴らしながら鳥に意識を向けたが──


 


「……って、逃げた! はっや!!」


 


鳥たちは気配に気づくと、翼を広げて一斉に舞い上がり、

水場を残して空へ消えていった。


 


「……だよな。そりゃ逃げるよな」


 


呟いて、改めてあたりを見渡す。

広がるのは、どこまでも続く赤茶けた砂の海。


 


「とりあえず……食いもん、探さねーとな」


 


そう言って、修平は腰を伸ばし、

まだしっとりと濡れている手で、レンチを軽く握り直す。


 


杖代わりのパイプを肩に担ぐ。

その端で足元の石をカツンッと叩き、歩き出した。


 

一歩、また一歩。

水を背に、命を抱えて、修平は歩き出した。




 ──その数時間後

砂丘の向こうから、不規則な“ドスン……ドスン……”という地響きが、彼を出迎えることになる。


「……なんだ……?」


 


突如、砂を割って現れたのは──

巨大な灰色のトカゲ型モンスターだった。


甲殻のような背をもち、ぬめりとした肉体に砂をまとわせながら地を這うように跳ねるその姿は、まるで“デカすぎるワニ”の異形。


「……な、なんだよ、あれ……っ!?」


体長は5メートルを超えていた。

爪は鋭く湾曲し、牙はむき出し。

まるで金属のように反射する背甲が、太陽の下でぎらついていた。


1体……じゃない。2体、3体……!


「っ……う、うそだろ、なんで3体も……ッ!?」


修平は本能的に背を向け、砂の上を駆け出した。

逃げろ。逃げるんだ。こんなの勝てるわけがない──!


けれど。


「ッ、あ、足が──!」


砂の地面が足をすくう。

空腹と疲労で脚がもつれ、スピードが出ない。


振り返ると、ぬめるように地を這いながら、それでいてぴょん、ぴょんと跳ねるように迫ってくるトカゲたち。

巨体のくせに、信じられない速さだった。



「く、くるなっ……くんなああッ!!」


無我夢中で叫びながらも、足がもつれ、止まる。

砂に足を取られ、振り返った時には──すでに遅かった。


三方を囲まれていた。

息を飲む間もなく、ひときわ大きな一体が鋭い爪を振りかざし、砂を蹴って跳びかかってくる。


「やっべ、やっべええええ!!」


とっさに腰のパイプレンチを抜き、横薙ぎにぶん回す!


──ガッ!


甲高い金属音。

レンチが甲殻に当たり、トカゲがひるんだ。


「いけた!? ……って、ぜんっぜん効いてねぇじゃん!」


ただの鉄の塊としての威力。

まるで“当たった”だけの感触。

連中の身体は、思っていた以上に頑丈だった。


「くそっ……!」


修平は地面に向かって叫ぶように手を広げる。


「パイプ生成ッ!!」


──ゴシュッ!


立ち上がる一本の銀管。

そのままトカゲの進路を塞ぐように配置!


「……よし、これで……っ」


けれど、一体はパイプの脇を抜け、もう一体は飛び越えてきた。


「おまえらそんな運動神経あんのかよっ!?」


必死にパイプを連続生成するも、どれも“垂直”にしか生やせない。

足場を崩すつもりで作ったパイプも、砂を跳ね飛ばすだけで効果は薄い。


「だったら、水ッ……水出せば!」


修平は叫びながら、パイプの先端に触れる。


「放水っ!!」


──シュボシュボ……。


出てきたのは、頼りない細流。

逆にトカゲの砂塗れの体を潤すように、表皮にしみこみ──


「……塩、贈っちまった!?」


そんなバカな展開に、修平の顔が引きつる。


残る1体が、今度は後ろに回り込む。くるりと回ったかと思うと──


ブォン!!


尻尾が地面を叩き、砂煙が巻き上がる。


視界が砂で白く霞んだ、その刹那。

横合いから、獣のうなりとともに殺気が走る。


「ッ……!」


振り返る暇もなく、

左腕に、灼けるような激痛が走った。


「ぐあああああッ!!」


鋭い爪が、肉を裂いた。

血が噴き、赤い線を描く。

皮膚ごと抉られた箇所が、ズキズキと脈打ち、激しい痛みが神経を駆け巡る。


「っの……やろう……!」


もう後がない。

修平はグリップを強く握りしめる。

パイレンの金属が、脈打つように熱を帯びた。


(……念じろ。集中だ。いつもの作業みてぇに、しっかり芯をとらえろ……!)


 


「喰らええええっ!!」


 


渾身のスイング!


──ドゴォッ!!


一撃で、トカゲの顎が砕ける。

2体目の首筋に、同じくフルスイングで一閃!


──ゴガッ!!


粉砕音とともに、体ごと横に吹き飛ぶトカゲ。


残った1体は、一歩退くように距離を取った。


「……来いよ。こっちはまだ、やれるぜ……!」




──戦いは、ここからだ。




残る一体は、距離を取りながらぐるりと円を描くように回っていた。


──警戒している。仲間たちがやられたのを、ちゃんと見ていたんだ。


その眼に、獣の本能が宿っている。



ザックリ裂かれた左腕。

それでも、修平はパイプを握る手を離さなかった。

杖代わりのそれに身体を預け、なおも立ち続ける。

右肩にはレンチを担ぎ、静かに言い放つ。


「……来いよ」



足元の石に、カツン、と一度打ちつけて構え直す。


 


トカゲが、低く唸った。


背を丸め、地面に張りつくように姿勢を低くし──

旋回し尻尾を振り抜く──そう見えた、その刹那。

トカゲは跳ばず、後脚で砂を掘り起こした。

爆ぜるような砂塵が、煙のように巻き上がる。

修平の視界は、一気に奪われた。




 「っ──またかよっ!!」


目を細めたその瞬間、視界が白くかすんだ。


左側から、風切り音!


 


「チッ──!」


修平はとっさに身体を捻り、レンチを薙ぎ払う!


──ガガッ!


金属と骨の砕ける音。

トカゲの脚が折れ、体勢が崩れる。


その隙を逃さず、修平は声を上げた。


 


「こっちは、“芯”で測ってんだよ……!」


 


パイプレンチを、真上から。


──ドガァッ!!


頭蓋ごと叩き割った。


最後の一体が、砂に沈む。


 


「……ふぅっ……はぁ……っ」


 


その場に膝をつき、修平は肩で息をした。


砂に点々と落ちる血。

でも、顔は……ほんの少し、笑っていた。


 


「……上等だよ……異世界」


 


カツンッ。


杖パイプの端を石に打ちつけ、修平はまた立ち上がった。


 肩にかけたパイプレンチが、わずかに揺れた。


 レンチは、もはや“工具”ではない。

 振るえば命を守る“武器”であり、己を支える“柱”だ。

 いま、両手に残っているのは、その二本だけだった。


 

 呼吸が荒い。

 鼓動がまだ戦っている。

 

 けれど、ようやく意識が──自分の身体に戻ってきた。


 


「……いってぇ……」


 左腕の裂傷。

 それはもはや“傷”ではなく、“刻まれた痕”だった。


 見るのも怖かったが、それ以上に砂が入り込んでいるのが厄介だった。

 パイプの先を地面に突き刺して、口元に引き寄せる。


「放水──」


 

 ちょろちょろ、と頼りない水。

 だが今は、それが命綱だ。


 

 傷口を覆う砂と血を、そっと洗い流す。

 うめき声が漏れる。

 水が沁みるのか、痛みに脳が拒絶しているのか──もう、よく分からない。


 

 それでも、やらなきゃならない。

 

 作業服のポケットを探ると、小さく折り畳んだ“手拭い”が出てきた。

 現場の汗拭きタオル。今は、それが救急キットだ。



もう一度短いパイプを生成し、配管の端に蒸気を通す。

 その噴き出し口に、手拭いを当てるように構え──



「……頼む、上手くいってくれ……」


 じゅわ、と音を立てて手拭いが湿り、熱を帯びていく。

 やわらかく、けれど芯にはしっかりと火が通った布。

 それが、いま唯一の“消毒手段”だった。


 熱を帯びた手拭いが、消毒の代わりになる。

 焼けるような痛みに歯を食いしばりながら、それを傷口に押し当てた。


「っ……ッ……くそっ……!」


 

 耐えろ。

 止血しろ。

 そして生き延びろ。


 それだけを繰り返す。

 それしか、考えない。


 

裂け目を入れた手拭いの端を、ぎゅっと引き裂いて細い布紐にする。

 それを腕に巻きつけて、結ぶように締め上げた。


 固定するように、きつく巻く。締めすぎれば千切れるし、緩ければ意味がない。

 その感覚だけは、どれだけ異世界でも──現場でも変わらない。


 


「……ふぅ……」


 


 こうしている間にも、腹が鳴った。

 ようやく、脳が“戦闘”から“生存”へと切り替わっていく。


 そう、まずは──食わなきゃならない。


「腹減ったな……」


杖代わりのパイプを地面に突き立てたまま、修平はモンスターの背中にどかっと腰を下ろした。

異様な温もりと、ぶよぶよとした質感。思わず顔をしかめるが、それすら今はどうでもいい。


「……やれやれ、異世界ってのはどうなってんだか」


しばらく、その場でぼんやりと空を仰いだ後。

ぐっと身体を起こし、ズザッと滑るようにトカゲの背から飛び降りる。


周囲を見渡し、砂と血の匂いが混じる空気の中で、修平は肉の匂いを求めるようにトカゲの尻尾を眺めた。


「……食えるかどうかはともかく、無駄にすんのもな」


腰袋からカッターを取り出し、躊躇いがちに尻尾の肉に刃を当てる。

ズリッと、驚くほど滑らかに裂ける感触。


「……切れ味、ヤバ……」


カッターが高級包丁に思える瞬間だった。

続けて修平は、地面に手を伸ばす。


「パイプ生成」


生え出した数本の細い銀管を網状に組み合わせて、即席の焼き台を作る。

その上に慎重に尻尾肉を載せ、パイプを砂地に刺して蒸気ラインを通す。


──じゅっ。


肉の表面がわずかに縮み、香ばしい煙がふわりと立ち上った。


「……おっ、上手く火が通ってんな。さっき蒸気を試しといてよかったぜ」


思った以上に“使える”。

この異世界で、初めて感じた小さな“職人の手応え”だった。


一口。


まだ赤さの残るそれは、ジューシーというより“肉塊”といった食感だったが、今の修平には最高のごちそうだ。


「……まぁ、喰えりゃ十分だな」


焼き台の上に、尻尾のもう一切れを載せながら、修平は西の空を見やる。

陽はゆっくりと傾き、砂漠の起伏が長く影を伸ばし始めていた。


背後のトカゲの巨体もまた、強い陽を遮る岩のように、ひとつの影を落としていた。


「……ふぅ……」


修平はその影の中に寝転がった。

硬い砂の上でも、風がない分、思ったよりも身体は冷えなかった。


レンチをそばに置き、片腕はそのまま胸に乗せたまま。

目を閉じると、風も虫もいない静寂が広がる。


 


「……明日から、どうするかだな……」


 


静かに、影が長く伸びていく。

西陽は、まだ燃えていた。


 

「……うおっ……!? さっむ……っ!」


 

 寝返りを打った拍子に、修平は突然の寒さに目を覚ました。

 ついさっきまで照りつけていたはずの太陽は、すでに遥か遠く。

 砂漠の夜は遠慮なしに体温を奪い、吐く息が白く感じられるほどだった。


 

「……俺、爆睡……してたのか……?」


 

 視界は暗い。けれど、見上げればそこには──


 

「……星、か……」


 

 満天の星が、空一面に浮かんでいた。

 月はない。だが、無数の星がこれでもかというほど煌めいている。

 街灯も、ネオンも、誰かの部屋の明かりもない世界で、星々だけが夜を照らしていた。


 

「すげぇな……」


 

 その光景を前にして、修平はようやく“ここが異世界”だという実感を、はっきりと味わった。

 地球じゃないどこかに、自分がいる。それが、夜空から容赦なく降ってくるようだった。


 

 時刻の見当はつかない。けれど、たぶん21時を少し回ったあたりだろう。

 疲労と安堵に体が負けた。

それが、こんな深い眠りを許した理由だった。


 

 傷はまだ痛む。けれど、出血は完全に止まっていた。

 喉の渇きも、腹の空きもない。

 つまり、身体は“危機”から“回復”へと段階を進めていた。


 

「……やっぱ人間って、食えると一気に気が緩むんだな……」


 

 あぐらをかいて呟く。

 その声も、広大な砂の夜へ吸い込まれていく。


 

 だが、寒さは変わらず厳しい。


「……さて。どうすっか……」


 

 火を起こすスキルも技術もない。

 だが、道具ならある。


 

「……パイプ生成」


 

 短い配管を何本か生成し、地面に並べる。

 やや太めの一本を選び、高温蒸気を数十秒吹きつけた。


 それを素早く手拭いでくるんで、胸元に抱き寄せる。


 

「……おぉ……あったけぇ……」


 

 即席のパイプカイロは、驚くほど効果的だった。

 指先にじわりと体温が戻ってくる。

 鉄と蒸気と手拭い。

たったそれだけなのに、心まで温まる気がした。


 

 トカゲの亡骸──その巨大な胴体に背を預けながら、修平は静かに目を閉じた。


 

 ……思い出すのは、日本の風景だった。


 東京の片隅。

特に何があるでもない、ごく普通の住宅街。

 朝になれば新聞配達の音。

夕方には犬の散歩。夜になれば、どこかの家からテレビの音が漏れてくる。


 そこに、両親がいた。



 「……緊急連絡先、実家にしてたよな……」


 

 なら、なにかしら“異常”は伝わってるはずだ。

 仕事先から連絡がいって、何かが起きた、と。


 

 でも、それが“異世界に消えた”だなんて──

 誰も、そんなこと想像できるわけがない。


 

「……どうすっかな、ほんと……なんか、そればっかだな……」


 

 ふっと、ひとつ息を漏らす。

 胸元のパイプカイロが、かすかに鼓動のような温もりを伝えていた。


 

 そのまま、また、眠りに落ちていく。


 


 冷たい風が吹いても。

 星が瞬いていても。

 彼は、温もりとともにそこにいた。


 


──次に目を覚ますとき、また新しい日が始まるのだ。



 


 




 ──夢も見ずに、ぐっすり眠った。


 

 空がうっすらと青みを帯び始めたころ、修平は自然と目を覚ました。

 まだ星は微かに残っていたが、冷え切っていた空気が少しずつ緩み始めている。


 

「……よくもまあ、朝まで寝てたもんだな、俺……」


 

 ぼやきながら、身体を起こす。

 傷は相変わらず痛むものの、感覚はハッキリしている。

 昨夜の即席カイロがまだほんのりと温かく、胸元で小さく生きていた。


 

「……あんなデカいトカゲとバトったあとだってのによ。

 よく寝込みを襲われなかったもんだ……」


 

 隣に横たわる、巨大トカゲの亡骸。

 修平はその胴体を、パンッと軽く叩いた。


「おまえのおかげか? 魔除けってやつかもな」


 

 そう冗談めかしながらも、脳裏に昨日の違和感がよぎる。


 

「……そういや……」


 

 尻尾を切ったときの、あのカッターナイフの“切れ味”。

 あんな分厚い肉が、まるで絹みたいにスパッといった。


 パイプレンチだって、戦いの最中にまるで“自分の手足”みたいに振るえた気がした。


 

「……おいおい、まさか……」


 

 腰袋に視線を落とす。

 そのカラビナに引っかけてある、黒い革手袋。

 現場で使い古した、ただの作業用グローブ。


 

 それを、ゆっくりと手にはめた。


 

「……まさかな。パワーグローブなんて漫画の中だけだろ……」


 

 そう言いながら、軽く拳を握る。

 そして、目の前のトカゲの胴体めがけて、そこそこの力で拳を当ててみた。


 

 ──ドンッ。


 

 衝撃が返ってくる。だが、拳は痛くない。

 肉を打った手応え。ゴツッとした質感。だが、不思議と“怖さ”がない。


 

「……おぉ?」


 

 念のため、革手を外して、同じくらいの力で再度パンチしてみる。


 

 ──バシィッ!


 

「いってぇ──っ!!」


 

 拳がズキズキと痛む。骨の奥に響くような、あの鈍い痛み。

 明らかに“保護”されていた感覚が、今になってようやく確信に変わった。


 

「マジかよ……パワーグローブじゃねぇか……!!」


 

 笑いが漏れた。思わずガッツポーズ。


 

「……ただの革手だぞ!? 俺がいつも現場で使ってたやつだぞ!?

 それが異世界じゃ、スーパーツールってか……!」


 

 ならば、と。


 今度はグローブをつけたまま、トカゲの尻尾に手をかける。

 ぎゅっと握り、全身を使って引っ張ってみた。


 

 ──ズ、ズリ……ズリ……


 

 ゆっくりと、しかし確実に動く巨大な尻尾。

 想像していたよりも軽い。

 いや、違う。“自分が強くなっている”のだ。


 

「……やれる、な。よし……!」


 

 笑みがこぼれる。


 

「こいつで、しばらくは食っていける……! 三匹はムリでも、一匹ならいける!」


 

 腰袋を揺らし、レンチを確認。

 革手をしっかりとはめ直し、トカゲの尾を片手で引きずりながら、砂の斜面を登っていく。


 

 その足取りは、もう“生き延びる”ためのものじゃなかった。


 

 次の“何か”へと、向かうための一歩だった。


 


──こうして、“配管工 修平”は、異世界に確かな足跡を残し始める。




* * *




──灼熱の太陽が容赦なく照りつける砂の大地。

肺に針でも刺さったかってくらい、乾いた空気が痛い。

ただ息をするだけで、命を削っているような──そんな世界だった。


 


まさか、勝っちまうとはな……。

この異世界で初めて出会った“化け物”相手に。

無我夢中だったけど……いま、こうして生きて歩いてるってことは──


 


 ──俺は、生き残ったってことだ。


 


厚手の作業ズボンの裾を引きずりながら、修平は砂を踏みしめて歩き出した。

背中には革の腰袋、手には鉄のレンチ。

そしてその後ろには、ずるずると引きずられる、一匹の巨大な砂トカゲ。


 


「……よく見りゃ、トカゲっていうより、ワニに近ぇな……。こりゃ今日びの釣果ってやつだな」


 


そうぼやきながらも、どこか満足げに口元を緩めた。

やりきった──という達成感が、重たい疲労の中にわずかな誇りとして残っていた。

そして──

トカゲの尻尾をずるずると引きずりながら、

修平は、再び歩き出した。




────────




 砂の丘を越えたその先に、それはぽつんと佇んでいた。


 いびつに連なる家々。干上がった水路。擦り切れた柵。

 広大な砂漠に溶け込みそうな色合いの──それでも、人の営みを感じさせる集落。


 修平は思わず、手にしたレンチの柄をポン、と軽く叩いた。

「……おお、マジで村があるじゃねぇか」


 トカゲの胴体を引きずりながら、自然と足取りが軽くなる。

 だが同時に、心の中にひとつの警戒が芽生える。


 ──人と出会う。

 この異世界で、初めての“対面”だ。


 背筋に冷たい汗が伝った。


 


 村の外縁にたどり着いた修平は、立ち止まり、全体を見渡す。


 ──妙に、静かだ。


 昼どきだというのに、村の通りには人気がほとんどない。

 見えるのは、井戸のそばに転がる水桶と、畑跡のような枯れ草の列──

 そして、ぽつりと立つひとりの青年と、数人の子供だけ。


 そのとき──


「……でっか……」


 子供のひとりが修平の引きずるトカゲを見つけ、指をさして叫んだ。

 次の瞬間、その子供は「大変だーっ!!」と叫びながら、集落の奥へと駆け出していった。


 残された青年が、ぎこちなく修平に近づいてくる。

 その手は震えていた。


 


「あ、あの……行商人の方……では、ない……ですよね……?」


 青年はおずおずとトカゲの方を見たあと、修平の目をちらりと見てすぐ逸らした。


(……あー……こりゃ、俺が“ヤバい奴”に見えてんだな)


 修平は自覚した。

 得体の知れない服、道具、巨大な獲物、しかも無言で村に近づく男──

 どう考えても“よそ者”だ。


「すまねぇ、驚かせちまったか?……砂漠で迷ってな。コイツの肉、村で使ってくれ。できれば少し、話を聞きたい。あと……できれば、少しだけ、休ませてもらえねぇか?怪我しちまったんだ」


 できるだけ柔らかい声で伝える。

 だが青年は困ったように目を伏せ、申し訳なさそうに首を横に振った。


「……実は……この村の井戸は、もう干上がっていて……。雨水を溜めることで、なんとか命を繋いでいる状況でして……。十分な休養は、とても……」


「……そっか。……それなら、俺が──」


 


 そう言いかけたときだった。


 


「──ほんとにいたんだよ!!」


 村の奥から、砂を蹴立てて数人の子供たちが駆けてきた。


 その先頭で走っていたひとりが、後ろを振り返りながら叫ぶ。


 「ほら!ほんとにトカゲおじさんでしょ?!」


 そして──そのあとに、


 


 ──風が、ほんのわずかに流れた。

 砂を纏うようにして、ひとりの女性が現れた。


 


 セミロングの栗色の髪が、陽に透けてゆらめく。

 素朴な編み込みでまとめられた髪型が、どこか懐かしさを思わせた。


 くりっとした大きな瞳。

 驚きと緊張、そしてほのかな興味をその奥に宿している。


 その横顔を見たとき、修平は思った。


 ──ああ、こういうの、昔“田舎の美少女”って言ったよな。


 だが、彼女はただの“可憐な村娘”ではなかった。


 


「……うそ……ほんとに砂トカゲを、一人で引きずってきたの……?」


 女性は、修平とその背後のトカゲを交互に見て、目を見開いたまま立ち尽くす。


 


 その声を合図にしたように、村の空気が変わった。

 人々が家々の隙間から顔を出し、子供たちは修平の周囲に集まり始める。


 驚き、疑念、興味、そして──警戒。


 


 その中で、誰かがぽつりとつぶやいた。


「……あいつ、冒険者か?」


「でも、あの服……見たことない……」


「もしかして、隣の国から来たのかな?」


「いや、でも一人であんなのを……」


 


 修平は、静かにレンチの柄を握りしめた。


(……こっからだな。俺の異世界生活)


 初めて人に会った。

 初めて“言葉”が通じた。

 


そして──目の前には、どこかあどけなさを残す“ひとりの女性”がいる。


 


 この出会いが、世界を変える旅の始まりになるなど、

 このときの修平には、まだ想像もついていなかった。


 


──第一話 了。


【お知らせ】本話は改稿版です。表現とテンポ、水回りギミックの描写を中心に調整しました。旧版から大筋は変わりません。以降も順次差し替え・再投稿していきます。ブクマ・評価はそのままでOK、誤字報告も歓迎です!

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イヤッホー!配管工が世界を救う字面だけ妙に見覚えのあるファンタジーの開幕だ! 最初のザコがあまりザコっぽくないオオトカゲなのは難易度高そうだけど、きっと仲間にすれば役に立つさ。トカゲだけにヨッs、いや…
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