第七・五話:巨デブのきんたま復活祭 ~むにむに祝いの夜~
登場人物
•夏目 圭介:巨デブ専門の飼育員(26歳)
•大井川 狸吉:同僚の飼育員(30歳)
•神田 ヘキサ:ペットショップの店長(40歳)
•巨デブ:人語を解する珍獣
ペットショップ 裏の飼育スペース
(巨デブの”きんたま復活”を祝う、急遽開催の身内パーティ会場)
(夕暮れ時。ペットショップのバックヤードに、手作り感溢れる簡易テーブルが置かれている。そこには小さなチョコレートケーキと、アサイースムージーが並び、「祝・きんたま復活」と殴り書きされた紙がテープで貼られている)
巨デブ 「ぶひぃぃ……なにぃ……? このぉ……あまいかおりぃ……♡」
(巨デブ、テーブルに近づき、鼻をくんくんさせて贅肉をプルプル揺らす)
夏目 圭介 「お前、落ち着けって。まだ始まってねぇんだから」
大井川 狸吉 「いやいや、『きんたま復活祭』だからな。ちょっとくらい浮かれてもいいだろ。な、巨デブ」
(狸吉、巨デブの背中をバンバン叩く。贅肉が波打って、テーブルがわずかに揺れる)
巨デブ 「ぶひぃ♡ うれしぃよぉ♡ ぼくの….きんたまのおいわいぃ♡」
神田 ヘキサ 「……お前ら、きんたま連呼すんな。ちょっと引くぞ」
(テーブルの上には、狸吉が近所のケーキ屋で急いで買ってきたミニサイズのチョコレートケーキが置かれている。横に置かれた「祝・きんたま復活」の紙は、明らかに狸吉の雑な字だ)
夏目 圭介 「これ、誰が書いたんだ?」
大井川 狸吉 「俺だよ。どうだ、センスあるだろ?」
夏目 圭介 「……センスって言葉を軽々しく使うな」
(巨デブ、ケーキをじっと見て脂汗を滲ませる)
巨デブ 「ぶひぃ……おいしそうぉ……ぼくぅ……たべたいよぉ……♡」
神田 ヘキサ 「お前、食事制限中なんだから一口だけな。分かったか?」
巨デブ 「ぶひぃ……!? ひとくちぃ……!?」
(巨デブ、ショックで目を見開く。贅肉がわずかに震える)
夏目 圭介 「しょうがねぇだろ。お前が健康的なテカりを保つには我慢も必要だ」
大井川 狸吉 「でもなぁ、今日は特別だ。ほら、巨デブのためにスムージーも用意したんだ」
(狸吉、ドヤ顔でアサイーとバナナのスムージーを差し出す)
巨デブ 「ぶひぃ……すむーじぃ……?」
(巨デブ、スムージーを一口飲んでみる)
巨デブ 「ぶひぃぃ!! おいしぃぃ!! でもぉ……やっぱりぃ……けーきぃ……♡」
(巨デブ、ケーキに視線を戻してうっとりする)
神田 ヘキサ 「こいつ、完全にケーキに魂持ってかれてんな」
(夏目、ため息をつきながら小さなスプーンを手に持つ)
夏目 圭介 「はい、巨デブ。一口だけな。ほら、口開けろ」
(巨デブ、目をキラキラさせて口を大きく開ける)
巨デブ 「ぶひぃぃ♡ あーん♡」
(夏目、ケーキを一口すくって巨デブの口に入れる)
巨デブ 「ぶひぃぃぃぃ!!! おいしぃぃぃ!!! ぼくのぉ!! きんたまあじぃ!! しあわせぇ!!!」
(巨デブ、歓喜のあまりケージの中で跳ね回る。贅肉がプルプル揺れて、テーブルがガタガタ揺れる)
大井川 狸吉 「おいおい、暴れるな! ケーキ倒れるぞ!てか何だよ、きんたま味って」
神田 ヘキサ 「……いや、もうこいつ見てると幸せしかねぇな」
(巨デブ、興奮が収まらずケージの柵にぶよぶよの腕をかける)
巨デブ 「ぶひぃ♡ みんなありがとぉ♡ ぼく…きんたまもどってきてぇ…けーきもたべれてぇ….さいこぉぉ♡」
夏目 圭介 「……ったく、こいつに振り回されてんな、俺ら」
(狸吉、ニヤニヤしながらスムージーを飲む)
大井川 狸吉 「でもさ、巨デブがこんなに喜んでると、こっちまで嬉しくなるよな。こいつ、なんか店の雰囲気変えたよな」
神田 ヘキサ 「確かに。『きんたま復活祭』なんてバカバカしいと思ったけど、悪くねぇな。子供たちにも人気出そうだし」
(巨デブ、ケーキの味を思い出したのか、再び脂汗を滲ませながらニコニコする)
巨デブ 「えへへぇ…またおいわいぃしてねぇ♡ ぼくのきんたまぁ….もっとでっかくなるよぉ♡」
夏目 圭介 「……お前、次はおとなしくスムージー飲めよ」
大井川 狸吉 「いや、でもさ。こいつ、きんたまデカくなったらもっと人気出るんじゃね?」
神田 ヘキサ 「……お前ら、それ以上デカくなったらケージに入らなくなるぞ」
(巨デブ、得意げに胸を張る)
巨デブ 「ぶひぃ♡ ぼくぅ…えらいぃ♡ でっかいきんたまもちにぃ…なるよぉ♡」
(夏目と狸吉は顔を見合わせ、神田店長は深くため息をつく)
夏目 圭介 「……本当にこれでいいのか?」
(バックヤードには、巨デブの「ぶひぃ」と店員たちの笑い声が響き渡る。こうして、巨デブの”きんたま復活”は、ペットショップに新たな活気をもたらすきっかけとなったのであった――)