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第四・五話 幕間:巨デブ、食材疑惑で命乞い

登場人物

•夏目 圭介:巨デブ専門の飼育員(26歳)

•大井川 狸吉:同僚の飼育員(30歳)

•神田 ヘキサ:ペットショップの店長(40歳)

•巨デブ:人語を解する珍獣

ペットショップ 事務室


(スタッフ一同、テーブルを囲んで深刻な顔をしている)


神田 ヘキサ 「……で、売れる見込みはあるのか?」


大井川 狸吉 「いやぁ……相変わらず、去勢済みってだけで需要ゼロっすね……」


夏目 圭介 「こいつの維持費、月どれくらいでしたっけ?」


神田 ヘキサ 「エサ代だけで毎月10万超えだな……それに加えて、掃除やらケージの補強やらでコストがヤバい」


大井川 狸吉 「いや、マジでなんでこんなの仕入れたんすか?」


神田 ヘキサ 「格安だったから」


夏目 圭介 「(即答かよ)」


(そんな会話をしている間も、巨デブはケージの隅でブーブー寝転がっている)


巨デブ 「ぶひぃぃ……おなかすいたよぉ……」


大井川 狸吉 「いや、食うなって。お前、もうこれ以上太るな」


(神田、スマホをいじりながら何やら考え込む)


神田 ヘキサ 「……なぁ、お前ら、巨デブって食えるのか?」


(場が静まり返る)


夏目 圭介 「は?」


大井川 狸吉 「いやいやいや、食えるって何っすか?」


(神田、スマホを見せる)


神田 ヘキサ 「ほら、海外の掲示板で見つけたんだが……どうも、巨デブのテール(尻尾)や白子が珍味らしい」


(夏目と大井川、画面を覗き込む)


夏目 圭介 「マジかよ……」


大井川 狸吉 「うっわ、これ本当に食ってるんすか? しかも高級食材扱い……」


神田 ヘキサ 「もしこのルートで処理できるなら、赤字にはならんかもしれんな」


夏目 圭介 「うわぁ……さすがにどうなんすか、それ……」


(すると、ケージの隅で聞き耳を立てていた巨デブが、突然ビクリと震える)


巨デブ 「…………」


(ガタガタ震え始める)


巨デブ 「ぶ、ぶひぃ……? た、たべる……?」


(スタッフ一同、一斉に振り向く)


巨デブ 「ぼ、ぼくぅ……た、たべられちゃうのぉ……? ぶひぃぃぃ……!」


(突然、巨デブがケージの中で暴れ出す)


巨デブ 「やだぁぁぁ!! たべないでぇぇぇ!! ぶひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」


(ドンドンとケージに突進し、脂汗を撒き散らす)


大井川 狸吉 「おいおいおいおい、何を早とちりしてんだよ!」


巨デブ 「ぶひぃぃぃ!! ぼくのぉ、おしりのぉ、しっぽぉ!! たべないでぇぇぇ!! ぶひぃぃぃ!!!」


(夏目、頭を抱える)


夏目 圭介 「だから落ち着けって……」


巨デブ 「しらこぉ!! しらこってなにぃ!? ぼくのぉ!! たべちゃやだぁぁぁぁ!!!」


神田 ヘキサ 「白子はお前にはないから安心しろ」


巨デブ 「ぶひぃぃぃぃぃ!? そういうもんだいじゃなぁぁぁぁい!!!」


(巨デブ、転がりながら泣き叫ぶ)


巨デブ 「こ、ころされるぅ!! たべられるぅ!! ぼくのぉ、おにくぅ……おいしくないよぉ!! ぶひぃぃぃぃぃぃ!!!」


(店の前を通る客がギョッとして立ち止まる)


通行人A 「……え、何この店?」


通行人B 「なんか……でっかいブタが号泣してる……」


夏目 圭介 「おい、もう客に見られてるぞ」


神田 ヘキサ 「うるさいぞ巨デブ!」


巨デブ 「いやぁぁぁぁぁぁ!!! ぶひぃぃぃぃ!!! ぼくのぉ! しっぽぉ! ぼくのぉ! おにくぅ!! たべないでぇぇぇぇぇ!!!!!」


(床をゴロゴロ転がり、脂汗を撒き散らしながら命乞い)


大井川 狸吉 「ちょっ、やばい、これは止めないと……」


(夏目、ため息をつきながら巨デブの頭をポンポンと叩く)


夏目 圭介 「はいはい、落ち着け。誰もお前を食わないから」


巨デブ 「ほ、ほんとうぉ……? ぶひぃ……」


神田 ヘキサ 「まぁ、売れなかったらその時考えるがな」


巨デブ 「ぶひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」


(再び号泣しながら転がり回る)


(スタッフ一同、心底困った顔で巨デブを見つめるのであった――)

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