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第三話:増量と販売戦略

登場人物

•夏目 圭介:巨デブ専門の飼育員(26歳)

•大井川 狸吉:同僚の飼育員(30歳)

•神田 ヘキサ:ペットショップの店長(40歳)

•巨デブ:人語を解する珍獣

ペットショップ 巨デブのケージ前


(巨デブ、床に寝そべりながら脂汗を流し、ひたすら餌を口に運んでいる)


巨デブ 「ぶひぃ……ぶひぃ……(口いっぱいに餌を詰め込みながら)……もっとぉ……ぶひぃ……」


夏目 圭介 「……お前さぁ、それ以上太ったらマジでやばいぞ」


大井川 狸吉 「昨日の夜からずっと食ってるよな……何かあったの?」


巨デブ 「……ぶひぃ……(涙目でほっぺを膨らませながら)……だってぇ……ぼくのぉ……ぼくのぉぉぉ……」


夏目 圭介 「あーはいはい、きんたまな。もう無いんだから諦めろ」


(巨デブ、ボロボロ涙をこぼしながらさらに餌を頬張る)


巨デブ 「ぶひぃぃぃ……!! ひどいぃぃ……!! ぶひぃぃ……」


大井川 狸吉 「情緒不安定すぎる……」


神田 ヘキサ(店長) 「おい、お前ら!!」


夏目 圭介 「んぁ?」


(店長がポップを持ってやってくる)


神田 ヘキサ 「このままだとこいつは一生売れん! だから新しい売り方を考えた!」


大井川 狸吉 「どんな?」


作戦①「もちもち贅肉をPR」


(店内には新たなポップが貼られた。)


《 ふわふわもちもちの贅肉!! 抱き心地抜群!! 》


《もっちりボディに癒やされる!? 柔らかさ、無限大!!》


《ぽよぽよ触感を体験しよう!!》


(ポップにはさらに、「超もちもち! ふわふわ! 癒やし系デブ! 価格:50万円」と書かれている)


夏目 圭介 「……詐欺じゃね?」


神田 ヘキサ 「詐欺じゃない。これは『ブランディング』だ」


大井川 狸吉 「いやいや、ふわふわでももちもちでもないだろ……むしろテカテカでドロドロだぞ?」


神田 ヘキサ 「そこをどうにか演出するんだよ!」


夏目 圭介 「演出……?」


神田 ヘキサ 「例えば、こうやってお腹をプニプニすれば……ほら!」


(店長、巨デブの腹をむにむにと押す)


巨デブ 「ぶひぃぃ♡ くすぐったいよぉ……むにむに、してぇ?」


夏目 圭介 「……うん、キツイな」


大井川 狸吉 「正直、今の一連の流れで売れる気がしなくなったんだけど」


神田 ヘキサ 「うるさい! こういうのは情で売るんだ! 癒やし系の珍獣ってことを前面に出せば、需要はあるはず……!」


夏目 圭介 「まぁ、ダメ元でやるか……」


(こうして、新たな販売戦略が始まった――)



ペットショップ 巨デブ販売コーナー


(新たなポップと装飾で、巨デブがまるで可愛い生き物のように見えるように工夫された)


客D 「……えっ、これが『超もちもち癒やし系』?」


客E 「なんか……思ったより……」


(巨デブ、満面の笑みで客に向かって笑顔を見せる)


巨デブ 「ぶひぃ♡ かわいいでしょぉ? ぼくのぉ、おにくぅ……むにむに、してぇ?」


(客E、そっと後ずさる)


客D 「……やっぱり考えます」


(客、そそくさと退店)


夏目 圭介 「ダメじゃん!!」


大井川 狸吉 「もしかして、そもそも癒やし系じゃないのでは……?」


神田 ヘキサ 「……値下げするか」


(価格が「38万円」に変更される)


巨デブ 「ぶひぃ!? またやすいぃぃぃぃ!!??」


(巨デブ、絶望しながらさらに餌を頬張る)


夏目 圭介 「……もうこれ、店のマスコットでよくね?」


——


作戦②「可愛い仕草をアピール」


(次に、巨デブに「可愛い動作」を覚えさせることに)


夏目 圭介「ほら、巨デブ、お手」


巨デブ「ぶひぃぃ……?(もっちりした前足をゆっくり上げる)」


大井川 狸吉「うわっ、なんか動きが鈍重すぎて微妙に怖ぇ……」


夏目 圭介「えーと……じゃあ、お座り」


巨デブ「ぶひ…?んぅぅ……(どすん)」


(振動でガラスケースが揺れる)


神田 ヘキサ「ダメだな」


大井川 狸吉「ダメだな」


夏目 圭介「うん、ダメだな」



作戦③「コスプレで可愛さアップ」


(最後の手段。巨デブにウサギの耳とリボンをつけてみる)


大井川 狸吉「……圭介」


夏目 圭介「言うな、わかってる」


大井川 狸吉「これは、キツい」


神田 ヘキサ「思ってた以上に可愛くないな……」


(そこに、再び客が近づく)


客B(若い女性)「えっ!? ウサ耳つけてる!?」


客C(子ども)「うさぎさん……?」


巨デブ「ぶひぃぃ……♡(垂れた脂肪のせいで耳が見えない)」


客B(若い女性)「……いや、やっぱ無理!!!」


客C(子ども)「こわい……」


(客たち、去る)


一同「……」


夏目 圭介「……詰んでるな」


神田 ヘキサ「仕方ない。値下げするか」


(売れる気配が一向にないまま、巨デブは今日も食べ続けるのであった――)

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