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第二話:値下げと喪失の涙

登場人物

•夏目 圭介:巨デブ専門の飼育員(26歳)

•大井川 狸吉:同僚の飼育員(30歳)

•神田 ヘキサ:ペットショップの店長(40歳)

•巨デブ:人語を解する珍獣

ペットショップ店内 巨デブ販売コーナー


(ポップには「激レア珍獣! 巨デブ 210kg! 価格:98万円(応相談)」と書かれているが、客の反応は冷たい)


客A 「えっ……これ、動物なの?」


客B 「なんか……溶けてない?」


客C 「珍獣って言われると、まあ確かに……珍しい……?」


(巨デブ、満面の笑みで振り向く)


巨デブ 「ぶひぃ♡ かわいいでしょぉ? ぼくのぉ、おにくぅ……むにむに、してぇ?」


(客C、そっと後ずさる)


客C 「……すみません、やっぱり考えます」


(客、そそくさと退店)


夏目 圭介 「……うん、売れねぇな」


大井川 狸吉 「まあな……見た目はともかく、性格もなかなかクセあるし……」


神田 ヘキサ(店長) 「よし、値下げするぞ」


(ポップを書き換え、価格を「78万円」に変更)


夏目 圭介 「下げ幅エグくないすか?」


神田 ヘキサ 「売れ残るよりマシだ。あと2日売れなかったら50万にする」


大井川 狸吉 「巨デブってそんなディスカウントしていい生き物だったっけ?」


神田 ヘキサ 「希少価値があっても、需要がなければ値段は下がるもんだ」


(巨デブ、ポップを見ながら首をかしげる)


巨デブ 「……ぶひぃ? なにこれぇ? ぼくぅ……やすいのぉ?」


夏目 圭介 「まあ、お前が売れないからな……」


巨デブ 「ぶひぃぃ!? ぼくぅ、かわいいのにぃ……おかしいよぉぉ……」


(巨デブ、ショックで床にうずくまり泣き始める)


巨デブ 「ぶひぃぃぃ……ひどいよぉ……ぶひぃぃ……」


夏目 圭介 「おい、泣くなって……うわ、脂汗すげぇな」


大井川 狸吉 「もうこのまま飼うしかないんじゃね?」


夏目 圭介 「いや、それだけは絶対にダメだ」



その夜 巨デブのケージ


(巨デブ、ゴロンと横たわりながら何かを見つめている)


巨デブ 「……ぶひぃ?」


(お腹の脂肪を押しのけ、下腹部を見つめる)


巨デブ 「……ぶひぃぃ?」


(何かに気づいた顔をする)


巨デブ 「あれぇ……? ぼくのぉ……きんたまぁ……どこぉ……?」


(必死に探し始めるが、当然ない)


巨デブ 「ぶ、ぶひぃ!? ぶひぃぃぃぃ!!!?」


(突然、絶叫しながらケージの中で暴れ始める)


夏目 圭介(寝起き) 「うるせぇ!! なんだよ今度は!!」


巨デブ 「ぶひぃぃぃぃ!! ぼくのぉ!! ぼくのぉぉぉ!! きんたまぁぁぁぁ!! ないぃぃぃぃぃ!!!」


大井川 狸吉(寝起き) 「うわああ!? 何事!?」


夏目 圭介 「あぁ……今更去勢済みなのに気づいたのか……」


(巨デブ、号泣しながら床を転げ回る)


巨デブ 「ぶひぃぃぃぃぃ!! ひどいぃぃ!! ぼくのぉ! ぼくのぉぉぉ!! ぶひぃぃぃぃぃぃ!!!」


夏目 圭介 「……はぁ。お前、売れる前に寿命縮めそうだな」


(こうして、巨デブの夜は泣き声とともに更けていった――)

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