第八話(エピローグ):きんたまと絆と愛され巨デブ
登場人物
•夏目 圭介:巨デブ専門の飼育員(26歳)
•大井川 狸吉:同僚の飼育員(30歳)
•神田 ヘキサ:ペットショップの店長(40歳)
•巨デブ:人語を解する珍獣
ペットショップ 店内
(店の入口には「看板動物 巨デブくん」と書かれたカラフルなプレートが掲げられている。横には「もちもち注意!」と小さく補足が添えられている)
(巨デブは専用のふれあいスペースにどっしり鎮座し、今日も子供たちやカップルにもちもちされまくっている)
子供A 「わぁ〜! もちもちだぁ! すごい柔らかいよ!」
子供B 「ねえ、見て! きんたま、ふわふわだね! 触ってもいいよね?」
子供A 「これすごい!ほら、ぷにぷにしてる!」
(子供たちがキャッキャと巨デブのきんたまを撫で回す。巨デブは目を細めて満足げに震える)
巨デブ 「ぶひぃ♡ きもちいいよぉ…もっとぉ…なでなでしてぇ♡」
(近くでカップルがその様子を眺めている。彼女が彼氏を引っ張ってくる)
彼女 「ねぇ、ほら! 触ってみてよ! 可愛いんだから!」
彼氏 「えっ…いや、俺はいいよ…なんか恥ずかしいし…」
彼女 「何!? こんな可愛いのに触らないなんて勿体ないよ! ほら、巨デブくんも待ってるじゃん!」
彼氏 「待ってるって…お前、言葉通じるのかよ…」
巨デブ 「ぶひぃ? なでなでぇ…おねがいぃ♡」
(巨デブ、彼氏の方をチラッと見て尻尾をフリフリ。彼氏がたじろぐ)
彼氏 「うわっ、見てきた! いや、マジで分かってんのか…?」
彼女 「ほらね! 触らないと可哀想でしょ!」
(彼氏、渋々手を伸ばして巨デブの贅肉をむにっと押す)
彼氏 「うわ…何だこれ…気持ちいいな…」
彼女 「でしょ! 私、もうファンになっちゃった!」
(そんな周囲の声に、巨デブは得意げに胸を張り、贅肉をプルプル揺らして応える)
巨デブ 「ぶひぃぃ…ぼくぅ…すごいでしょぉ……きんたまぁ…ふわふわだよぉ♡」
(店の奥から夏目と狸吉が、その賑わいを眺めている)
夏目 圭介 「……なんだかなぁ。ここまで人気になるとは思わなかったよ」
大井川 狸吉 「だなぁ。まさか巨デブが”癒し動物”のスターになるとは…人生何があるか分からんよな」
夏目 圭介 「最初はただの売れ残りだったのになぁ。今じゃ子供たちが並んでまで触りにくるんだぜ?」
大井川 狸吉 「だろ? この前なんか、親子連れが『巨デブくんに会いに来た』って言ってたぞ。俺ら、なんか誇らしいよな」
(巨デブは満面の笑みで子供たちに撫でられながら、嬉しそうにブルブル震えている)
巨デブ 「えへへぇ♡ ぼくぅ…しあわせぇ♡ みんなぁ…だいすきぃ♡」
(神田店長が腕を組んで、珍しく満足げに頷く。)
神田 ヘキサ 「ペットショップの売上も上がったし、集客効果も抜群だ。結果的に、巨デブがいてくれて正解だったな」
夏目 圭介 「ですね。最初はただの珍獣で、どうすんだこれって思ってたけど…今じゃ完全に店の一員と」
大井川 狸吉 「まったくです。なんだかんだで情が湧きますよ。ほら、見てみろよ、あの幸せそうな顔」
(巨デブ、子供たちに囲まれながら店員たちの方に目を向け、短い手でむにむにしながら甘えてくる)
巨デブ 「ぶひぃぃ♡ ままぁ♡ ぱぱぁ♡ だいすきぃ♡」
(夏目と狸吉、一瞬固まる。)
夏目 圭介 「……ママ? お前、俺がママなのか?」
大井川 狸吉 「……パパ? いや、俺がパパか」
夏目 圭介 「何!? 俺の方がパパだろうが!」
大井川 狸吉 「いやいや、俺の方がパパっぽいだろ! お前、世話焼くのママっぽいし!」
(二人が言い争う中、神田店長が肩をすくめて割り込む)
神田 ヘキサ 「お前ら、どっちでもいいだろ。巨デブにとっては親みたいなもんだよ。ここまで世話してきてるんだからさ」
巨デブ 「ぶひぃ…ままもぉ…ぱぱもぉ…だいすきだよぉ♡」
夏目 圭介 「……ったく、しょうがねぇな」
大井川 狸吉 「だな。まぁ、こうやって甘えてくるのも悪くないか」
(巨デブ、さらに勢いづいて神田店長にも絡む)
巨デブ 「ぶひぃぃ…じぃじもぉ♡ だいすきぃ♡」
(神田店長、顔を引きつらせて一歩下がる)
神田 ヘキサ 「誰がじぃじだよ! 俺はまだ若いぞ!」
夏目 圭介 「いや、店長。あんた絶対じぃじポジションっすよ」
大井川 狸吉 「だな。なんか貫禄あるし、じぃじって感じがピッタリだわ」
神田 ヘキサ 「お前ら…黙れ。じぃじとか言うな」
(巨デブ、嬉しそうに尻尾をフリフリしながら店員たちにまとわりつく。)
巨デブ 「ぶひぃ♡ みんなだいすきぃ♡ ぼくぅ…ここにいられてぇ…さいこぉ♡」
(笑いながら、夏目と狸吉は巨デブの頭を撫でる)
夏目 圭介 「まぁ、これでいいか。こいつが幸せならさ」
大井川 狸吉 「だな。巨デブがいてくれるだけで、なんか店が明るくなったよ」
神田 ヘキサ 「そうだな。売れ残りだったのが、今じゃ店の”顔”だ。悪くない結果だろ」
(こうして、売れ残りの珍獣だった巨デブは、ペットショップの看板動物として、家族のような存在として、たくさんの人に愛される存在になった)
(もちもちの贅肉とふわふわのきんたまは、子供から大人までを癒し、笑顔を生み出している)
(そして今日も、巨デブは幸せそうにお店の真ん中でぶよぶよと揺れながら、みんなに「ぶひぃ♡」と愛を振りまいていた――)