第一話:巨デブ、降臨
登場人物
•夏目 圭介:巨デブ専門の飼育員(26歳)
•大井川 狸吉:同僚の飼育員(30歳)
•大槻 バルサ:問屋の配送担当(38歳)
都内 某所 ペットショップ裏口
大槻 バルサ 「お待ちどう! 久々の巨デブ、納品に来たぜ!」
夏目 圭介 「……え、マジで? うちに来るの何年ぶりだよ……?」
大井川 狸吉 「ちょ、巨デブ入荷ってことは、今から開封作業するの!? うわ~、心の準備してなかったんだけど……」
大槻 バルサ 「まあまあ、そう言うなって。今回は格安品だから期待すんなよ?」
夏目 圭介 「いや、むしろ期待しない方が助かるわ……(格安の巨デブとか絶対ロクなもんじゃねえ)」
大井川 狸吉 「で、どんな個体? スペック教えてくれよ」
大槻 バルサ 「10歳、210kg、オス、去勢済み。まぁ、正直ちょっと訳ありっぽいけどな?」
夏目 圭介 「ほら来た。訳ありの巨デブとかヤバい匂いしかしないんだが」
大井川 狸吉 「でも、希少生物だし、ちゃんと扱えれば売れる……はず?」
夏目 圭介 「いや、うちで買ってく人ほぼいないんだけどな……まぁ、とりあえず開けるか」
(大型クレートを開封する)
巨デブ 「ぶひぃぃ……(怯えたような鳴き声)」
大井川 狸吉 「うおっ、来た!! うわ……でっっっっっっか!!!」
夏目 圭介 「……いや、でかいのは当然だろ。問題はこいつがどんな性格かってとこだ」
(巨デブがゆっくりとクレートから這い出てくる)
巨デブ 「ぶひぃぃ……(脂汗でテカテカしながら、震えつつ尻尾を振る)」
大槻 バルサ 「うわ、すげぇな。こいつ、緊張してんのか?」
大井川 狸吉 「あっ、やばい。尻尾振ってる……ってことは……」
(直後、巨デブの下半身から じょわぁぁぁ…… という音が響く)
夏目 圭介 「……おい、まさか……」
大井川 狸吉 「開封1分でお漏らし!? はえええ!!」
大槻 バルサ 「HAHAHAHA! 格安の理由これかよ! いや~、安いわけだ!」
夏目 圭介 「いや笑ってねえで拭くの手伝え!! くっそ、また面倒な個体引いたな……」
巨デブ 「ぶひぃぃ……ごめんなさいぃぃ……(涙目)」
夏目 圭介 「はぁ……もう泣くなって。はいはい、拭くからじっとしてろ」
大井川 狸吉 「久々の巨デブ、やっぱり手強いな……」
(こうして、新たな巨デブとの戦いが幕を開けた――)