表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/26

第十四話 落ちてきた伝書バト!

 ミミたちはスチームホッパーで下山して、街に進路を向ける。途中で翼のようなオーニソプターを広げ、飛び去っていく四人の影が彼女たちを追い越す。あの鎧たちは任務を断念して帰っていったということだ。

 彼らが死んでいなかったことに安堵しつつ、ミミはホッパーを移動させていった。


 帰りはモンスターに襲われることがなかった。ミミの持っているロータスドラゴンの鱗が、独特のにおいを発しているためかもしれない。誰も山の主に関わりたくないというわけだ。

 楽々と荒野を抜け、元来た道を引き返す。ミミが「こっちではなかったか?」と方向音痴を発揮するので一々ロロが「こっちでしたよ!」と訂正するのだった。行きは山が聳え立っていたのでミミでも道がわかったが、街はふもとからは見つけづらい。ロロは奔放にホッパーを駆るミミをハラハラしながら見守っていた。放っておけば彼女は明後日の方角に舵を切るだろう。


 がしょん、がしょんとホッパーが跳ね、土から街のゲートを超え石畳に着地する。街の様子はどこかおかしかった。

 がやがやと騒ぎ声がする。噴水のある街の中央に人だかりができている。何か事件があったらしい。誰もがひそひそと噂話をし、ぴりぴりとした空気が漂っていた。

「おお、戻ってきたか」

 ミミたちを出迎えたのはヴォールクであった。人混みの中からホッパーの足音を聞いて出てきたらしい。彼の言葉には、ミミたちが山から戻ってくるはずだという信頼が感じ取れた。それがミミには嬉しかった。

「一体何があったのだ?」

「それがな……」

 ヴォールクは言いづらそうに続ける。ミミに言わないでおくべきか一瞬迷ったらしい。が、意を決してミミに伝えることにしたのだった。

「この街の子どもが鳩をパチンコで撃ち落とした。それが伝書鳩だったらしい。脚に手紙が巻かれていた。それが……」

 少し言葉につかえても、ヴォールクはその先を言わざるを得なかった。

「お前の親父、先代国王の密書だった」

 ミミは瞠目する。瞳孔が細まり、気分が昂った猫の目をする。

「それは本当か? 嘘の手紙ではないだろうな?」

「わざわざ鳩に、誰が偽の手紙を巻くんだよ……待ってろ。今現物を持って来てやる」

 ヴォールクは群衆の中に戻っていき、しばらくしたらまたミミたちのところに来た。


「見ろ。これがその手紙だ」

 ミミはヴォールクの差し出したしわくちゃの文書を見て、瞳孔を細めた。

 それは紛れもなく父の筆跡だった。そこにはこう書いてあった。

『三日後にカニーンヒェンで火の手が上がる。しかし我が国が動く必要はない。すべてこちらで処理する』

 どういうことだろうか、とミミは眉を顰める。

 父は何かしようとしているのだろうか。助けを待っているのではなく、海を挟んだ隣国で活動しているのだろうか。であれば、何のために?

 ロータスドラゴンが言っていたことを思い出す。隣国の王は魔導文明を自分のものにしたいのだと。

 自分が誅殺されそうになれば、父も動かざるを得ないのかもしれない。そしてそれは、ハトゥールの現国王である自分も見て見ぬふりはできないのだ。


 ミミはロータスドラゴンの鱗をかざし、ヴォールクに見せた。鱗は陽光を反射してきらりと光った。

「ここにロータスドラゴンの鱗がある。これを使って、武器屋に何か作れと言え。予は急いでカニーンヒェンに行かねばならぬ! そのための武器が欲しいのだ!」

「それは……!」

 ミミの持つ鱗に、ヴォールクはただならぬものを感じたらしい。偽物ではない、本物のロータスドラゴンの鱗。それは紛い物では発しえぬ雰囲気を纏っている。どす黒い魔力のオーラだ。

 ロロはミミの後ろで、ヴォールクの顔色を窺っている。彼は何があっても、ミミに従うつもりでいる。

 ヴォールクはふっと笑った。ミミたちの覚悟。それが彼にはわかった。

「あぁ……。これと、金貨を二枚貰えれば、それなりのものはできるはずだぜ。どんな武器が欲しい?」

「何でもいい! とにかく強いやつをくれ! 予は父上に会わないといけないのだ!」

「まぁ落ち着けって。ちょっと失礼」


 ヴォールクがミミたちの近くに寄る。

「このマジックシューターには、装着者のレベル……まぁ、熟練度を測る機能もある。お前たちの今のレベルを見てやろう」

 ヴォールクはミミたちの腕にあるマジックシューターのボタンを操作する。ミミのマジックシューターからホログラムが飛び出て、空中に文字を表示した。そこにはレベル10と書かれていた。続いてロロのマジックシューターに表示されたのも、同じ文字だった。

「これだと、お嬢ちゃんたちは駆け出しの冒険者って感じだな……それだと、やっぱり強い武器を持っても扱いきれないと思う。それぐらいはわかってくれるよな?」

「でも、鱗は手に入れたぞ! それに予には時間がないのだ!」

「わかってる、わかってる。できるだけ使いやすい武器を見繕うつもりだ……。犬耳のぼっちゃんは、俺が寄越した短剣を持ってるよな?」

「はっ、はい!」

 ロロは短剣の鞘を握りしめる。

「なら、この鱗は身軽に戦えるものとして活用しよう。待ってな。ここの職人は融通が利くからよ」

 そう言ってヴォールクはギルドに行った。ミミたちはホッパーを、彼の後ろについていかせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ