わたし、離婚したほうがいいんでしょうか? (6千字超えの長文です。お時間のある時にどうぞ)
本題の前に「へえぇ!」と思ったことを書かせてください。
〇年代の差なのか、個人差なのか?
あなた様は一斗缶をご存じでしょうか?
ドリフターズの番組でやたらと天井から落ちてきて、志村けんさんの頭を強打していた銀色の大きな缶です。いま調べたJIS規格によると「天板、地板は一片の長さが238.0±2.0㎜、高さは349.0±2.0㎜、質量は1140±60.0g、容量は19.25±0.45ℓ」そう定められているそうです。
でも他のネット情報を見ると質量の誤差は50.0g以内とありますから、どっちが正しいかわからないです。いずれにしても1kgを超えますから、頭に当たったらイタイですね。志村けんさん、大変だったんだ……。ご冥福をお祈りいたします。
その一斗缶の開け方って、ご存じでしょうか? ワタシは知りませんでした。職場の消毒用アルコールはこの一斗缶に入っています。使っていたアルコールがなくなってしまったので、新しい缶を開封する必要があった。開けなきゃ使えないのですけれど、開け方がわからない。以前に上司に聞いたときは、上司が目の前で実演してくれました。白いプラスチック製のリングを引っ張って外して、金属製のフタをギュッと押し込んだらポン!と音がして開封できた。
ワタシは目の前の一斗缶を見つめます。白いプラスチックのリングを引っ張って外せばいいのですけれど、外し方を間違えてちぎれてしまったら後が大変そう……。失敗する前に先輩に聞いてみよう。
マスクをしたイケメン先輩(でもマスクを外した顔は知らない。そしてマスクの下を見るのはあきらめました。なんせガードが堅すぎる!)に尋ねます。
ソウ:アルコールの一斗缶って、どうやって開けるのですか?
先輩:白いリングを引っ張って、フタを押し込む。
ソウ:引っ張ったらちぎれませんか?
先輩:ちぎれない。
おそるおそる引っ張ってみます。調味料のキャップみたいに切れ込みが入っているらしく、ニュインと長くなった! 大丈夫か!? ちぎれないか!?
ビビりながらも力を入れて引っ張ったら取れた! やった~! 次はフタを押し込んで……。全体重をかけて押し込もうとするがビクともしない。親指が折れるかと思うくらい体重をかけてもダメ。ワタシはため息をついて先輩のところへ戻ります。
ソウ:力いっぱい押し込んでもダメなんですけど……。
先輩:押したら開くから。
ソウ:親指が折れそうなくらい押してもダメです! 次からはちゃんとやりますから、今日だけお手本を見せてください!
先輩:ダメ。ソウさんならできるから自分でやって。
ソウ:そんなぁ~!
先輩:ダメ。
ちぇっ! なんて冷たい人なんだ! ワタシの親指が折れたらどうするんだ!? ブウブウ言いながらフタを押します。でも開かない。ギュウっと押しても開かない。先輩は冷たいしフタは開かないし、泣きたくなってきた……。
先輩が遠くから言いました。
先輩:開いた~?
ソウ:開かないです!!
放っておかれているワケじゃないらしい。ちゃんと気にしてくれている。ワタシの押し方が悪いんだろうか? 道具とか使ったほうがいいんだろうか? でも上司は親指で開けてたし……。(ギュウギュウ!)
先輩:開いた~?
ソウ:ダメです! 助けてください!
先輩:ダメェ~。自分で開けてください。
だから開かないんだって! ワタシはかよわい女子やぞ! アンタにできてもワタシはできひん! 手伝ってくれたら3秒ですむのに、もう3分くらいたってる! なんで手伝ってくれないんだ!?
ほんとに親指が折れちまうぞ!!
ポンッ!!
ビックリするような大きな音がして開いた! やった! できた!!
ソウ:開きました!
先輩:次から自分でできるようになったっしょ? 良かった、良かった♪
上司は私と同年代の50代、先輩は30代です。ワタシの考え方は上司と一緒です。まずお手本を見せる。でも先輩はいきなりやらせる。そしてソウさんならできるからと、できるまで気長に待ってくれている。これって個人差なのでしょうか? それとも年代差なのでしょうか? そういう教え方もあるんだと思ってビックリしました! 新しい発見でした!
それでは本題です。すみません! 一斗缶とはぜんぜん関係ない話です!
「わたし、離婚したほうがいいんでしょうか?」
公私にわたって何度も相談されています。40人くらいから相談されたと思う。ですからこの相談に関してはエキスパートを自負しています!
どうして離婚したほうがいいかと考えるようになったのかを一緒に考えます。理由は多岐にわたります。なんとなくソリが合わないといった漠然としたものから、価値観が合わないという根本的な理由もあるし、暴力を受けているという理由も多い。ひどい方だと殺されかけて命が危なかったこともある。
そういう話を整理してまとめて「〇〇だから離婚しようかと考えるようになった」の〇〇をハッキリとさせます。この〇〇だからという理由をご自身で把握していない方は意外と多いです。
そして離婚後のメリットとデメリットを一緒に考えます。
一番多いのは「離婚したら精神的に楽になるが、経済的にきつくなる」です。ごくたまにメリットしかない方もいらっしゃいますけれど、そういう方は経済的に自立している少数派です。大部分がお金のために離婚を迷っている。
その次に多いのが「子どものため」という理由。けれども子どもとお金が複雑に絡み合っているので、この辺も頭が痛いところです。子どもに金銭的な苦労をかけたくないので、お金のためと思って離婚しないでいる。たしかに一人親で子どもを大学へやるのは並大抵の努力ではできませんものね……。お金が無いと言う理由で進学を断念させるのは、親として身を切られるより辛いだろうし……。
そして根強いのが「子どもにとって両親がそろっているのが一番幸せだから」という理由。一人親のほうが幸せなケースも多々あるのですけれど、なぜか皆さんそうは思わないらしい。こういう方は当事者であるお子さんから「離婚したら?」と言われるとソッコーで離婚します! めっちゃ速いです!!
離婚したくなった理由を整理して明らかにする、離婚後のメリットとデメリットを考える。ここまでならお手伝いできます。そして私は相手に告げます。
ソウ:離婚するかしないかは、ご自身で決めてください。
これを言うと離婚しないといけない理由をいくつも言われる方がいます。暴力を振るわれた、生活費を渡してもらえない、人格否定をされた……たくさん理由をあげた後に必ずこうおっしゃいます。
「だから私【または僕】は離婚したほうがいいですよね!?」
私は絶対に首をタテに振りません!! 何度言われても呪文のように同じセリフを繰り返すだけです。
ソウ:離婚するかしないかは、ご自身で決めてください。
私は絶対に背中を押しません! たとえその方がパートナーから暴力を振るわれてケガをしていたとしても、殺されそうになったとしても!!
なぜか? それはですね…………、
本気で離婚したい方は、まわりが止めても離婚するからです! お金がなくて離婚できないならご自分でちゃんと何とかします!「離婚したほうがいいですよね!?」なんて聞いてるうちは覚悟ができてない! そして離婚後に後悔することがあったら「ソウさんが離婚しろって言ったから」って私のせいにされるんですよ! そんなのまっぴらです!! 私は責任が持てんから背中は絶対に押さん!!
配偶者から殺されかけて救急や警察が出動して事件になってという方も何人かいらっしゃいました。相談を終えて送り出すときに「この人、今後こそ殺されちゃうかも……」そう思いながら送り出す。それでも私は「離婚したほうがいい」とは言いません!! それを決めるのはご本人です! 必要なら接近禁止命令やストーカー防止法の情報をお伝えして実現できるようにお手伝いしますけれど、それもご自身が希望した場合だけです。
DVというのは周囲には理解できない支配関係が確立していまして、被害者が何度も加害者のもとへ舞い戻るという不可解な行動を見せます。どうしてなのかは理論的に説明できますけれど、一言で言うと「DVで支配される環境に慣れてしまってDVがない状態が不安になってしまう」のです。おそろしい……。私見ですがこれも中毒というか依存と同じ状態だと思います。タバコが身体に悪いと知っていてもやめられない心理と同じ。タバコが吸えないと手が震えたりイライラするのと同じ状態。おそろしいですけれど理解はできる。
この状況を断ち切るためにはご自身の意志が必要なのです。いくら周囲が言って聞かせても、本人が頭では理解していても本気で覚悟をしないと舞い戻ってしまう。そうは言っても救いはあります。何度も離れて戻ってを繰り返すうちに、急にストンと理解できる日が来る。そこから先は速いです。さっさと別れてさっさと明るい未来へ向かって爆走するようになります! そして二度と同じ過ちを繰り返さない!!
だから周囲はDV加害者の元へ舞い戻る被害者に「助けが必要ならいつでも言って」そう伝えて見捨てないことが大事です。見捨ててしまうと孤立して逃げられなくなるので、いつでも逃げ場はあるのだと伝えて見守ることが大切。
あら? 一斗缶と同じ結論が出ました? 「あなたならできると信じて見守る」 あら? 一斗缶と離婚は同じなんだ……。 知らなかった! 新発見だ!!!
新発見は嬉しい誤算ですけれど、あんまり面白い話じゃなかったので、ちょっと別な話を……。そうは言ってもこれも別に愉快な話ではないのですけれど……。いやある意味、愉快かも……??
夫が浮気をしたから離婚したほうがいいかと相談にいらした方(A美さん)がいました。こちらは仕事ではなくプライベートで受けた相談です。話を整理してみると、A美さんは夫に未練があって離婚したくないという気持ちに気づいた。ところがご主人のほうから離婚を切り出された! どうやら浮気相手と一緒になりたいらしい。そんなのひどすぎる!! 泣きじゃくるA美さんに私は言いました。
ソウ:これから言うことを実行して。そしたらたぶん、ご主人は戻ってくるから。
A美:ううぅ……。何をしたらいいの?
ソウ:まず美容院に行ってそのバサバサの髪の毛をキレイにして。そして化粧品店に行って美容部員さんからお化粧を習ってまいにちお化粧して。お洋服だって必要よ。そのハッキリしない色のお洋服は捨てて、店員さんに見立ててもらったキレイな色のお洋服を買ってちょうだい。あなたお仕事してるんだから、お金には困ってないでしょ? 今が勝負時よ! 全力と有り金を突っ込んでちょうだい!
彼女はメソメソ泣き続けています。
A美:ううぅ……。わかったわ……。
ソウ:まだあるわよ。お出かけする時にご主人から行き先を聞かれても教えちゃダメよ! 帰ってきてもどこへ行ってたか言っちゃダメ。それからその日なにをしてたかなんて話題は言語道断!
A美:ううぅ……。今は聞かれなくても言ってるし、それくらいしか話題がないから……。
ソウ:ぜんぶナイショにして! たとえ一日中家でゴロゴロしてたとしても言っちゃダメ!
A美:どうして?
ソウ:狙いはね…………、
あなたが浮気しているように見せかけるため。
驚いたA美さんは顔を上げました。ビックリしすぎて涙が止まっている。
A美:えっ!? わたし、浮気なんてしてないわ!!
ソウ:知ってるわよ。フリだけでいいの。まるであなたが浮気していて、お洒落をして出かけているように見せかけるだけでいいの。もしご主人の気持ちが少しでも残っていれば、ご主人は戻ってきます。でももし気持ちが残ってなかったら残念な結果になるけど……。
A美:今のままじゃ夫は戻って来ないからやってみる!!
ほんとは笑顔でニコニコするよう言いたかったけれど、彼女の気持ちを思うと無理に笑顔を作れというのは残酷かと思って言いませんでした。
二か月ほどたった頃に街を歩いていると声を掛けられた。一瞬、誰だかわかりませんでした。それがA美さんだとわかっても、自分の目が信じられなかった! 綺麗にお化粧をして素敵なお洋服を着たA美さんは別人のように見えたのです! しかもニコニコしている!!
A美:ごめんなさいね! お礼に行きたかったけど忙しくて!! おかげさまで夫は戻ってきました! 今は私がどこへ行くのか何をしてるのか知りたくて私のまわりをウロウロしてるの! うっとうしいわ!ww 相手の女性は夫と一緒になりたかったみたいで家に押し掛けて来たけど、夫は私の目の前で彼女にキッパリ別れを告げたの!
ソウ:それは良かった!
A美:うふふ♪ でも今から思うと慰謝料をもらって離婚しても良かったかも♪
ソウ:離婚したくなったらすればいいわよ。
A美:そうね!
遠くでA美さんを呼ぶ男性の声がしました。ご主人ではない男性です。誰だ??
A美:私、行かなきゃ! またゆっくりお礼に伺わせてね♪
ソウ:お礼なんていいわよ! またね!
A美さんは綺麗な色のスカートをヒラヒラさせながら少女のように男性に駆け寄りました。男性はそんな彼女を見て笑顔で目を細めています。二人は肩を並べて街の雑踏へ消えてゆきました。
失敗した……。A美さんの相談、大失敗してしまった……。私は頭をかきむしりました。うがあ!!
夫を振り向かせるため綺麗にして浮気をするフリをして……ここまでは正解です。競争心の強い男性は自分が誰かに負けたとなると顔色を変えて争うようになります。自分の妻が誰かに取られそうだと誤解したご主人は慌てて妻を取り戻そうとした。そしてそんなご主人を追ってきた浮気相手は、もうジャマ者以外の何者でもありません。追っかけるのが大好きで、追いかけられるのは嫌だという男性は多いです。だからご主人は彼女が嫌いになった。
夫が戻ってきたA美さんは心に余裕ができた……。これも大正解です。おかげで夫婦仲は修復されて、今は幸せそう。それじゃあ何が大失敗かというと…………、
A美さんは浮気をしているフリをするためにお洒落した結果、本当に浮気相手ができてしまったのですよ! そうじゃなかったら離婚しても良かったなんてセリフは出てこん!! それにあの男性の目つきは完全に愛する人を見る目だった!! あの二人できてる!!
はああ……。A美さんは喜んでくれましたけれど、私的には大失敗のケースでした……(涙)。