友達で終わる天才!?
「最近、仲良いよね。」
「啓吾くん?いい人だと思う。
けどやっぱ友達、かなぁ。」
「あーね。わかる。」
へ?俺の話?
西日の差す廊下で漏れ聞こえた会話に思わず息を殺す。
声の主は最近何かとちょっかい出してる莉緒ちゃんと数人の友達。
また友達ポジかー!
これで何連敗だ?
友達もなぜ「わかる」と?
なら教えて下さい。俺に足りない何かを!
「面白いし優しいし。」
うんうん。
「スポーツも出来るよね。勉強もいい方だし。」
あざっす!
「割と揃ってんのに友達ポジってうけるー。」
泣けるー…
「裏表ないしさ、ひたすら良い人だよね。」
それは褒め言葉に聞こえないんですけど?
「安心感はある!」
キュンはないんか!
悲しみを抱いて廊下を戻る。くすん。
部室を覗くと幼なじみの渉と凛が長机に腰掛け、いつもの調子で俺を待っていた。
お前らさぁ!
忘れ物したフリして折角二人きりにしたのに変化無しかよっ。
ってか何かと空回りな俺。
「お待たせ!帰ろ!」
ま、いつもの一日だ。
ひろがる夕焼けを背に三人で歩く。
あ。カレーの匂い。腹減ったー。
翌朝5:00、いつも通り自主練にロードを走る。
今日は身体が重い。昨日の事をウジウジと考えるからか。いつだって走る時は下らない事しか考えてねぇのにな。
何かを振り切る様に頭を振る。
と。
「おはよー。啓吾くん。」
「ッあぁ!びっくりした!お、おはよ、莉緒ちゃん。何で居るの?」
「この時間にこの辺を走ってるのは知ってたよ。待ってたんだよ、伝えたい事あってさ。」
「え。」
「昨日の放課後、聞いてたでしょ。好き勝手に言ってごめんね。」
「いや…」
「でも私が友達ポジって言うのはホントは違う理由なの。
…啓吾くんさ、好きな子いるでしょ。
本当の好きな子。」
あ…
自分でも持て余してる気持ちがある。
『幼なじみ』を維持する為に蓋をして、無かった事にしてる恋心。
渉と凜の両想いに気付いたのも、残念ながらこの気持ちのお陰だ。
「近寄ってくるくせに本気じゃないでしょ?ガードが固いから友達ポジなんだよ。」
めっちゃ見抜かれてる。
「で、本題。私とちゃんと友達になろ。相性いいと思うよー?私、毒舌だけど。ふふ。」
しっかり目を見てニッと笑う莉緒ちゃんに、急な体温の上昇を感じる。
あ、あれ?何だ、この感覚。
友達ポジには変わりない。
でも…
「じゃ、また学校でね!」
走り出す彼女を見送り、俺もまた走り出す。
ははっ。身体が軽くなってて笑える。
朝日が眩しい。
頭上でヒヨドリがピィッと鳴いた。
莉緒ちゃんが啓吾の気持ちに気付いたのもまた、同じ理由な訳で。
良ければ他のなろラジ大賞4への応募作品にもお立ち寄り下さい。本文のタイトル上部『なろうラジオ大賞4の投稿シリーズ』をタップして頂けるとリンクがあり、それぞれ短編ですがどこかに繋がりがあります。