唐辛子
人と話した後に、
神様のように
なれたらと、
思うことがある。
自分を考えずに、
ありのままを
受け入れて、
頷けたらいいと。
そう言いながらも、
時折、目の前を
唐辛子みたいな
不満が横切る。
赤く辛い残像に、
不満がひょいっと。
自分が空しい。
理不尽な不満だ。
街で買い物をする
沢山の人を見ては、
そこに姿があるような
気がするときがある。
もしかしたら、
気づいて手を振る
かもしれないと、
左右に首を捻る。
そんな錯覚を過ぎたら、
今度は眠気を消そうと、
缶珈琲を飲んで、
一日のゴールを目指す。
あれこれと仕事に
勤しむときにも、
ここにいるよと、
頭を撫でられるような。
きっとこの心には
空しさの空洞があって、
たぶんこの頭にも
空洞があって。
そこには折れ曲がった
鉄筋や崩れた煉瓦が
転がっているはずだ。
どうしようもないから。
夢と錯覚をすり替えて、
現実との境目を
とことんぼやかして、
そこに吸い込んでと。
廃墟を置いたんだ。
廃墟を置いたから、
草木や花が好きに
なったんだろう。
唐辛子の赤い色も、
廃墟に絡まれば、
美しいと感じる。
それは変わらない。