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死んだ方が良かっただなんて

作者: 西川 新

死んだ方が良かっただなんて

ぜってぇ言うなよ


おめーのその命は

おめーひとりのものじゃないんだから


親がいて この地があって

今があり 過去があり

他人がいて 自分がいて

おめーがいるんだよ


死んだ方が良かっただなんて

そんな悲しいこと言うなよ



おめーが死にたいと言っても

ただ死にたくなるだけだぞ


おめーの「死にたい」という一言は

良くも悪くも世界を変えやしない


無駄に嘆くな

無駄に騒ぐな

無駄に泣くな


「死にたい」だなんて

死ぬ気がないなら無駄に口に出すな


ただ死にたくなるだけだぞ

生きたい気持ちまでも否定すんのかよ


やめろよ 言うなよ

そんな悲しいこと言うなよ


体があるなら動けよ

心臓が動く限り息しろよ


おめーの体は

生きたいって叫んでるはずだ

それを知らんぷりするなよ


死にたい時でも

死にそうな時でも

おめーの鼓動は止まらない


逃げるな

自分から

どうせ逃げることはできない



死んだ方が良かっただなんて

ぜってぇ言うなよ


死んで後悔しないって

言い切れねぇなら

言うなよ


言葉は思いになる

言葉は事実になる

言葉は行為になる


「死にたい」とか言ってると

本当に生きれなくなるから


そんな悲しいこと

言わないでよ


おめーはまだ生きてんだよ


そんな悲しい『もしも』の話は

やめようよ


死んだ方が良かっただなんて

ぜってぇ言うなよ


おめーは今を

生きているんだから


死ねないのなら

言うんじゃないよ



おめーの『死』は

おめーのことを愛す人にとっての『死』でも

あるんだぜ


遺された人の気持ち

考えてみろよ

死ぬ前に




おめーが死んだら

遺された人は

死ぬにも死ねずに

苦しむことしか出来ないのだから




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